そもそもワーケーションとは?

ワーケーションは、観光地やリゾート地などで余暇を楽しみつつリモートにて仕事をする働き方で、「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語です。オフィス以外の場所で仕事をすることで、ストレスを軽減しながら作業できたり、作業効率が向上したりするなど、さまざまな効果を得られます。
ワーケーションには、導入する目的に合わせて以下の4種類があります。
ワーケーションの種類 | 目的 |
地方で働くワーケーション | 成果を高める・新たなビジネスモデルを生み出すなどの目的で、地方で一定期間仕事をすること |
地方に移転するワーケーション | 従業員を確保する・高い成果を出すなどの目的で、オフィスを地方に置く、あるいは分散させること |
移住や定住するワーケーション | 移住・定住を希望する従業員が、二地域居住により仕事をしながら地方に生活の拠点を持つこと |
休暇取得を促進させるワーケーション | 従業員が、平日を含めて長期休暇の取得を可能にするために、便宜的に実施するワーケーションのこと |
ワーケーションを導入している企業の事例7選
昨今では、リモートワークの普及により多くの企業がワーケーションを導入しています。こうした企業で働きたい人は、ワーケーションの具体例が気になるでしょう。ここからは、ワーケーションを導入している企業の事例を7つ紹介します。
地方の古民家を活用したワーケーションの事例
A社は、ITソリューションやコンサルティングなど幅広いサービスを展開しています。A社は、地方の古民家を、サテライトオフィスや宿泊場所として従業員に提供する「地域で働く」ワーケーションを導入しました。このワーケーションは、従業員のモチベーションの向上や、新たな気づき・発見の獲得を目的として実施されています。平日は通常の業務を行うためのサテライトオフィスとして古民家を活用し、週末は宿泊場所になるという内容です。ワーケーションを利用した従業員には、以下の変化が現れました。
- 時間の使い方を考え直すきっかけが得られた
- 地方特有の課題に対する視野が広がった
- 地域活動による喜びが得られた
上記のように、働く環境が変わったことで、新たな発見を得られたという声があがりました。
「休暇取得を促進させる」「地域で働く」ワーケーションの事例
大手航空会社のB社は、休暇中に仕事ができる「休暇取得を促進させる」ワーケーションを導入しています。ワーケーションを導入した背景には、「長期休暇後の業務に不安を感じる」や「長期休暇が取得しづらい」などの従業員の意見がありました。こうした意見に後押しされ、有給休暇を利用してリゾート地や観光地、帰省先でリモートワークをするワーケーションを導入しています。ワーケーションを利用した従業員には以下のような変化が現れました。
・長期休暇を取得する人が大幅に増加した
・従業員の仕事に対するモチベーションが向上した
B社は、さらに滞在先で集中討議を行う地方で働くワーケーションも導入しています。また、滞在先で、業務を行いながら農業体験やビール醸造体験などを行うことで、感性を養い自己成長へとつなげる取り組みも行っています。
時間・場所に囚われない働き方を実現したワーケーションの事例
クラウドソーシングサービスを展開しているC社は働く場所や時間に制限を設けず、ルールの範囲内でワーケーションが可能な環境を整備しています。さらに地域の人々との交流や地域創生プログラムの運営による、スキルの向上を目的としたワーケーションも新たに導入しました。ワーケーションを利用した従業員には、以下のような変化が現れました。
- 業務へのモチベーションが向上した
- 新たなつながりが生まれた
- 新たなアイディアが浮かんだ
C社の従業員のなかには、社外で新たなアイディアを生み出すことを重視し、世界旅行しながら仕事をする人もいます。
宿泊もできるコワーキング施設を活用したワーケーションの事例
不動産情報サービスを展開するD社は、宿泊可能なコワーキングスペースを全国数十ヶ所に展開しています。このコワーキングスペースの利用により、D社の従業員は「場所に囚われない自由な働き方」が可能となりました。各地域のコワーキングスペースにはコミュニティマネージャーが在住しており、滞在者同士の交流のためにさまざまな企画を実施しています。ワーケーションを利用した従業員には以下のような変化が現れました。
- 人々のつながりを通じて新たな発見を得られた
- 交流や企画を通じて視野が広がった
自由度の高い働き方を提唱することで、採用力の強化にもつながり、D社で働きたいと考える人は増加しています。
