データサイエンティストの仕事内容とは
データサイエンティストは、データの抽出や分析によってビジネスにおける課題を解決したり、意思決定をサポートするために複雑なデータ解析や予測モデルの構築をしたりする職種です。開発チームと連携して、実装を監督することもあります。
なお、データ系の業務プロセスは下記のようになります。

- データベースの設計構築
- データの抽出・加工
- 集計可視化(データ分析基盤の構築)
- 分析
- モデルを使った検証/予測
データサイエンティストが関わるのは、主にSTEP2~5の部分です。
データサイエンティストがデータ分析やモデル設計を担当する一方で、ほかのエンジニア職もそれぞれの専門分野で重要な役割を果たしています。
類似するほかのエンジニア職がどのように関わっているのかを見てみましょう。
職種 | 業務範囲 |
データベースエンジニア | 1データベースの設計構築、2.データの抽出・加工 |
データエンジニア | 2.データの抽出・加工、3.集計可視化(データ分析基盤の構築) |
データアナリスト | 2.データの抽出・加工、3.集計可視化(データ分析基盤の構築)、4.分析 |
データサイエンティスト | 2.データの抽出・加工、3.集計可視化(データ分析基盤の構築)、4.分析、5.モデルを使った検証/予測 |
そして、データサイエンティストが活躍する場は多岐にわたり、企業のデジタルトランスフォーメーションを支える重要な職種です。
中小企業やデータサイエンスの専門チームを抱える余裕のない企業、また特定のプロジェクトに専門知識を活用したい企業は、外部のデータサイエンティストやコンサルティング企業を頼る傾向があります。
一方、大企業やデジタル化が進む企業では、専任のデータサイエンティストを採用する動きが強まっています。特に、テクノロジー業界や金融業界ではインハウス化が進んでいます。
それでは、具体的な仕事内容を詳しく見ていきましょう。
データの収集
データサイエンティストの仕事は、データの収集から始まります。単に情報を集めるのではなく、具体的な目的に合わせて適切なデータソースを選び、必要な情報を抽出します。
さらに、データの品質も重要になるため、欠損値や異常値がないかをチェックし、整合性の確認なども行います。これにより、信頼性の高いデータをもとにした分析が可能になります。
データの分析と可視化
データサイエンティストは、統計学や機械学習を駆使し、収集したデータから最適な洞察を導き出します。これは、ビジネスの意思決定をサポートするうえで重要な役割を果たしています。
また、分析結果をわかりやすく伝えるためには、「データの可視化」も欠かせません。
複雑なデータを視覚的に理解しやすく表現できれば、意思決定者やチームメンバーにわかりやすく分析結果を伝えることができます。これにより、分析結果がより実際のビジネス行動につながりやすくなります。
レポートの作成
データサイエンティストの仕事には、調査した分析結果をレポートにまとめる業務も含まれます。クライアントや所属企業の経営陣に向けて、専門的な分析結果をわかりやすく説明し、情報活用できるようサポートします。
効果的なレポートは、データにもとづいた意思決定に役立ち、データドリブンな文化の促進に寄与することができます。
戦略の提案
分析結果にもとづき、ビジネスの成長に結び付く具体的な行動計画と戦略を提案します。
たとえば、顧客の解約率を予測するモデルを作成した場合、そのモデルを活用してどのように顧客維持率を向上させるかを提案します。具体的な施策としては、特定の顧客セグメントに対して、キャンペーンを展開したりパーソナライズされたオファーを提案したりすることが挙げられるでしょう。
この過程では、ビジネスの現状や制約を十分に理解したうえで、実行可能な戦略を立案することが大切です。
単なるデータ分析のみを行うのであれば、専門家ではなくても可能です。しかし、データサイエンティストには、その分析結果をいかにしてビジネスの成長に結び付けるかというスキルが問われます。
データサイエンティストの3つのキャリア

データサイエンティストの業務は、主に下記の3パターンに分かれます。
- アナリスト型
- 研究開発型
- アルゴリズム構築・実装型
それぞれ詳しく解説します。
・アナリスト型
アナリスト型のデータサイエンティストは、ビジネスの課題に対してデータを用いた解決策を提案します。データアナリストに近い業務であるため、ビジネスの背景を理解する能力と問題解決力の高さが求められる仕事です。
分析結果をもとに、どのようにしてビジネスの課題を解決し、成果を上げるかを提案することが、この業務の役割です。
・研究開発型
研究開発型のデータサイエンティストは、最先端の技術と手法を駆使して、新しいデータ分析の方法論や学習モデルの開発に取り組みます。プログラミングスキルの高さが求められる仕事です。実験的なアプローチを取ることも多いため、失敗を恐れず新しいアイデアに挑戦する姿勢が重要になります。データ分析の新たな可能性を切り開き、変化に柔軟に対応できる能力も求められます。
