ネットワークエンジニアの仕事内容とは
ネットワークエンジニアは、企業や組織で使用されるコンピュータネットワークの設計、構築、運用、保守を担当する専門職です。ネットワークの安定性や効率性の維持が、ネットワークエンジニアの重要な役割になります。
具体的な仕事内容は多岐にわたりますが、大きく分けて要件定義、設計、構築、運用・保守の4つのフェーズに分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ネットワークの要件定義
ネットワークエンジニアが最初に取り組むのが要件定義です。クライアントと協議し、必要な機器やコスト、工数を明確にします。セキュリティレベルも詳細にヒアリングしたうえで、最終的に各種要件をまとめます。
この段階でしっかりと要件を定義しなければ、後の設計や構築に支障が出るため、仕事の成否を左右する重要な工程になります。
ネットワークの設計
定義した要件に基づき、ネットワーク構築の具体的な計画を立てます。ネットワークの性能や安定性を決める大切なフェーズです。
ネットワークの構造(トポロジー)は、データの流れや冗長性に影響するため、適切なトポロジーを選択し、データの伝送効率や障害時のリカバリー速度を向上させることが求められます。
機器の選定では、その性能や機能が重要になります。性能が不十分な機器を選ぶと、ネットワーク全体の速度や安定性が損なわれます。
ネットワークの構築
構築フェーズでは、実際にネットワーク機器を設置・配線してネットワークを構築していきます。ネットワークを動作させるための具体的な作業が中心です。
構築が終わったらテストを行い、実際のパフォーマンスやエラーの有無などをチェックします。問題点があれば改善して納品完了です。
ネットワークの運用・保守
稼働後は運用と保守を行います。日常的にネットワークを監視し、トラブルが発生した際には迅速に対応してアップデートや改善を行います。
ハードウェアやソフトウェアの定期的なメンテナンスと、障害発生時の修復作業も大切な業務です。
ネットワークエンジニアの平均年収
doda職種図鑑によると、ネットワークエンジニアの平均年収は448.3万円です。「IT/通信系エンジニア」の中では、12職種中8番目に位置しています。
一般的な会社員の平均年収は414万円なので、比較的高給の職種であると言えるでしょう。
ネットワークエンジニアの高い収入を支えているのは、社会的需要の高まりと高度な専門性、労働環境の厳しさが複合的に関係しています。
令和4年版情報通信白書によると、日本のデータセンターサービス市場規模は、2024年度には2.5兆円を超えると予測されています。

膨大なデータを通信するには、堅牢なネットワークの構築が欠かせません。インターネットの普及やクラウドサービスの拡大に伴い、ネットワークを管理・構築できる技術者の需要は高まっています。この分野は技術的に高度で複雑であり、夜間や休日の対応が求められるケースも多いため、その労働環境の厳しさが報酬に反映されています。
ネットワークエンジニアとインフラエンジニアの違い
ネットワークエンジニアとインフラエンジニアの違いは、業務の担当領域です。
ネットワークエンジニアは、ネットワーク機器の選定や構成、パフォーマンスの監視、トラブルシューティングなど技術的な業務を担当します。
一方、インフラエンジニアは、IT インフラ全般の設計、構築、運用を担当します。サーバー、ストレージ、仮想化基盤、クラウドリソースなども管理の対象です。
ただし、実際の業務範囲は企業によっても異なり、両者の役割が重複することもあります。
ネットワークエンジニアは副業でも可能
近年はリモートワークの普及やクラウドサービスの利用が増えたことから、副業でもネットワーク関連の仕事をする機会が広がっています。常駐案件の副業は難しいですが、在宅やリモート案件なら土日のみでも取り組むことが可能です。
副業向けの案件は「クラウドソーシングサイト」や「フリーランス向け求人サイト」を活用することで比較的見つけやすいでしょう。
大規模なネットワークの設計ではなくても、ルーターの設定やWi-Fiのトラブル対応など、ニーズは多岐にわたります。最近では、中小企業や個人事業主向けに、ネットワークの設置やメンテナンスをサポートする仕事も増えてきました。
自身の知識や経験を活かして、ネットワーク関連の研修やコンサルティングも提供することが可能です。オンラインでの講座開催や技術者向けのコンサルティングを提供することで、副業収入を得ることができます。ただし、本業に支障をきたさないよう、時間管理や労働時間の調整には十分な注意が必要です。
