ヘルプデスクの仕事内容
ヘルプデスクは、社内の従業員や顧客が直面するIT関連の問題をサポートする職種です。パソコンやソフトウェアの使用中に起こる技術的なトラブルの解決や、システムの利用方法に関する問い合わせなどの対応が主な業務となります。
社外と社内では仕事内容が異なるため、それぞれ詳しく解説します。
社外ヘルプデスク
社外ヘルプデスクは、自社製品やサービスを利用する社外の顧客からの問い合わせに対応するのが主な仕事です。電話やメール、チャットなどを通じて、製品の使い方や技術的な問題の解決方法を説明します。
頻繁に寄せられる質問や問題に関するマニュアル・FAQの作成にも携わり、顧客自身で解決できるようにサポートするのも大切な仕事です。製品やサービスに関する不満を持つ顧客の問い合わせにも対応します。このような顧客に対しては迅速で丁寧な対応を行い、顧客満足度の向上を図ります。
社外ヘルプデスクは顧客と直接やり取りをするため、「会社の顔」としての役割も果たしていると言えるでしょう。
社内ヘルプデスク
社内ヘルプデスクは、社内の従業員に対して技術的なサポートを提供する仕事です。
日々の業務で使用するシステムやソフトウェア、ネットワークなどに関するさまざまな問題に対応します。場合によっては、自社で使う外部製品・サービスの導入検討やリプレイスにも関わります。
社内で新しいシステムやソフトウェアを導入する際に、従業員に使い方を指導するのも仕事の1つです。また、定期的にITセキュリティに関する研修を実施することもあります。
社内ヘルプデスクは、社内全体の業務効率を向上させる重要な仕事です。社員一人一人の作業環境を快適に保ちながら社内全体の生産性向上を目指します。
ヘルプデスクの平均年収

「求人ボックス 給料ナビ」によると、ヘルプデスクの平均年収は約396万円です。月給換算では約33万円、初任給は21万円前後が相場になります。一般的なエンジニアや会社員に比べると年収水準は低めです。
ヘルプデスク | 一般的なエンジニア | 一般的な会社員 | |
平均年収 | 約396万円 | 約586万円 | 約458万円 |
引用:「求人ボックス 給料ナビ」、「賃金構造基本統計調査 表番号7」「民間給与実態統計調査」
ヘルプデスクの業務には技術的な知見も求められますが、他のエンジニア職のような高度な専門知識と経験は求められないことも多いです。プロジェクトマネジメントやシステム開発といった高付加価値業務を担当する機会も少ないため、全体的な年収は低めに設定されるケースが多くなります。
ただし、全体的な給与幅は273~785万円と幅が広いため、勤務先や経験・スキルなどによっても年収は大きく異なると考えられるでしょう。
ヘルプデスクに必要なスキル
ヘルプデスクは未経験からでも挑戦できます。下記のようなスキルがあると、ヘルプデスクとして活躍できるでしょう。
- ビジネスマナー
- コミュニケーションスキル
- OSの知識やOffice系ソフトの知識
- 製品とサービスに関する知識
それぞれについて詳しく解説します。
・ビジネスマナー
顧客や社内の従業員と接する際には、適切な言葉遣いと態度が求められます。
たとえば、電話での応対では明るく丁寧な声で話し、相手の話をしっかりと聞く姿勢が大切です。メールでのやり取りでは正しい文法と敬語を使い、誤解を招かないよう正確に意図を伝える必要があります。対応を間違えてしまうと、会社全体の評価を下げることにもつながります。
ビジネスマナーを習得すれば相手からの信頼を得られ、スムーズなコミュニケーションも可能になるでしょう。日々の業務においてもビジネスマナーを意識しておくことで習慣になり身につけることができます。
・コミュニケーションスキル
顧客や従業員の話を注意深く聞き、理解する能力も求められます。相手の言葉の裏にある問題や要望を読み取り、的確な解決策を提案することも大切です。
技術的な話題をわかりやすく説明する能力も求められるでしょう。問題を抱える顧客は温度感が高いケースも多いため、相手の様子を伺いつつ冷静で丁寧に対応できる能力も必要になります。
親切で丁寧なコミュニケーションは、顧客との信頼関係を築き、継続的にサービスを利用してもらうためにも大切です。
・OSの知識やOffice系ソフトの知識