・アルゴリズム構築・実装型
アルゴリズム構築・実装型のデータサイエンティストは、データ分析や機械学習の理論を実際に機能するシステムやアプリケーションとして具現化します。
このキャリアでは、高度な実装スキルや運用スキルが求められ、理論を実務に落とし込む能力が必要です。
機械学習エンジニアに近い仕事ですが、データサイエンスの理論を理解しつつ、実際のビジネス環境で動作するソリューションに変換する能力が求められます。
データサイエンティストの平均年収
データサイエンティストの平均的な年収は、約672万円です。月給換算では約56万円になります。初任給は25万円前後が相場です。
データサイエンティスト (正社員) | 一般的なエンジニア | 一般的な会社員 | |
平均 年収 | 約672万円 | 約586万円 | 約458万円 |
データサイエンティストは、統計学や数学、プログラミング、データ分析、機械学習など、多くの専門知識が求められます。これらの高度な知識とスキルを活用して、データから有用なインサイトを導き出し、ビジネスの意思決定や戦略に貢献します。そのため、データサイエンティストの年収は、ほかの職種に比べて高くなる傾向にあります。
データサイエンティストに必要なスキル

データサイエンティストには、下記のようなスキルが求められます。
- 統計学の知見
- ITスキル
- ビジネスに関する知見
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・統計学の知見
統計学は、データから有益な情報を抽出して、信頼性の高い結論を導き出すための重要な知見です。
たとえば、回帰分析や時系列分析などの手法を理解していれば、将来の傾向を予測したり、変数間の関係性を明らかにしたりすることが可能になります。これらの分析は、ビジネスや研究において非常に価値のある洞察を提供します。
データサイエンティストを目指すのであれば、最低でも数ⅢCレベルの数学力は習得しておきたいところです。これにより、統計学やデータ分析の基礎をしっかりと理解し、より高度なデータサイエンスの技術を効果的に活用できるようになります。
・ITスキル
データサイエンティストには、高度なITスキルが求められます。代表的なスキルとしては、Python、R、SQLなどのプログラミング言語や機械学習のアルゴリズム開発・実装などが挙げられるでしょう。
特に、データ分析に関するライブラリのスキルは重要です。PythonのPandas、NumPy、Scikit-learn、Rのggplot2などは、データの前処理や可視化、高度なモデル作成に欠かせないツールです。これらのライブラリを活用することで、複雑なデータの処理や分析を効率的に行うことができます。
さらに、データから価値を引き出し、ビジネスの意思決定をサポートするためには、予測モデルの作成スキルが不可欠です。これにより、将来の動向を予測し、戦略的な意思決定に役立つ洞察を提供することができます。
・ビジネスに関する知見
データサイエンティストにとってデータの分析は、業務の一部に過ぎません。
データサイエンティストは、単なる技術者ではなく、ビジネス実践者の側面も持ち合わせる必要があります。ビジネスの現場で実際に役立つ解決策を提案するためには、データ分析のスキルだけでなく、ビジネス全体を理解し、実践に結び付ける能力が求められます。
また、データ分析以外の業務は、一般的なビジネスパーソンが得意とするスキルが多く含まれています。
そのため、理系のバックグラウンドを持つ人だけがデータサイエンティストに向いているというわけではありません。
文系出身者でも、データ分析のスキルを習得しながら、コミュニケーションスキルや業界知識を高めれば、優秀なデータサイエンティストになれる可能性が十分にあります。
データサイエンティストが年収を上げる方法
データサイエンティストが年収を上げる主な方法は、下記の3つです。
- ビジネスセンスを向上させる
- 問題解決力を高める
- フリーランスとして独立する
それぞれ詳しく解説します。
・ビジネスセンスを向上させる
ビジネスシーンにおいて、コミュニケーション能力の向上は非常に重要です。データから得られた情報を技術的な知識を持たない関係者にわかりやすく伝える能力は、組織内での価値を高め、重要な意思決定に関与する機会を増やします。
さらに、経営学の知識を持つことは、データサイエンティストの市場価値を大きく向上させます。ビジネスの全体像を理解していれば、経営陣との対話がより建設的になり、重要なプロジェクトを任される可能性が高まるでしょう。
そして、データの背後にある人間行動や社会的傾向も理解する力も、強力な武器になります。これにより、深い洞察を導き出し、ビジネスに実質的なインパクトを与える提案ができるようになります。
