プロジェクトマネージャーの仕事内容
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの全体的な進行を管理して予算、品質、納期などに責任を持つ重要な職種です。
新規プロジェクトが基本的な担当業務となります。メンバーも毎回変わるような状況下で、期限内に成果を上げる必要があるため難易度は高めです。プロジェクトが大きい場合はPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を立て、業務の一部を任せるケースもあります。
具体的な仕事内容を詳しく見ていきましょう。
システム開発計画の立案
プロジェクトの目的・目標を明確に理解したうえで、それを達成するための具体的なシステム開発計画を作成します。計画の立案にはスケジュール、予算、必要なリソースなどが含まれます。プロジェクトの作業範囲を明確にするスコープ、プロジェクトの進行に伴い発生するコストやリスクの予想、開発するシステムに求められる品質などの要素を踏まえた計画立案が必要です。
立案した計画はプロジェクト全体の指針となるだけではなく、チームメンバーや関係者の理解を深めるためにも重要です。
チームの編成
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの要件に基づいて最適なチームを編成する責任があります。プロジェクトの成功にはスキルと経験を持つチームメンバーが不可欠です。
システム開発においては資源のほとんどが人間であるため、人をはじめとする適切なリソースの管理と調達をしなければなりません。
チームを編成する際は、役割と責任の明確な割り当ても行います。メンバー間の良好な関係を構築して協力的な作業環境を整えるのも、プロジェクトマネージャーの重要な役割です。
進捗・管理
プロジェクトの進捗管理は中核的な業務の1つです。計画と実際の進捗状況を常に比較しながら、必要に応じて調整しなければいけません。
プロジェクトマネージャーが進捗管理で考慮すべき要素は幅広いです。計画通りにスケジュールが進んでいるか、適切なコスト管理ができているか、適切に資源を調達できているか、開発途中で発生したリスクに対処できているか、プロジェクトの各段階で設定した品質に到達できているかなどが挙げられます。
コミュニケーション管理
チームメンバーやステークホルダーなど、プロジェクトに関わるすべての関係者とスムーズなコミュニケーションを図ることも大切です。
「コミュニケーションをスムーズに行う」と言われると簡単に聞こえますが、顧客や関係者とのやり取りに使うツールや、コミュニケーションをとる中で発生した変更・要望などの管理場所を決めておかないと、プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトの全体像をつかめず進行に支障が出る可能性があります。
効果的で適切なコミュニケーション管理によってプロジェクトの透明性も高まり、関係者間の信頼関係も強化されるでしょう。
評価・レビュー
プロジェクトの各段階や完了時には、成果物の品質、目標の達成度、チームのパフォーマンスなどを客観的に評価します。
また、プロジェクト終了時には、プロジェクト全体の振り返りを行い、成功点や改善点を特定します。評価とレビューの結果は、以降のプロジェクトや自身のスキルアップにも役立つでしょう。
プロジェクトマネージャーの平均年収
厚生労働省の職業情報サイト「jobtag」によると、プロジェクトマネージャーの平均年収は約684万円です。一般的なエンジニアや会社員に比べると年収は高くなります。
プロジェクトマネージャー | 一般的なエンジニア | 一般的な会社員 | |
平均年収 | 約684万円 | 約586万円 | 約458万円 |
引用: 「jobtag プロジェクトマネージャ(IT)」、「賃金構造基本統計調査 表番号7」「民間給与実態統計調査」
プロジェクトマネージャーに求められるのは、技術的なスキルだけではありません。リーダーシップ、責任の重さなども伴うため、一般的なエンジニアに比べると年収は高くなる傾向にあります。
プロジェクトマネージャーになるには

プロジェクトマネージャーになる方法はいくつかあります。
まずは、システムエンジニアなどで上流工程の経験を積む方法です。この経験によってプロジェクトの全体像を把握できるようになり、クライアントのニーズや課題を理解する力も養われます。
開発リーダーとしてチームを率いる立場に立ち、進捗管理や問題解決などを担当するのも1つの方法です。この役割ではリーダーシップやコミュニケーションスキルが求められるため、プロジェクトの成功に向けて指揮を執る能力を習得できます。