ネットワークエンジニアに向いている人

ネットワークエンジニアには、下記のような人が向いています。
- IT関連に興味がある人
- 学習意欲が高い人
- コミュニケーション能力のある人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・IT関連に興味がある人
IT関連の技術に強い好奇心と興味を持っている人は、ネットワークエンジニアに向いています。
ネットワークエンジニアは、テクノロジーの発展に敏感でなければいけません。新しい機器やプロトコル、セキュリティ対策などの知識を常に学び続ける必要があります。
知識の習得を継続するのは難しいですが、興味がある分野であれば楽しみながら知識を増やしていくことができます。
・学習意欲が高い人
学習意欲が高い人もネットワークエンジニアとして適しています。自身の興味がある分野ではなくても、業務や目標達成のために学習を続けるのが苦にならない人は、ネットワークエンジニアとして活躍できます。
資格取得のための勉強や、最新技術のキャッチアップなど、常に学ぶ姿勢を示せるような人は、高い年収も期待できるでしょう。
・コミュニケーション能力のある人
システム構築時や障害発生時には、さまざまな関係者と円滑に連携する能力が求められます。技術的な知識だけでなく、適切にコミュニケーションを図って情報をわかりやすく伝える力が必要です。
ネットワークエンジニアを目指す人には、技術の習得と並行してコミュニケーション能力の向上に努めることをおすすめします。
ネットワークエンジニアに必要なスキル
ネットワークエンジニアとして成功するためには、さまざまなスキルが必要です。ここでは、特に重要なスキルについて詳しく解説します。
- TCP/IP全般の基礎知識
- OSI参照モデルの知識
- プログラミングスキル
- セキュリティに関する知識
- 問題解決能力
- クラウドの知識
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・TCP/IP全般の基礎知識
TCP/IPは、ネットワーク通信を行うための基本的なプロトコルです。IPアドレスの割り当てやサブネットマスク、デフォルトゲートウェイの概念について理解している必要があります。
また、TCPとUDPの違いも把握しておきたいです。このような知識があれば、ネットワークの設計やトラブルシューティングがスムーズに行えます。
・OSI参照モデルの知識
OSI参照モデルは、ネットワーク通信を7つの層(物理層、データリンク層、ネットワーク層、トランスポート層、セッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層)に分けて考えるためのモデルです。このモデルを理解することで、問題が発生している層を特定しやすくなります。
なお、物理層ではケーブルやハードウェアの問題、ネットワーク層ではIPアドレスの問題が発生するケースが多いです。各層を深く理解することで、効率的に問題を解決できます。
・プログラミングスキル
現代のネットワーク管理には、プログラミングスキルがますます重要になっています。特にPythonやPerlなどのスクリプト言語は、ネットワークの自動化や効率的な管理に役立ちます。
自動化スクリプトを作成することで、手動による設定ミスを防げるため、作業効率化が可能です。また、ログデータの解析やネットワークパフォーマンスの監視にもプログラミングスキルを活用できるでしょう。
なお、SDN環境ではネットワークの設定や制御をソフトウェアで行うため、プログラミングスキルは必須です。
・セキュリティに関する知識
セキュリティ対策も非常に重要なスキルです。近年ではネットワークの脆弱性を狙うサイバー攻撃も多発しています。
そのため、ネットワークエンジニアは脆弱性を特定し、適切な対応をしなければいけません。サイバー攻撃に強いネットワークを構築する力も必要になります。
・問題解決能力
ネットワークエンジニアには、ネットワークの問題を迅速かつ正確に解決するスキルも求められます。
問題の原因を特定して適切な解決策を見つけるためには、論理的な思考と冷静に状況を分析する力も重要になるでしょう。
・クラウドの知識