ヘルプデスクは、パソコンやオペレーティングシステム(OS)に関する幅広い知識も求められます。特にOffice系ソフト(WordやExcelなど)の知見は必須と言っていいでしょう。ネットワークの基礎知識やパソコンのセットアップ、セキュリティに関する理解なども身につけていれば、ヘルプデスクとしての活躍の幅を広げられます。
このような知識は、実際に機器を操作しながら学ぶのが効果的でしょう。自身が日常的に使用している機器やソフトウェアについて詳しく学び、徐々に知識の幅を広げていくのがおすすめです。
・製品とサービスに関する知識
ヘルプデスクの仕事では、自社製品やサービスに関する深い理解も重要です。顧客の問い合わせに的確に回答するためには、製品の機能や特徴、使用方法、よくある問題と解決策などを熟知していなければいけません。製品に複数のバージョンやオプションがある場合は、それぞれの違いや利点・制約についても知っておく必要があります。
ヘルプデスクの場合は、自社で使用している外部製品の知識も求められるでしょう。特殊な業務フローや設定がある場合は、基本的な知識に加えて深く理解しておかなければいけません。日々の業務の中で新しい情報を積極的に吸収しながら、継続的に学習する姿勢も重要です。
ヘルプデスクが年収を上げる方法

ヘルプデスクが年収を上げる方法は、主に下記の4つです。
- 英語力を高める
- 技術的なスキルを習得する
- マネジメントスキルを鍛えて昇進を狙う
- キャリアチェンジする
それぞれ詳しく解説します。
・英語力を高める
グローバル化が進む近年では、英語を使用する顧客や外国人の従業員とコミュニケーションを図る機会が増えています。ビジネスレベルの英語力があれば、海外から問い合わせにも対応でき、年収が高めに設定されていることが多い外資系企業でのヘルプデスクも可能です。
ヘルプデスクで英語力を活用したい場合は、日常的に使用する技術用語や業界特有の表現を英語で学ぶことから始めるとよいでしょう。オンライン英会話や英語の技術文書を読むなど、日々の小さな積み重ねも大切です。文章の読み書きができる程度の初級レベルの英語力があれば、まずは英語のメール対応から始めて徐々に経験を積む方法もあります。
英語でのコミュニケーションに自信がつくと責任のある役割を任されるようになり、結果として年収アップにつながる可能性が高まります。焦らず着実に英語力を向上させていけば、キャリアの幅が広がるでしょう。
・技術的なスキルを習得する
基本的なIT知識に加えて、ネットワーク管理やセキュリティ、プログラミングなどのニーズが高い専門スキルを習得すれば、高度な業務にも携われるようになります。技術の新しいトレンドにも常にアンテナを張り、積極的に学ぶことも大切です。
技術力が向上すれば複雑な問題解決や高度なサポートが可能になり、年収が上がる可能性も高まります。興味がある分野から少しずつスキルアップを図り、徐々に専門性を高めていく方法が効率的です。
・マネジメントスキルを鍛えて昇進を狙う
マネジメントスキルを磨いて昇進を目指すのも、年収を上げる1つの方法です。チームリーダーやマネージャーになると責任は増えますが、給与も上がる傾向にあります。
チーム内での役割を確実にこなしながら、少しずつ周りをサポートする意識を持つところから始めてみましょう。ヘルプデスクの業務で社内の信頼を積み上げ、機器やソフトウェアの導入などで社内SEチームのサポートなどを行っていれば、複数人が関わるプロジェクトのまとめ役を任される可能性もあります。
マネジメントスキルが認められれば昇進の機会も増え、年収アップにつながるでしょう。
・キャリアチェンジする
ヘルプデスクの経験を活かしつつ、高収入が期待できる関連分野にキャリアチェンジするのも年収を上げる方法の1つです。システムエンジニアやネットワーク管理者といった職種であれば、ヘルプデスクの経験を活かしながら高い年収が期待できます。
キャリアチェンジを成功させるためには、目標の職種に必要なスキルを調べたうえで、計画的に準備を進めることが大切です。
キャリアチェンジは大きな挑戦に感じるかもしれませんが、長期的な視点で自己投資をすることによって、充実したキャリアと高い年収を実現できる可能性が広がります。
ヘルプデスクの年収アップに役立つ資格

ヘルプデスクに必須の資格はありませんが、下記のような資格を保有していると年収アップに役立つ可能性があります。
- 基本情報技術者試験
