ジョブホッパーとは?
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「ジョブホッパー」は、エンジニアやIT業界に限った言葉ではありません。まずは、「ジョブホッパーとは何か」を押さえておきましょう。
ジョブホッパーの定義
ジョブホッパーとは、1つの勤め先に定着せず、短いスパンで転職を繰り返す人のことです。英語では「job-hopper」と表記します。「hopper」には「跳び回るもの」といった意味があり、さまざまな仕事(job)を転々と跳び回ることに由来する言葉です。
ただし、転職のスパンや回数に厳密な定義はありません。1~2年程度のスパンで転職を3~4回以上経験している場合、ジョブホッパーと見なされることが多い傾向にあります。
なお本記事の以降では、短いスパンで転職を繰り返すエンジニアを「エンジニアジョブホッパー」と表記します。
キャリアビルダーとの違い
ジョブホッパーと混同されやすい言葉に「キャリアビルダー」があります。キャリアビルダーとは、計画的に転職を繰り返しながらキャリアを積み重ねていく人のことです。
複数回の転職を行う点はジョブホッパーと変わりません。しかしキャリアビルダーは、転職前からしっかり計画を立てて転職を行う点が大きな特徴です。次の職場で活かせる資格を取得したり、実績を積んだりしてから転職を行います。
一方のジョブホッパーは、基本的に計画性がありません。その時々に働きたい企業への転職を図ります。
ジョブホッパーの特徴・性格
ジョブホッパーの主な特徴・性格は、次のとおりです。ポジティブ面・ネガティブ面の両方を確認しておきましょう。
ポジティブな特徴・性格 | ネガティブな特徴・性格 |
・切り替えが早い ・情報収集能力が高い ・行動力がある | ・飽きっぽい ・責任感がない ・自信過剰 |
ジョブホッパーは、今の仕事に不満があると転職へと素早く心を切り替える傾向があります。情報収集能力の高さを発揮して次の転職先を探し、高い行動力を発揮して転職を決行するのです。
その反面、飽きっぽい面があり、仕事が長続きしない傾向にあります。今の職場にすぐ見切りをつけられるのは、「責任感のなさ」や「次の仕事で成功できる」という過剰な自信の表れともいえます。ジョブホッパーには長所も短所もあることを覚えておきましょう。
エンジニアジョブホッパーが生まれた背景

IT業界のエンジニアにも、少なからずジョブホッパーは存在します。なぜエンジニアジョブホッパーが生まれたのでしょうか。ここでは、エンジニアジョブホッパーが生まれた背景について解説します。
エンジニアバブルの影響
ジョブホッパーは早期の転職が懸念されるため、企業には敬遠されやすい存在です。しかし、IT業界では2015年から2022年の期間で「エンジニアバブル」といえる売り手市場が続いたため、エンジニアジョブホッパーにも一定の需要がありました。
エンジニアバブルとは、エンジニアの需要の高まりによる、売り手(人材側)に有利な状態のことです。外資系IT企業の日本進出や、ITを内製化する風潮などにより、日本人エンジニアを採用する企業は増えました。
こうした背景からエンジニアバブルの状態となり、転職における採用ハードルが低くなる傾向がありました。転職を繰り返す人でも比較的採用されやすい状況となり、エンジニアジョブホッパーが増えたのです。
自分のスキルに応じた場の追求
自分のスキルに応じた場を追求するエンジニアも多くなりました。つまり、自分のスキルに見合わない仕事に見切りをつけ、活躍できる場へと転職するのです。
ジョブホッパー気質のエンジニアは、昔から一定数いました。しかし、現在と比べれば転職のハードルが高かったこともあり、行動に移せない人も多かったでしょう。
昨今では、転職支援サービスの普及やキャリアの多様化などにより、転職自体が珍しくない時代となりました。こうした背景から、ジョブホッパー気質のエンジニアが転職を選択しやすくなったといえます。
エンジニアジョブホッパーのメリット
エンジニアジョブホッパーはネガティブなイメージを持たれがちですが、メリットもあります。エンジニアジョブホッパーのメリットは、主に下記の3つです。
- 経験値が上がる
- コミュニケーション能力が身につく
- 新しいチャレンジができる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・経験値が上がる
エンジニアジョブホッパーは、さまざまな職場での仕事を通して経験値を上げられます。
1つの企業に所属して自社サービスを開発するエンジニアの場合、特定の業務をひたすら担当し、幅広い業務経験を積めないケースが少なくありません。
1つのスキルは突き詰められても、将来的な独立やジェネラリストといったキャリアの選択肢は少なくなります。
その点エンジニアジョブホッパーは、転職を繰り返すことで幅広い経験を積み、豊かなキャリア形成を図ることが可能です。幅広い経験を活かして新しい職場で活躍したり、多くの経験から新しいアイデアが生まれたりする可能性もあります。
なお、他企業から案件を請け負う「受託開発」や、他企業へ労働力を提供する「SES」の場合も、複数の職場を経験できます。しかし、基本的に所属先の方針によって仕事内容が決まるため、エンジニアジョブホッパーほどの自由度はないといえます。
・コミュニケーション能力が身につく
エンジニアジョブホッパーになることで、コミュニケーション能力を身につけられます。
1つの企業に所属するエンジニアの場合、人間関係が限定されやすく、コミュニケーションの経験も狭くなりがちです。特定の相手とは上手く意思疎通を図れても、タイプが違うと対応できない人も少なくありません。
しかしエンジニアジョブホッパーは、多くの企業でさまざまな人とのコミュニケーションを経験できます。企業が変われば、接することになる上司や同僚の性格や価値観も変わります。幅広いコミュニケーションを通して、人間関係を円滑にする方法を身につけられるでしょう。
・新しいチャレンジができる
エンジニアジョブホッパーは、企業や職場を変えることで新しいチャレンジが可能です。