システムエンジニアや開発リーダーとして、システム開発における全工程の経験を十分に積めば、プロジェクトマネージャーとして採用・活躍できる可能性が高まるでしょう。
プロジェクトマネージャーに必要なスキル
プロジェクトマネージャーには、下記のようなスキルが求められます。
- マネジメントスキル
- 業界特有の知識
- システム開発のスキル
それぞれ詳しく解説します。
・マネジメントスキル
プロジェクトマネージャーには、チームを適切に導き、モチベーションを高める能力が求められます。目標達成のためにリスクや作業範囲を決めるスコープマネジメントスキルも必須です。
複雑な状況下で迅速・適切な意思決定を行う能力も重要です。プロジェクトの進行中には予期せぬ問題や変更が発生するケースも少なくありません。そのような場合でも冷静に判断して最適な解決策を見出せる能力が求められます。
マネジメントスキルや意思決定能力は経験を通じて培われるものですが、継続的な学習や訓練によって向上させることもできます。
・業界特有の知識
プロジェクトが属する業界の深い知識も欠かせません。特定分野の技術的な側面だけでなく、業界のトレンドや規制、競合状況、顧客ニーズなども理解しておく必要があります。
たとえば、金融業界のプロジェクトを管理する場合には、金融商品と規制についての知識が必要です。医療業界であれば、医療技術や医療制度に関する理解が求められます。
業界特有の知識は、チームメンバーや外部の専門家との対話も円滑にします。プロジェクトの方向性を決める際にも役立つでしょう。
・システム開発のスキル
システム開発のプロセスや技術に関する理解も不可欠です。クライアントやステークホルダーのニーズを正確に理解したうえで、実現可能な要件として定義する能力も求められます。
技術的な課題が発生した際に解決できるスキルがあると活躍の幅が広がります。ステークホルダーにプロジェクトの状況や進捗を適切に伝え、必要に応じて交渉をするコミュニケーション能力も必要でしょう。
プロジェクトマネージャーが年収を上げる方法
プロジェクトマネージャーが年収を上げる方法は、主に下記の3つです。
- 対応可能な業務範囲を広げる
- SIerに転職する
- フリーランスとして独立する
それぞれ詳しく解説します。
・対応可能な業務範囲を広げる
対応可能な業務範囲を広げれば、多くのスキルと経験を習得でき、大きな責任を担う仕事に就けるようにもなります。
プロジェクトマネジメントの範囲を超え、ビジネスやシステムアーキテクチャといった関連分野のスキルを習得するのも、年収を上げる1つの方法でしょう。従来とは異なる業界や分野のプロジェクトへの挑戦も有益です。
ただし、新しいスキルや知識の習得には時間と努力が必要になります。継続的な学習と実践を通じて、段階的にスキルアップしていきましょう。
・SIerに転職する
SIerは、クライアントのためにシステムの企画、設計、開発、運用などを一貫して行う企業です。SIerと一言で言っても、それぞれに特色を持っています。要件定義からプロジェクトに携われる上流のSIer、大規模システム開発を請け負っているSIer、資金力のあるSIerでは、年収も高額になる傾向があります。特に、クライアントと直接契約を結ぶ「Tier1」と呼ばれる企業なら予算や管理のコントロールができるため、報酬の高いプロジェクトに参加できる機会も増えるでしょう。
多様なプロジェクトに携わりながら幅広い経験を積めるのも、SIerに転職する大きなメリットです。多様な経験を積むことは将来的なキャリアアップにも役立つでしょう。
・フリーランスとして独立する
スキルや経験に基づいて報酬を直接交渉できるフリーランスなら、高年収につながる可能性が高まります。複数のプロジェクトを同時進行させれば、収入源を分散させながら年収1,000万円超えを狙うことも可能です。
プロジェクトを選択する自由もあるため、専門性や興味に合った仕事に集中できるのもフリーランスのメリットと言えるでしょう。
プロジェクトマネージャーの年収アップに役立つ資格

プロジェクトマネージャーに必須の資格はありませんが、下記のような資格を保有していると年収アップに役立つ可能性があります。
- プロジェクトマネージャ試験(PM)
- P2M試験
- PMP (プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)
- ITストラテジスト試験
- ITコーディネータ試験
