Postmanとは
Postmanとは、アメリカのPostman, Inc.が提供するAPI開発の総合プラットフォームです。APIの設計やテスト、ドキュメント作成など、API開発にまつわる幅広い工程をサポートする機能が搭載されています。
APIは、外部サービス(クライアント)から送られたリクエストをサーバー側で処理し、適切なレスポンスを返すものです。APIの品質を保証するためには、クライアントとのやり取りを疑似的に再現したり、レスポンスの妥当性を検証したりする必要があります。こうした作業をカバーしてくれるのがPostmanです。
2023年12月にはPostmanの日本法人が設立されるなど、日本向けのビジネス展開も積極的に行っています。今後は日本語リファレンスの充実やサポートの強化が期待され、日本のエンジニアにとっても身近なサービスになるでしょう。
デスクトップアプリ版もある
Postmanは一般的なWebサービスと同じように、ブラウザを通して利用できます。さらにデスクトップアプリ版もあり、必要に応じて使い分けることが可能です。
デスクトップアプリ版は、WindowsやmacOS、LinuxといったOSのパソコンにインストールすることで利用できます。インターネット接続が必須ではないため、ある程度の機能はオフラインでも使えるのがデスクトップアプリ版のメリットです。
オフラインでも作業したい場合は、デスクトップアプリ版を併用するとよいでしょう。
無料版と有料版の違い
Postmanには、無料版(Freeプラン)と3つの有料版(Basicプラン/Professionalプラン/Enterpriseプラン)があります。それぞれの料金と主な機能を下表にまとめました。
プラン名 | 料金 | 主な機能 |
Free | 無料 | ・共同作業可能な人数:3人 ・APIクライアントへのアクセス ・クラウドベースの統合 ・保存可能パッケージ数:3パッケージ ・コレクションの復旧:30日間 ・コレクションの実行:25回 |
Basic | 月額19ドル | ・Freeプランの全機能 ・共同作業可能な人数:無制限 ・モックサーバーへのリクエスト:10,000件/月 ・モニターリクエスト:10,000件/月 ・従量課金制による追加のリクエスト実行 |
Professional | 月額39ドル | ・Basicプランの全機能 ・チーム専用のワークスペース ・外部パートナーとの共有ワークスペース ・ロールベースのアクセス制御 ・保存可能パッケージ数:25パッケージ ・コレクションの復旧:90日間 |
Enterprise | 月額49ドル ※年間契約のみ | ・Professionalプランの全機能 ・プライベートAPI ネットワーク ・高度なID管理機能 ・レポーティングと分析 ・監査ログ ・ユーザーグループ ・高度なロールベースのアクセス制御 ・保存可能パッケージ数:100パッケージ ・モックサーバーへのリクエスト:100,000件/月 |
※2024年12月時点の公式サイトにもとづき記載しています。
上位のプランほど、共同作業の人数や送信できるリクエストの回数といった制限が拡張されます。無料のFreeプランでも3人までの共同作業が可能なため、小規模なチームであれば支障は少ないでしょう。
また当然ながら、上位のプランほど高度な機能が使えるようになります。4人を超えるチーム・組織の場合は、求める機能に合わせてBasic以上のプランを検討しましょう。
Postmanの代表的な使い方

ここではPostmanの代表的な使い方を、次の3つに分けて解説します。
- APIの設計
- APIのテスト
- APIのドキュメント作成
それぞれ詳しく見ていきましょう。
APIの設計
Postmanは、APIの設計に活用できます。APIの設計では、リクエストやレスポンスの種類・データ構造など、さまざまな情報を検討します。このとき、「モックサーバー」という疑似的なAPIサーバーで試行錯誤しながら設計を固めていく流れが一般的です。
Postmanにはモックサーバーを構築する機能があり、API開発の初期段階でAPIの動作をシミュレートでき、設計検討におけるトライアンドエラーを行いやすくなります。
また、APIの設計にあたっては、「APIスキーマ」という形でデータ構造などのルールを厳格に定義する必要があります。PostmanにはAPIスキーマの定義に特化した機能もあり、複雑なデータ構造にも対応可能です。
APIのテスト
Postmanは、APIのテストに活用できます。APIのテストでは、テスト対象のAPIへ実際にリクエストを送り、挙動やレスポンスを検証します。このとき、テスト対象のAPIとやり取りするために必要なクライアントの役割を、Postmanが担ってくれるのです。
Postmanには、クライアントとして疑似的なリクエストを送り、そのレスポンスが妥当であるか検証する機能があります。専用の操作画面で視覚的にリクエストの送信やレスポンスの確認が可能です。また、JavaScriptのテストスクリプトによるテスト自動化にも対応しています。
APIのドキュメント作成
Postmanは、APIのドキュメント作成に活用できます。APIのドキュメントは、主にAPIのユーザーへ仕様やルールを伝えるための説明書です。APIのデータ構造や使い方など、設計情報に沿ってさまざまな情報を盛り込む必要があります。
Postmanには、APIスキーマの定義情報をもとにドキュメントを出力する機能があり、後から定義が変わった際にも素早くドキュメントの更新が可能です。これにより、ドキュメント作成の負担を減らせます。
Postmanを活用するメリット
Postmanを活用するメリットは、主に次の2つです。
- API開発を効率化できる
- APIの品質向上につながる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
API開発を効率化できる
Postmanを活用することでAPI開発を効率化できます。Postmanを使えばドキュメントをゼロから手作業で作ったり、テスト用のクライアントを自分で用意したりせずに済みます。こうした時間がかかる手作業をPostmanによって減らすことが可能です。
また、ブラウザ版のPostmanはチームでの共同作業にも対応しています。たとえば、チームで同じAPIデータを共有しながら並行してテストを実施することも可能です。
API開発の広範な業務を効率化でき、チーム全体の生産性向上につながる点はメリットといえます。
APIの品質向上につながる
Postmanを活用することでAPIの品質向上につながります。Postmanは、APIのテストを簡単に行えるため、リクエスト・レスポンスを網羅的に検証可能です。これにより、APIの問題を逃さず検出できるでしょう。また、設計やドキュメント作成といった作業をPostmanで機械的に行えば、人的ミスも抑制できます。
このように、Postmanを活用することでAPI開発における作業の不確実性を減らし、高品質なAPIを実現できるのです。
Postmanを始める2つのステップ