そのほか、ドキュメントの作成能力も欠かせません。複雑な分析結果を説得力のある文書にまとめる能力があれば、プロジェクトの成功率を高めるだけでなく、自身の貢献をアピールできます。昇進や昇給の強力な根拠にもなるでしょう。
いずれにしても、データサイエンティストが「数字を扱う専門家」ではなく、「ビジネス価値を創出する戦略的パートナー」として認識されるようになれば、その評価は高まり、年収アップにもつながります。
・問題解決力を高める
現代のビジネス環境は急速に変化しており、企業は常に新たな課題に直面しています。このような状況下では、前例のない課題に対して効果的な解決策を見つけ出せる人材が、ますます評価されるようになっています。
分析結果をもとに革新的な解決策を提案し、実行できる能力があれば、ほかのエンジニアと差別化を図れるでしょう。
問題解決力を高めるためには、専門知識を使いこなすための思考力と応用力を磨くことが大切です。データサイエンスの技術や手法を深く理解するだけでなく、それらを状況に応じて適切に応用できる高い能力が求められます。
・フリーランスとして独立する
フリーランスとして独立すれば、スキルや経験にもとづいて直接クライアントと交渉できるため、高い報酬を得られる可能性が高まります。
特に、案件数を増やすことができれば、年収1,000万円を超えることも十分に可能です。
フリーランスとして成功するためには、自身の専門性を明確にし、クライアントにとって価値のある提案ができる力が求められます。
データサイエンティストの年収アップに役立つ資格
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データサイエンティストになるための必須資格はありませんが、下記のような資格を保有していると年収アップに役立つ可能性があります。
- データサイエンティスト検定 リテラシーレベル
- 統計検定
- G検定
- E資格
それぞれ詳しく解説します。
・データサイエンティスト検定 リテラシーレベル
「データサイエンティスト検定 リテラシーレベル」は、データサイエンスの基礎的な知識やスキルを証明できる入門レベルの資格です。試験は「データサイエンス、データエンジニアリング、ビジネス」の3分野から出題されます。
この資格を習得することで、データサイエンスの基礎を体系的に習得していることを証明できます。キャリアの初期段階では、データリテラシーを求められる業務で役立つでしょう。
・統計検定
「統計検定」は、統計の知識や活用力を評価する資格です。データサイエンスのデータ分析やモデル構築には、統計的な手法の適用が不可欠です。
資格を取得すれば、統計的に有意な結果を導き出す能力が向上し、モデルの精度を高められます。
また、統計手法を深く理解していることを示せるため、職場での評価が上がり、年収の向上も期待できます。統計の専門知識は、キャリアアップにも大いに役立つ資格です。
・G検定
「G検定」は、ディープラーニングの基礎知識や、それを事業で活用できる能力を評価する資格です。AI関連のプロジェクトなどで大きなアドバンテージを得ることができるでしょう。
この資格を取得することで、ディープラーニングなどの先進的なAI技術に関する知識を証明できます。
AIを活用した業務が多い企業では、この資格を取得していることで評価を受けやすくなります。
AI技術をビジネスに応用できる人材の需要は増加しているため、フリーランスとして多くの案件を受注したいという人にも適した資格といえます。
・E資格
「E資格」は、日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供する資格です。ディープラーニングを中心としたAI技術があることを証明できます。
資格を取得すれば、AI関連のプロジェクトや機械学習に関する専門性の高さをアピールすることも可能です。
資格取得の具体的な効果は、企業や業務内容によって異なりますが、急速に成長するAI分野を考えると、E資格の取得はデータサイエンティストにとって大きなプラスになる可能性が高いでしょう。
データサイエンティストに向いている人
データサイエンティストに向いているのは、下記のような人です。
- 論理的思考力がある人
- 地道な作業が好きな人
- コミュニケーション能力が高い人
それぞれ詳しく解説します。
・論理的思考力がある人
データサイエンティストの仕事では、大量のデータからパターンを見つけ出し、それをもとに合理的な結論を導く必要があります。データの信頼性や、分析手法の妥当性などを検証するため、論理的な思考プロセスが不可欠です。
また、機械学習モデルの構築では、アルゴリズムの選択や特徴量の設計など、多くの意思決定を論理的に行う必要があります。