リゾート地にサテライトオフィスを開設したワーケーションの事例
クラウド型顧客管理サービスを展開するE社は、ワーケーションの一環として地方のリゾート地にサテライトオフィスを開設しました。E社の従業員は、ワーケーションを利用してリゾート地にあるサテライトオフィスで3ヶ月間の勤務をしたり、その地域に移住したりしています。
E社は地方自治体との協力により、家族連れの移住者に対して、移住支援にとどまらず、子どもの教育や生活環境についての支援にも取り組んでいます。従業員は、ワーケーションの利用により以下のような変化が現れました。
- 通勤のストレスがなくなり、仕事に集中できるようになった
- モチベーションや生産性が向上した
また、E社では、サテライトオフィスにて地元の若者との交流会を開催し、新たなつながりを構築するための取り組みにも力を入れています。
「好きな場所」で「好きなこと」を実現したワーケーションの事例
IT関連の新規事業やプロダクト開発などの支援を展開しているF社は、「好きな場所で好きなこと」をコンセプトに、「宿泊日数の制限なし」「宿泊費は全額会社負担」のワーケーションを導入しました。
ワーケーションの申請を気軽に出せることから、社内には新卒1~3年目の若手を中心に、多くのワーケーション利用者がいます。「リモートワークのほうが効率がよい」「出社は必要だ」など、どちらかに振り切るのではなく、従業員自身に合った働き方を選べるのが特徴です。従業員はワーケーションの利用により、以下のような変化が現れました。
- ワーケーションでしか実現できない出会いがあった
- 従業員同士で仕事について、一歩踏み出した会話ができるようになった
- 異なるプロジェクトのメンバーと交流する機会を持つことで視野が広がった
離れた場所で仕事をしている従業員に会いに行ったり、チームメンバーとの交流を深めたりするなど、さまざまな目的でワーケーションを利用できます。
オフィス・自宅以外で勤務ができるワーケーション
クラウド型の労務管理システムを展開しているG社では、オフィスや自宅以外で仕事ができるワーケーション制度を導入しました。このワーケーションは、従業員それぞれの考え方や生活に合わせて選択できる働き方です。G社のワーケーションは、申請が簡単であるうえに、オフィス・自宅以外の場所にて最大30日間連続で業務ができます。G社の従業員はワーケーションの利用により、以下のような変化が現れました。
- 1ヶ月間沖縄で仕事をしたところリフレッシュできた
- 妻の里帰り出産に同行できた
- 自身がアイディアを生み出したり、整理したりする業務に向いていることに気づいた
G社は、一人ひとりのライフスタイルに合った働き方を実現するために、従業員にとって働きやすい環境作りへの取り組みを続けています。
ワーケーションはエンジニア職に向いている

今後、エンジニア職への就職を検討している人のなかで、IT企業でワーケーションを利用できるのか、気になっている人もいるでしょう。結論からいうと、エンジニア職はパソコンとインターネット環境さえあれば場所を問わずに働けるため、ワーケーションを導入しやすい職種といえます。
ワーケーションを導入する前提として、リモートワークが可能な職種であるかが重要となります。昨今は、リモートワークを取り入れるIT企業の増加に伴い、ワーケーションを導入する企業も増えています。これらの企業では、オフィスを縮小して固定費を削減し、従業員に還元しているケースも多いため、リフレッシュが目的のワーケーションの導入も進みやすいでしょう。
ただし、企業によっては、情報セキュリティの観点からワーケーションを導入していないケースもあります。たとえば、滞在先のフリーWi-Fiに接続することにより、データが流出するリスクが考えられるでしょう。また、パソコンの盗難・紛失による情報漏えいにも注意が必要です。
ワーケーションを導入している企業で働くメリット

ワーケーションを導入している企業で働くメリットは以下の通りです。
- 気持ちをリフレッシュしながら仕事ができる
- 家族と過ごす時間が増える
- モチベーションや作業効率が上がる
- 有給休暇を取得しやすくなる
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
・気持ちをリフレッシュしながら仕事ができる
ワーケーションを利用すると、時間や場所に囚われずに仕事に取り組めるため、自由な働き方を実現できます。観光地やリゾート地など自身が好きな場所でれば、仕事で疲れた際もすぐにリフレッシュできます。
仕事の合間に温泉に入ったり、観光を楽しんだりするなどのリフレッシュを行うと、ストレスを溜めずに仕事を進められます。ワーケーションでオフィスから離れることで、日頃のルーティンから解放されるため、メンタルケアにもつながります。