ここでは、Postmanの始め方を2ステップで簡単に紹介します。
- アカウント作成
- 詳細情報登録
各ステップについて順番に見ていきましょう。
1.アカウント作成
ブラウザ版のPostmanを使うためには、アカウント作成が必須です。トップページにアクセスし、メールアドレスを入力して「Sign up for free」をクリックしましょう。

Postmanのアカウント作成方法は、主に「メールアドレスを使う方法」と「Googleアカウントを使う方法」があります。Googleアカウントを使う場合は、「Sign Up with Google」からGoogleアカウントでログインすればOKです。
メールアドレスを使う場合は、ユーザー名とパスワードを入力してください。そして、必要なチェックボックスにチェックを入れて「Create Free Account」でOKです。
Postmanから届いた認証用のメールに従って操作すれば、アカウントが作成されます。

2.詳細情報登録
アカウント作成直後には、いくつか質問(職業やPostmanの用途など)されるため、指示に従って回答しましょう。チームでPostmanを利用する場合は、チーム情報も登録できます。ひと通りの手続きに問題がなければ、Postmanを利用できるようになります。
Postmanの基本的な使い方

ここでは、Postmanの基本的な4つの使い方を簡単に紹介します。
- リクエストの作成・送信
- コレクションの作成
- テストの追加
- ドキュメントの作成
リクエストの作成・送信
Postmanの基本的な使い方の一つは、リクエストの作成・送信です。APIサーバーに対して送るリクエストの種類や内容を定義し、「Send」でリクエストを送信できます。以下のように、HTTPリクエストのメソッドやデータ形式など、細かい調整が可能です。

リクエストを送信すると、PostmanはAPIからのレスポンスを解析し、視覚的に表示してくれます。この機能により、APIのテストや結果確認を効率的に行うことが可能です。
コレクションの作成
Postmanでは、「コレクション」によってリクエストを管理できます。コレクションとは、関連するAPIや機能のリクエストを、ひとまとめにして扱う機能のことです。
コレクションは、ワークスペースにおける「Collections」の右側にある「+」マークから作成できます。作成したコレクションに、関連するリクエストを保存しましょう。

テストの追加
Postmanではテストを追加することで、手軽にリクエストの送信やレスポンスの検証が可能です。テストは、各リクエストやコレクション単位で追加できます。
PostmanでのAPIテストは、JavaScriptコードを用いて行います。リクエストなどの「Scriptsタブ」を選択し、テストコードを入力すればOKです。
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上のテストコードは、「APIが返すステータスコードが200かどうか」を検証するものです。このようなテストを追加して「Send」をクリックすれば、テストが実行され、結果が「Test Results」に表示されます。
ドキュメントの作成
Postmanを使えば、APIスキーマに沿ってドキュメントを作成できます。ここではコレクションを用いた作成方法を紹介します。
作成したコレクションを選択し、「Overviewタブ」の「View complete documentation」をクリックすればOKです。

このようにすると、コレクション内に定義された情報にもとづきドキュメントが表示されます。
Postmanを活用する際の注意点

最後に、Postmanを活用する際の注意点を知っておきましょう。
- 環境設定をしっかり確認する
- セキュリティリスクに気をつける
環境設定をしっかり確認する
Postmanを活用するにあたって、環境設定をしっかり確認しましょう。Postmanは実際にAPIリクエストを送信するため、利用環境のデータを書き換えることがあります。
誤って本番環境へAPIリクエストを送ってしまうと、サービスに対して予期しない影響を与えてしまいかねません。環境設定に注意を払い慎重に利用しましょう。
セキュリティリスクに気をつける
Postmanを活用する際、セキュリティリスクにも気をつけましょう。PostmanでAPIリクエストを送信する際、APIキーやトークンといった重要な情報を扱います。
情報の取り扱いが不適切だと、情報漏洩やサイバー攻撃の原因となりかねません。認証情報などを安易にチーム外へ公開したり、だれでもアクセスできる場所で管理したりすることは避けましょう。
まとめ
Postmanとは、アメリカのPostman, Inc.が提供するAPI開発の総合プラットフォームです。APIの設計やテスト、ドキュメント作成など、API開発にまつわる幅広い工程をサポートする機能が搭載されています。
Postmanを有効活用することで、API開発の業務効率化やAPIの品質向上を図ることが可能です。Postmanを導入する際には、今回の内容をぜひ参考にしてください。