1つの企業に所属するエンジニアの場合、業務内容はある程度限定されます。たとえば、業務システムを開発している企業に勤めながら、AI開発を行える可能性は低いでしょう。
その点、エンジニアジョブホッパーは転職先次第で、今までとは抜本的に異なる業務やポジションも経験できます。1つの業務内容やポジションにとらわれずチャレンジできるのもメリットです。
エンジニアジョブホッパーのデメリット
エンジニアジョブホッパーにはデメリットもあります。エンジニアジョブホッパーのデメリットは、主に下記の2つです。
- 忍耐力・協調性がないと判断される
- 人間関係を深めるのが難しい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・忍耐力・協調性がないと判断される
エンジニアジョブホッパーは、企業の採用担当者から「忍耐力・協調性がない」と判断されやすいといえます。短いスパンでの複数回の転職に対して、採用担当者は「すぐ投げ出してしまうのでは?」「人と上手く協力できないのでは?」と感じやすいためです。
どのようなエンジニアの仕事であっても、苦しい場面やチームメイトと協力する場面はあります。忍耐力や協調性がないと判断されると、「採用してもすぐに辞めてしまうかもしれない」という懸念が生じ、採用を見送られるかもしれません。
実際のところエンジニア採用では、エンジニアジョブホッパーかどうかを見極めるために、前職の退職理由を聞くケースが多いです。安易な気持ちで退職したと判断されると、エンジニアジョブホッパーと見なされ、イメージは大きく低下します。
しかし、やむを得ない事情や明確なキャリアビジョンが伝われば、イメージダウンにつながらないこともあります。エンジニアの転職に向けた面接では、スキルや経験だけでなく採用担当者を納得させるだけの退職理由や、今後の転職の可能性についても話せることが重要です。
・人間関係を深めるのが難しい
エンジニアジョブホッパーは、人間関係を深めるのが難しいといえます。
1つの職場に長年勤めているエンジニアであれば、チームのメンバーとの信頼性を高められます。しかし、短いスパンで転職を繰り返すエンジニアジョブホッパーは、各職場のチームのメンバーと関わる期間が長くありません。
人間関係が深まる前に退職してしまうため、どの職場でも中途半端な人間関係で終わってしまいがちです。人間関係が浅いと、将来的なキャリア形成で人脈を活かせず、機会損失となってしまいます。
エンジニアジョブホッパーがキャリアアップするには?
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「自分はジョブホッパー気質かもしれない」と感じるエンジニアやエンジニア志望の方もいるでしょう。エンジニアジョブホッパーがキャリアアップするには、下記の3つの方法が有効です。
- スキルを身につける
- キャリアプランを描く
- 多少の不満があっても転職しない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・スキルを身につける
エンジニアジョブホッパーのように転職を繰り返す場合は、スキルを身につけましょう。新たなスキルを習得したり、保有しているスキルの専門性を高めたりすれば、エンジニアとしての市場価値を高められます。
たとえば、前職でWebサービスのフロントエンド開発に携わってきた場合、バックエンド開発を経験できる企業に転職するのも1つの選択肢です。Web開発を幅広くカバーできるようになれば、より重要なポジションで活躍できる可能性が高まります。
また、技術職一筋のエンジニアが、マネジメントや営業といった業務にチャレンジするのも有力です。マネジメントスキルを高めれば「プロジェクトマネージャー」、営業スキルを高めれば「セールスエンジニア」といった職種にキャリアアップできる可能性も考えられます。
重要なのは、転職をただの「職場入れ替え」で終わらせないことです。転職を通してスキルを高めていき、エンジニアとしてステップアップを図りましょう。
・キャリアプランを描く
転職を繰り返す場合でも、キャリアプランを描くことは大切です。前述のように、計画性がないとエンジニアジョブホッパーと判断され、企業からのイメージダウンにつながってしまいます。
将来的にどうなりたいか、どのような方向に進みたいかを考え、それに沿って中長期的なキャリアプランを立てましょう。キャリアプランを立てる際は、現在の保有スキルや自身の性格、好みといった自己分析も必要です。
たとえば、現職で「Python」のスキルを高め、次の職場でデータ分析スキルを高める、最終的に「データサイエンティスト」を目指す、といったキャリアプランが考えられます。ゴールとそれまでの道のりを明確にし、計画的に転職を行いましょう。
・多少の不満があっても転職しない
多少の不満があっても、できる限り転職は避けましょう。どのような仕事・職場であっても、少なからず不満は生じるものです。不満のない仕事を求めて安易に転職しても、同じことの繰り返しとなってしまいます。
とくに1年未満での転職は、よほどの事情がない限りおすすめしません。前述のように、「忍耐力がない」と採用担当者に思われやすいためです。
自分が採用担当者になったと仮定して、「その理由を聞かされて納得できるか?」を考えるようにしましょう。客観的に納得できない理由で転職すべきではありません。信頼できる上司や同僚のサポートも受けつつ、不満の解消を目指すほうが賢明です。
まとめ
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エンジニアジョブホッパーとは、1つの職場に定着せず、短いスパンで転職を繰り返すエンジニアのことです。エンジニアジョブホッパーには、新しいチャレンジができる、コミュニケーション能力が身につく、といったメリットがある一方、企業からのイメージダウンにつながる、人間関係を深めるのが難しい、といったデメリットも無視できません。
エンジニアジョブホッパーのメリット・デメリットを把握し、転職を考える際にはあわせて考慮しましょう。今回紹介したキャリアアップの方法もぜひ参考にしてください。