資格取得は継続的な学習を通した知識の習得と自己啓発の一環として捉えることが大切です。技術や業界の動向は常に変化しているため、資格の取得後も最新の知識とスキルを吸収し続けることが年収アップにつながります。
それぞれの資格について詳しく見ていきましょう。
・プロジェクトマネージャ試験(PM)
「プロジェクトマネージャ試験」は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験です。
認知度が高く、合格率は10~15%と難易度も高いため、資格を取得すればプロジェクト管理責任者としてのスキルを客観的にアピールできます。大規模で重要なプロジェクトを任される可能性も高まり、年収アップも期待できるでしょう。
・P2M試験
「P2M試験」は、プロジェクトマネジメントやプログラムマネジメントに関する知識やスキルを証明するための資格試験です。種類は「PMC」「PMS」「PMR」「PMA」に分かれており、それぞれに出題範囲が異なります。各試験の合格率は50~70%と比較的高いため、挑戦しやすい試験と言えるでしょう。
年収アップにつなげるならPMR資格試験を取得しておきたいところです。プロダクト・プロジェクトマネージャーが実業務で直面する課題に対する実践力を、論文や面接、ワークショップで審査されます。ただし、PMR資格試験を受験するにはPMSプログラム試験に合格している必要があります。さらに、PMS資格試験に合格していないとPMSプログラム試験を受験できないため、段階的に受験していくとよいでしょう。
・PMP (プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)
「PMP」は、プロジェクトマネジメントの高度な知見を証明できる資格です。資格の取得過程で仕事の進め方を体系的に学べるため、スキルアップにも役立ちます。
世界中で広く認知されている資格であるため、グローバル企業や国際的なプロジェクトにおいても評価される可能性が高いでしょう。
・ITストラテジスト試験
「ITストラテジスト試験」は、プロジェクト管理を含む情報技術の幅広い知見とビジネススキルを問われる試験です。資格を取得すれば、ITを高度に活用した経営戦略の企画立案力をアピールできます。
試験対策として学習を続けることでITと経営の両視点を持てるようになれば、CIOなどの上級管理職への昇進する可能性も高まります。
・ITコーディネータ試験
「ITコーディネータ試験」は、ITや経営に関する幅広い知見を証明できる資格です。プロジェクト推進スキルをアピールできる資格ではありませんが、経営戦略や業務改革などの経営的なスキルとIT戦略やIT利活用といったITスキルのアピールにつながります。
高度なIT投資の計画や実行に関わる機会も増えるでしょう。将来的にITコンサルタントを目指しているという人にもおすすめの資格です。
プロジェクトマネージャーに向いている人
プロジェクトマネージャーには、下記のようなタイプの人が向いています。
- コミュニケーションスキルが高い人
- 問題解決能力がある人
- リーダーシップがある人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・コミュニケーションスキルが高い人
プロジェクトマネージャーは、チームメンバーやステークホルダーなど、多くの関係者と円滑なコミュニケーションを図る必要があります。
優れたコミュニケーションスキルがある人なら、技術的な話題もビジネス上のメリットに変換して、異なる背景を持つ人にも理解しやすく説明できるでしょう。また、コミュニケーションスキルが高ければ、プロジェクトの概要を明確に伝えることができ、プロジェクトの透明性を保つのにも役立ちます。
コミュニケーションスキルが高い人はチームの協力も得やすく、プロジェクトの目標を的確伝えて関係者全員の理解と支持も得られます。相手の意見や懸念を正確に理解することもできるでしょう。
・問題解決能力がある人
問題解決能力もプロジェクトマネージャーに必要なスキルです。プロジェクトマネージャーは、クライアントの課題をヒアリングして原因や必要な施策を明確にしなければいけません。
プロジェクトの進行中には予期せぬ問題や障害も発生します。このような問題に対して迅速に対応できる技術的な問題解決能力があれば、プロジェクトマネージャーとしても活躍できるでしょう。
リスク管理能力も問題解決能力の1つと言えます。潜在的な問題を事前に予測して対策を講じる能力は、プロジェクトを成功に導くためにも重要です。
・リーダーシップがある人
リーダーシップがある人は、チームを正しい方向導き、プロジェクトの目標達成に向けて全員を動かす力を持っています。また、プロジェクトの目的や重要性を理解させ、それぞれがどのように貢献できるかを明確できます。