論理的思考力が高い人は、データの中から真に価値のある情報を見出し、それらを組織の意思決定に活かせるデータサイエンティストになれるでしょう。
・地道な作業が好きな人
データに関わる業務の多くは、時間と労力を必要とする地道な作業です。この地道な作業を通じて、データの特性や問題の本質を深く理解でき、最終的に質の高い分析結果につながります。
地道な作業を厭わずに価値を見出せる人なら、長期的に見て優れたデータサイエンティストになれる可能性が高いでしょう。粘り強く取り組む姿勢が、データの深い洞察や革新的な解決策を導き出す基盤となります。
・コミュニケーション能力が高い人
データの分析結果を関係者にわかりやすく伝え、内容を理解してもらうことも、データサイエンティストの重要な役割です。
専門用語は避け、視覚的な資料を用いて直感的に理解できるよう工夫が求められます。また、プロジェクトの初期段階では、企業の抱える課題や目標を正確に理解する能力も必要です。
データサイエンティストは、単なる数字の専門家ではありません。データと企業をつなぐコミュニケーターとしての役割も担います。そのため、優れたコミュニケーション能力がある人は、クライアントや所属企業から高く評価される傾向にあります。
データサイエンティストのキャリアパス
データサイエンティストのキャリアパスは多岐にわたります。
ここでは、データビジネスストラテジスト、データサイエンスプロフェッショナル、プロジェクトマネージャーを紹介します。
データビジネスストラテジスト
データビジネスストラテジストは、企業のデータ資産を戦略的に活用して新たなビジネス機会を見出す専門家です。データサイエンティストやエンジニアと連携しながらデータの収集・分析を行い、ビジネスの成長につながる提案をします。
将来的にはChief Data Officer (CDO) や Chief Strategy Officer (CSO) といった経営層のポジションも視野に入るキャリアパスです。
データサイエンスプロフェッショナル
データサイエンスプロフェッショナルは、データを活用して企業の課題解決とビジネス創出に貢献する専門家です。機械学習アルゴリズムの研究開発、複雑なデータモデルの構築、新しいデータ分析手法の考案なども行います。
このキャリアパスは、技術的な挑戦を好み、常に最先端の知識とスキルを追求したい人に適しているでしょう。将来的には技術部門のリーダーや、データサイエンス分野の権威として認められる可能性もあります。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、データサイエンスプロジェクトの計画立案、リソース配分、進捗管理などを行う仕事です。データサイエンスの技術的理解に加えて、プロジェクトの管理手法やリーダーシップなどのスキルが求められます。
チームで大きな目標を達成することに喜びを感じる人や、組織全体を見渡しながら戦略的に考えることが好きな人に適したキャリアパスです。
データサイエンティストの将来性
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急速なデジタル化によってデータ分析・活用の重要性が増しているため、データサイエンティストの需要は今後も拡大し続けるでしょう。企業が効率的な意思決定や革新的なサービスの開発にデータを活用する流れは、今後さらに加速すると考えられます。
さらに、人工知能(AI)や機械学習技術の進歩に伴い、データサイエンティストの役割はますます重要になっています。先端技術を実際のビジネス課題に適用し、価値を創出する能力は、今後高く評価されるでしょう。
そして、データサイエンティストの活躍の場はIT業界だけにとどまりません。金融、医療、製造、小売など、さまざまな産業においても、その役割は拡大しており、扱うデータの量と種類が爆発的に増加することが予想されます。このような環境下で、データから意味のある洞察を引き出せる人材の価値は、今後さらに高まるでしょう。
ただし、データサイエンティストとして成功するためには、常に新しい知識とスキルを継続的に習得する必要があります。
また、データの倫理的な扱いとプライバシー保護に関する知識の習得も重要です。これらの要素を兼ね備えたデータサイエンティストは、今後のビジネス環境において欠かせない存在となるでしょう。
まとめ
データサイエンティストは、高度な専門性と知見が求められる職種です。平均年収は約672万円と高く、ビジネスの成長につながるポジションでもあるため、やりがいのある仕事といえるでしょう。
年収をさらに上げるためには、継続的な学習と戦略的なキャリア構築が重要になります。そして、データサイエンスに関連する資格を取得すれば、専門知識を証明でき、キャリアアップにもつながります。
データサイエンティストとしてのキャリアは多様ですが、それを最大限に活かすためには、スキルの向上と高度なビジネス視点の習得、戦略的なキャリアプランニングが欠かせません。