- TOEIC
- Microsoft Office Specialist(MOS)
それぞれの資格について詳しく見ていきましょう。
・基本情報技術者試験
「基本情報技術者試験」は、ITに関する基礎知識と技能が問われる国家試験です。資格を取得すれば、デジタル人材に欠かせないスキルを客観的にアピールできます。
ITインフラやソフトウェアのトラブル対応には技術的な知識が不可欠であるため、資格を取得すればヘルプデスク業務にも役立つでしょう。高度な問題の解決にも活用でき、年収アップにつながる可能性も高まります。また、基本情報技術者試験は「ITエンジニアの登竜門」とされており、ヘルプデスク以外のITエンジニア職への転職の際にも役立ちます。
・TOEIC
「TOEIC」は、英語のコミュニケーション能力を判定する試験です。世界160カ国で実施されている世界共通の試験なので、国際的に英語力をアピールしたい場合にも役立ちます。合否ではなくスコアで評価されるため、自身の英語力を確かめたいという人にもおすすめです。
英語でスムーズにコミュニケーションできる能力があれば、企業内での需要が高まり、給与のアップや昇進につながる可能性があります。多国籍企業や海外のクライアントを持つ企業では英語力が重視されるため、TOEICのスコアが高いほどキャリアの選択肢も広がるでしょう。
・Microsoft Office Specialist(MOS)
「Microsoft Office Specialist」は、マイクロソフト社のWordやExcel、PowerPointなどのMicrosoft Office製品の知識・操作スキルを証明できる資格です。世界各国で認知度が高く、社員教育や内定者研修にMOSを活用する企業も増えています。
ヘルプデスク業務ではOffice製品に関する問い合わせも少なくないため、資格を取得すれば業務能力の向上につながるでしょう。文書作成や資料作成のスキルが高まれば、より重要な業務を任される可能性も高まります。
ヘルプデスクに向いている人
ヘルプデスクには、下記のようなタイプの人が向いています。
- 接客が好きな人
- コールセンターで勤務した経験がある人
- 相手の立場になれる人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・接客が好きな人
ヘルプデスクの仕事は多くの人とやり取りをする機会が多いため、接客が好きな人に向いています。技術的な問題で困っている顧客に対して親身になって耳を傾け、解決策を丁寧に説明できるでしょう。
また、接客が好きな人であれば難しい状況でも明るく丁寧な対応で、相手に安心感を与えることもできます。このような姿勢がある人なら、顧客満足度や会社の評判向上にもつなげられるでしょう。
ヘルプデスクでの優れたパフォーマンスを評価されれば、サポートリーダーやカスタマーサポート部門の管理職へ昇進するチャンスも増えます。
・コールセンターで勤務した経験がある人
コールセンターは、電話やメールを通じて顧客とコミュニケーションを図るという点でヘルプデスクと共通しています。そのため、コールセンターで培った電話応対のスキルや効率的に情報を聞き出す能力は、ヘルプデスクの仕事でも役立ちます。
コールセンターでの経験者は多様な顧客に対応した経験があり、さまざまな性格や要望を持つ人とのコミュニケーションにも慣れています。忙しい時間帯や困難な状況でも冷静に対応できるでしょう。
・相手の立場になれる人
相手の立場に立って考えられる人なら、技術的な問題を抱えて困っている顧客の不安や焦りを感じ取り、適切な対応ができます。顧客に対して専門用語を避けてわかりやすい言葉で説明したり、焦っている顧客には落ち着いた態度で接したりすることもできるでしょう。
顧客が言葉で上手く表現できていない問題でも、相手の立場に立って考えることで、本当の原因を見抜けるかもしれません。顧客が本当に求めていることを理解し、状況に応じて解決策や代替策などを提案できる人であれば、ヘルプデスクとして活躍できるでしょう。
ヘルプデスクのキャリアパス
ヘルプデスクのキャリアパスは下記のように多様です。
- ネットワークエンジニア
- サーバーエンジニア
- サーバーサイドエンジニア
- 社内SE
それぞれ詳しく解説します。
・ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアは、企業や組織のコンピューターネットワークを設計・構築し、稼働後の運用・保守までを担当する専門家です。ヘルプデスクで培った基本的なネットワークの知識や、ユーザーの視点からの問題解決能力は大いに役立ちます。ただし、ネットワーク技術の深い理解は必要です。
企業のIT基盤を支える重要な役割を担うため責任は大きくなりますが、キャリアの可能性も広がります。
ネットワークエンジニアを目指したい人は、ヘルプデスクでネットワークに関する知識を深めながら、専門的なスキルを習得していくといいでしょう。
・サーバーエンジニア
サーバーエンジニアは、企業のサーバーシステムの設計や構築、運用保守、サーバー上で動作するプログラム・アプリケーションのメンテナンスを担う専門家です。ヘルプデスクで経験したサーバー関連の問題対応は大きな強みとなります。
サーバーエンジニアになるためには、サーバーに関する深い知識だけではなく、データベース管理や仮想化技術などのスキルも必要です。システムの安定運用に関する知識も求められます。責任感も伴いますが、やりがいのある仕事と言えるでしょう。
・サーバーサイドエンジニア
サーバーサイドエンジニアは、Webアプリケーションやシステムのバックエンド部分を設計、開発、保守する専門家です。
サーバーサイドエンジニアになるためには、データベース設計と管理、APIの開発、セキュリティ対策などのスキルが重要になります。プログラミング言語の習得も必須です。常に新しい技術やフレームワークが登場する分野であるため、継続的な学習も欠かせません。
エンジニアリング分野での専門性が高まれば、プロジェクトに関与する機会も増えます。市場での需要は高く、年収の大幅なアップも期待できるでしょう。
サーバーサイドエンジニアを目指したい人は、Webシステムに関する基礎知識を深めながら、空き時間を使ってプログラミングを習得するところから始めるのがおすすめです。
・社内SE
社内SEは、社内のITシステム全般の企画、設計、導入、運用、保守を担当する職種です。ヘルプデスクで培った幅広いIT知識や、社内ユーザーとのコミュニケーション能力を活かせます。
社内SEになるためには、ITインフラ全般に関する知識が必要です。業務プロセスの理解とプロジェクトマネジメントスキルも重要になります。経営的な視点からITの活用を考える能力も求められるでしょう。
社内SEを目指す場合は、ヘルプデスクでさまざまな部署のITニーズを理解したうえで、小規模なシステム改善プロジェクトに携わりながら、少しずつ経験を積んでいくのが効率的です。社内SEの中でも運用保守を主業務とするポジションであれば、ヘルプデスクからも転職しやすいでしょう。
ヘルプデスクの将来性

AI技術の進歩に伴い、人間が対応している多くのヘルプデスク業務は自動化される可能性が高まっています。
たとえば、チャットボットは自然言語処理を活用して、顧客からの問い合わせにリアルタイムで対応することができ、24時間体制でのサポートを実現します。音声認識技術を利用したバーチャルアシスタントや、自動応答システムなどの活用が進む可能性もあるでしょう。AIは単純な質問応答だけでなく、過去の問い合わせ履歴やデータに基づくパーソナライズされた提案も行えるため、高度なサービスの提供が可能です。
ヘルプデスクとして将来的に活躍したい場合は、専門性を高め、AIが対応できない柔軟な判断力や問題解決能力の強化が重要になるでしょう。顧客の不安を取り除いて信頼関係を築くためには、人間の感情を理解して共感を示す対応が求められるケースは少なくありません。
AIや自動化技術と共存しながら、人間ならではの対応ができるようにスキルアップしていきましょう。
まとめ
ヘルプデスクは、技術的な知識とコミュニケーション能力が求められる仕事です。平均年収は約396万円と比較的低い水準ですが、経験や技術、勤務地域、企業規模などによっても大きく変動します。スキルを磨けば年収アップを狙うことも可能です。
今後はAIに代わる業務も増えてくる可能性もあるため、将来的にもヘルプデスクとして活躍したい場合には、専門性を高め人間ならではの対応力強化が求められます。技術力の向上だけではなく、顧客対応力やビジネススキルの向上も図りながら自身の市場価値を高めていきましょう。