プロジェクトを成功に導くには、チーム全体にモチベーションを向上させるチームビルディングと明確な意思決定が不可欠です。予期せぬ問題や障害が発生した際にも落ち着いて対応でき、チームを正しい方向に導けるでしょう。
プロジェクトマネージャーのキャリアパス

プロジェクトマネージャーのキャリアパスは下記のように多様です。
- PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)
- ITコンサルタント
- CIO(Chief Information Officer)
それぞれ詳しく解説します。
・PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)
PMOとは、組織全体のプロジェクトマネジメントを統括してサポートを行う部門や組織のことです。PMOの業務には、プロジェクトの品質管理や進捗管理、プロジェクトマネージャーのサポート、プロジェクト間の調整などが含まれます。PMOは、プロジェクトマネージャーのもとで、各業務を割り当てられて担当することもあります。
ステップアップとしてPMOを目指す場合は、PMO専門の企業に転職してプロジェクトマネージャーの知識や経験を活かしていくことも1つの選択肢と言えるでしょう。
・ITコンサルタント
ITコンサルタントは、クライアント企業のIT戦略立案や大規模なITプロジェクトの計画・実行を支援する専門家です。プロジェクトマネージャーとしての経験は、ITプロジェクトを成功に導くための実践的な知識として活かせます。
クライアントとのコミュニケーション、複雑な問題の分析・解決、プレゼンテーションスキルといったプロジェクトマネージャーでの経験もITコンサルタントとして成功に役立つでしょう。
・CIO(Chief Information Officer)
CIO(最高情報責任者)は、組織のIT戦略を統括する経営幹部です。組織のIT戦略の策定と実行、ITインフラストラクチャーの管理、情報セキュリティの確保、新技術の評価と導入などを行います。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しながらITを活用して市場での競争力を高めるのも重要な仕事です。
プロジェクトの管理経験、ステークホルダーとのコミュニケーションスキル、リスク管理スキルなどはCIOの職務にも直接活かせます。
なお、CIOを目指す場合は、プロジェクトマネジメントスキルに加えてビジネス戦略、財務管理などのスキルを磨く必要があります。新しい技術がビジネスにもたらす可能性にも常に意識しておきたいところです。
プロジェクトマネージャーの将来性
デジタル化が進む現代社会において、複雑なプロジェクトを適切に管理しながら成功に導く能力は、多くの企業で重要視されています。多くの業界でプロジェクトベースの業務形態が一般的になっているため、プロジェクトマネージャーの需要は今後も増えていくでしょう。
プロジェクトマネージャーの役割は、単なる進捗管理やスケジュール調整にとどまらず、戦略的な意思決定や組織変革の推進者としての側面も強くなります。そのため、ビジネス戦略を理解し、組織の目標達成に貢献できるプロジェクトマネージャーは特に高い評価を得られるでしょう。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進も、プロジェクトマネージャーの将来性を高める要因です。多くの企業がDX化を進める中で、従来のビジネスモデルや業務プロセスを変革するプロジェクトも増加しています。
プロジェクトマネージャーとして成功し、将来的にも活躍するためには、継続的な学習が大切です。技術の進化やビジネス環境の変化に常に適応し、新しいスキルと知識を習得し続ける必要があります。
AIによる業務と役割の変化も理解しておきましょう。今後はAIによる代替が難しい対人的な業務に重点が置かれる可能性が高いです。AIリテラシーの向上は不可欠になるでしょう。自己成長の一環として考えながら積極的に学習したいところです。
まとめ

プロジェクトマネージャーの年収は約684万円と高めですが、プロジェクトマネージャーとして成功するには技術的な知識だけでなく、リーダーシップやコミュニケーション能力、柔軟な問題解決能力が欠かせません。
プロジェクトの円滑な進行には、チーム全体のバランスを見極め、クライアントや上層部との連携をスムーズに行う必要もあります。変化の激しい環境で常に最新の知識やスキルを学び続ける姿勢も求められるでしょう。