・家族と過ごす時間が増える
ワーケーションの利用により、仕事をしながら家族と過ごす時間を確保できます。たとえば、家族と遠出してアウトドア活動を楽しんだり、大自然を満喫したりできます。家族と過ごす時間が増えれば、家族間でのコミュニケーションが活発になり、絆が深まりやすくなります。
また、ワーケーションにより仕事をしながら家族と過ごすことで、子どもの成長にもつながるでしょう。真剣に仕事をしている姿を子どもに見せれば、将来なりたい職業が見つかったり、働くのが楽しみになったりするなどの教育になります。子どもにとっては、ワーケーションの文化に触れることで、多様な価値観を学ぶきっかけを作れる点もメリットです。
・モチベーションや作業効率が上がる
ワーケーションは働き方の選択肢が増えるため、仕事のモチベーションや作業効率の向上につながります。オフィスでの業務は、周りの従業員に気を配りながら仕事を進めなければなりません。物音が気になったり、雑用を任されたりと、効率的に作業を進めることが難しい場面もあります。
ワーケーションを利用すれば、自身にとって集中できる環境で仕事を行えます。周りを気にせずに仕事を進められるため、モチベーションや作業効率が向上します。
・有給休暇を取得しやすくなる
有給休暇は、罪悪感から取得しづらいと考える人もいるはずです。観光地やリゾート地で仕事をしながら休暇を楽しむスタイルが浸透すると、有給休暇の取得に対する抵抗感も薄まることが見込めます。以下は、有給休暇とワーケーションを組み合わせて旅行に行く際のスケジュールの一例です。
<5日間のスケジュール例>
スケジュール | 内容 |
1日目(有給利用) | 家族全員で家を出発。ホテルのチェックイン後は周辺を散策しながらリラックスをして過ごす。 |
2日目・3日目(平日) | 勤務日。朝食後は、ホテル内のスペースで仕事をする。 |
4日目・5日目(休日) | 旅先での新しい体験を楽しみ、家族との思い出を作る。 |
上記のように、休暇を取りつつ仕事をする点がワーケーションの特徴です。「長期休暇」ではなくなるため、有給休暇を取得しやすくなります。
ワーケーションを導入している企業で働く際の注意点
ワーケーションは、家族と過ごす時間が増えたり、モチベーションや作業効率が上がったりするなどのメリットがある一方で、以下のような注意点もあります。
- 労働時間を自身で管理する必要がある
- 交通費や宿泊費などは自身で負担する可能性がある
以下で詳しく解説します。
・労働時間を自身で管理する必要がある
ワーケーションでは、利用中の労働時間を自身で管理する必要があります。ワーケーションの効果を最大限に発揮するには、労働時間と休憩時間のバランスを考えなければなりません。
オフィスとは異なり、上司や同僚の目が届かない場所で働くことになるため、「オン・オフ」の切り替えができずにダラダラ過ごしてしまう可能性があります。またメールや電話、業務などが気になり、業務時間外に仕事をしてはワーケーションの意味がありません。
ワーケーションを利用して効率的に業務を進めたい場合は、業務時間・休憩時間を事前にはっきりと決めておくことが大切です。
・交通費や宿泊費などは自身で負担する可能性がある
ワーケーションを利用して観光地やリゾート地で仕事をする場合、交通費・宿泊費などの費用は、利用する従業員が負担するケースが一般的です。ワーケーションを推進する自治体の場合には、交通費・宿泊費などの補助金制度を利用できる可能性があります。しかし、自治体の補助金制度を利用できない場合は、自己負担が大きくなる可能性がある点に注意が必要です。
また、パソコンやオンライン会議ツールなど、遠隔地で仕事ができるようにするために必要な費用も、従業員が負担するケースがあります。ワーケーションにかかる費用の負担方法は企業ごとに異なるため、事前に確認することが大切です。
まとめ

近年では、リモートワークの普及によりワーケーションを導入する企業が増えてきました。地方の古民家をサテライトオフィスや宿泊場所として貸し出している事例や、好きな場所で好きなことができる事例などさまざまなワーケーションがあります。
ワーケーションを導入するには、リモートワークができる職種であることが前提なため、パソコンとインターネット環境があれば仕事ができるエンジニア職は向いています。
ワーケーションの利用により、リフレッシュしながら仕事ができたり、家族と過ごす時間が増えたりするなどさまざまなメリットがあるでしょう。この記事で紹介したワーケーションの導入事例を参考に、自身に合った働き方ができる企業を見つけてください。