現代のネットワークインフラでは、クラウド技術が重要な役割を果たしています。主要なクラウドサービスプロバイダー(AWS、Azure、Google Cloud Platformなど)を理解し、各環境でネットワークを設計・管理する能力が求められます。
クラウドの知識があれば、オンプレミス環境とクラウド環境を連携させたり、クラウド上で安全なネットワークを構築したりすることができます。
ネットワークエンジニアが年収を上げる方法

ネットワークエンジニアが年収を上げる方法は主に下記の3つです。
- マネージャーを目指す
- 他のエンジニアに転職する
- フリーランスとして独立する
年収を上げるためには昇進だけでなく、スキルを磨いたりキャリアの方向性を見直したりするのも有効です。
・マネージャーを目指す
マネージャーはスケジュールや予算、リソースなどを管理してプロジェクトの成功を導く仕事です。必要なスキルとマネージャーになる方法を詳しく見ていきましょう。
マネージャーに必要なスキル
マネージャーは、クライアントや他部門の社員、ベンダーなど、さまざまな関係者と円滑なコミュニケーションを図る必要があります。
新しいネットワークシステムを導入する際には、要件定義やスケジュール調整など、関係者との綿密なコミュニケーションが必須です。技術力が高くても、コミュニケーションがうまくいかなければ、年収アップは期待できないでしょう。
大規模なネットワーク構築プロジェクトでは、工程管理や人員配置、リソース調達など、プロジェクト全体をコントロールする能力も求められます。トラブルが発生した際の迅速な初動対応と的確な指示も不可欠です。
マネージャーになる方法
マネージャーになる方法としては「内部昇進」か「転職」が考えられます。
内部昇進は、所属している企業内でキャリアアップする方法です。希望する場合は上司や人事部門にキャリアの目標を伝えておきましょう。スキルや経験によってはスムーズに昇進できる可能性があります。ただし、マネージャー昇進の機会が限られている企業もあるので、自社では昇進にあたりどのようなことが重要視されるのかを確認しておくことが大切です。
転職は、外部の企業でマネージャーのポジションを得る方法です。転職市場でマネージャー職を探し、これまでの実務経験に加え、コミュニケーション能力とリーダーシップ能力をアピールしていきましょう。
・他のエンジニアに転職する
広い視野でキャリアを捉えたい場合は、需要が多く給与が高い職種への転職がおすすめです。セキュリティエンジニアやクラウドエンジニアなどクラウドやセキュリティの分野は急速に成長しているので高い報酬が見込めます。
ただし、転職を成功させるためには、新しい分野の専門知識と技術の習得が不可欠です。オンラインスクールや資格取得を通じて最新技術と業界標準を学び、実践的なスキルを習得していきましょう。ネットワークエンジニアのスキルに他の領域のスキルを肉付けしていくこともおすすめです。
異なるエンジニアリング分野で実務経験を積むのも有効です。たとえば、関連するプロジェクトに参加したり、社内での異動を希望したりすることで、新分野の経験を得ることができます。このような経験は転職活動を進める際にも強力なアピールポイントになり、給与交渉を有利に進める助けになるでしょう。
・フリーランスとして独立する
フリーランスのネットワークエンジニアは、自身のスキルや経験に応じた仕事を選択することができるため、高い報酬が期待できます。案件によっては年収1,000万円以上も可能です。
独立するには、技術的なスキルだけではなく、プロジェクト管理や顧客対応も含めた総合的なスキルが求められます。ネットワークエンジニアとしてのスキルと実績をしっかり固めることも重要です。
自己マーケティングや契約書の作成、税務処理など、ビジネスに必要なスキルも習得しておきましょう。
ただし、いきなり独立するのはおすすめできません。独立後のリスクを抑えるためにも、副業から始めて経験を積んだほうが安全です。
ネットワークエンジニアの年収アップに役立つ資格

ネットワークエンジニアになるための必須資格はありませんが、下記のような資格を保有していると年収アップに役立つ可能性があります。
- CCNA
- CCNP
- ネットワークスペシャリスト
それぞれ詳しく解説します。
・CCNA
「CCNA」は、世界的に有名なネットワーク系ベンダー資格「Cisco技術者認定資格」の中でも初級者向けのものです。経験年数1~3年程度の初級者を対象としており、ネットワークエンジニアの基礎レベルを証明できます。
取得の過程では、基本的なセキュリティ対策についても学ぶことができるため、ネットワークエンジニアの入門者や、ネットワークに関連する仕事を始めたい人に向いています。
・ CCNP
「CCNP」も「Cisco技術者認定資格」の1つですが、CCNAよりも高度な知識とスキルを要求される資格です。すでにCCNAを取得している人や、ネットワーク知識を深めたい中級~上級者向けの資格です。
CCNPを取得するためには「Core試験」と、「Concentration(6科目から1つ選択)」の2科目に合格する必要があります。
CCNPを取得すると高度なタスクを行える能力を認められるため、待遇面でも有利になります。
・ネットワークスペシャリスト
「ネットワークスペシャリスト」は、情報処理技術者試験の中でも最高峰の資格です。国家資格(レベル4)なので、取得すれば高度な専門知識を持つことを証明できます。これにより、昇進や給与の面でも有利に働く可能性があるでしょう。
試験の準備を通じて得られる知識とスキルは実務にも直結しています。試験対策中であっても、準備の過程で学んだことは日々の業務に役立つでしょう。
ネットワークエンジニアのキャリアパスと将来性
IT業界全体が急速に進化しているため、ネットワークエンジニアの将来性は明るいと考えていいでしょう。
また、ネットワークエンジニアとしてのキャリアは、多様な方向に展開できます。専門分野を広げたり、高度なポジションに進んだりすることも可能です。
具体的なキャリアパスとしては、ネットワークのスペシャリスト、ITコンサルタント、インフラエンジニアなどが考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ネットワークのスペシャリスト
上級レベルのエンジニアは、高度な技術知識と実務経験を持ち、複雑なネットワーク設計やトラブルシューティングを担当します。規模の大きなネットワークの構築や最適化、新技術の導入プロジェクトをリードする役割もあるでしょう。
上級エンジニアになるためには、常に最新の技術トレンドを追い続けることが重要です。たとえば、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)やネットワーク機能仮想化(NFV)などの新しい技術を学び、実務に応用するスキルも求められます。
上級エンジニアとしてのキャリアを積むことで、給与の高い責任のあるポジションに就く機会も増えるでしょう。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、クライアント企業に対してネットワーク設計や最適化、セキュリティ対策などのアドバイスを提供する職種です。クライアントのビジネスニーズに最適なソリューションを提案して実装をサポートします。
成功するためには、幅広い技術知識とともに、ビジネス視点での提案力が求められます。クライアントのビジネスプロセスや課題を理解したうえで、技術的な解決策をビジネス価値に結びつける能力があれば、さまざまな現場で重宝されます。
また、クライアントに対し明確で効果的な提案を行うコミュニケーションスキルとプレゼンテーションスキルも欠かせないでしょう。
インフラエンジニア
インフラエンジニアにキャリアを広げることも、将来性のある選択肢です。インフラエンジニアは、ネットワークだけでなく、サーバーやストレージ、データセンターなど、ITインフラ全体の設計・構築・運用を担当します。
インフラエンジニアになるためには、ネットワークの知識に加えてサーバーや仮想化技術、クラウドサービスなどについての理解が必要です。システム全体を俯瞰して見る能力や、複雑なインフラ環境を効率的に管理するスキルも求められます。
ITインフラの重要な支柱として、インフラエンジニアは重要な役割を果たします。その責任は大きいですが、その分やりがいもあります。クラウド技術の進化とともに需要も増えているので、将来的なキャリアの安定性も高くなるキャリアプランです。
まとめ

本記事では、ネットワークエンジニアの年収や仕事内容、キャリアパスなどについて紹介しましたが、いかがでしたか?
ネットワークエンジニアは、IT化が進む現代社会において非常に重要な役割を担っています。平均年収も約450万円と比較的高水準です。
技術の進歩に伴うスキルアップは絶えず求められますが、キャリアの幅が広く将来性も明るいので、目指してみる価値は十分にあるでしょう。