社内SEの仕事内容
社内SEは企業内でシステムの設計や開発、運用・保守を担当する職種です。仕事内容の全体像は、以下の通りです。
- システムの企画・導入
- システムの設計・開発
- システムの運用・保守
- ヘルプデスク業務
それぞれ詳しく解説します。
・システムの企画・導入
システムの企画と導入は社内SEの基本的な仕事です。自社の業務の流れや問題点を詳しく調査したうえで、課題を解決するためのシステムを提案します。たとえば、紙ベースの作業を電子化したり、複数のシステムを統合したりして業務の無駄を省きます。企画する際は、業務をシステム化する目的の明確化や、予算やスケジュールの緻密な計算が必要です。
・システムの設計・開発
ニーズに適したシステムの設計・開発も社内SEの仕事です。基本的にはシステムの設計から開発、テストなどの全ての工程を社内SEが一貫して行いますが、専門性の高い技術が求められる場合は外部のベンダーと協力することもあります。外部に依頼する際には、コストの調整やスケジュール管理を社内SEが担当します。
・システムの運用・保守
社内SEはシステム開発後の運用・保守も行わなければなりません。日常的なシステムの運用に加え、不具合が見つかった場合のトラブルシューティングやセキュリティ対策を行います。さらに、システムやソフトウェアのライフサイクル管理、バージョン管理、改善提案なども必要です。システムの安定した運用には、開発後のこれらの業務が欠かせません。
・ヘルプデスク業務
システムの利用者である他の社員をサポートする仕事です。「システムにログインできない」「操作方法が分からない」などの導入したシステムに関する問い合わせの他に、「パソコンの動作が遅くなった」「メールが送れない」などのIT関連の問い合わせにも対応します。
よくある質問や問題についてはマニュアルを作成したり、社内向けの研修を実施したりすることもあります。
社内SEの平均年収
「求人ボックス 給料ナビ」によると、社内SEの平均年収は約447万円です。月給換算では約37万円、初任給は22万円前後が相場になります。一般的な会社員と同程度であり、エンジニアに比べると年収水準は低めです。
社内SE | 一般的なエンジニア | 一般的な会社員 | |
平均年収 | 約447万円 | 約586万円 | 約458万円 |
引用:「求人ボックス 給料ナビ」、「賃金構造基本統計調査 表番号7」「民間給与実態統計調査」
社内SEは、業務によってはエンジニアリングスキルが求められますが、そのような業務の割合が少なかったり、要求されなかったりすることがあるため、平均年収が低く見積もられている傾向にあります。また、社内SEは需要が高い一方、他のエンジニア職と比べると人手が足りている点も収入の差につながっていると考えられるでしょう。
なお、社内SEの年齢別の平均年収は下表のとおりです。
年代 | 平均年収 |
20~24歳 | 約344万円 |
25~29歳 | 約414万円 |
30~39歳 | 約515万円 |
40~歳 | 約624万円 |
引用:「転職会議」
年収は経験年数やスキルに比例して増加しますが、30代から40代で最も大きな成長が見られます。
30代は管理職やリーダー職への昇格が年収の伸びに直結していると考えられるため、スキルアップとリーダーシップ能力の向上が年収アップの大きなポイントになるでしょう。
社内SEが勝ち組と言われる理由

社内SEは「勝ち組」や「楽すぎ」と言われることもあります。このような評判があるのは、主に下記のような理由です。
- 自身のペースで業務を進行できる
- 上流工程のスキルと経験を積める
- やりがいを感じやすい
それぞれ詳しく解説します。
・自身のペースで業務を進行できる
社内SEは、SESや受託と比べて、業務の優先順位を調整しやすいケースが多いです。精神的にも比較的安定できる職種と言えるでしょう。社内での調整を行う必要はありますが、クライアントを相手にする場合よりはストレス度合いが低いと考えられます。
・上流工程のスキルと経験を積める
社内SEは、企画や要件定義といった上流工程に携わる機会が多いため、幅広い経験とスキルを積むことができます。
このような経験は、ビジネス感覚や交渉力、プレゼンテーション能力などの向上にもつながるでしょう。キャリアアップの際にも大きな強みとなり、将来的には上位職である情報システム部門の管理職や、ITコンサルタントといった高収入の職業へのステップアップも期待できます。
・やりがいを感じやすい
社内SEは会社の業務効率化や問題解決に直接関わるため、仕事の成果が目に見えやすく、やりがいを感じやすくなります。
ヘルプデスク業務では、困っている社員の問題を解決して感謝される喜びも得られやすいでしょう。日々の達成感は仕事の意欲を高め、モチベーションの維持にもつながります。
継続的に新しい知識とスキルを習得する必要はありますが、それを企業内で活用できれば自身の成長を実感できる仕事です。
社内SEに必要なスキル
社内SEには、主に下記のようなスキルが求められます。
- プロジェクトマネジメントスキル
- コミュニケーションスキル
- 問題を把握して解決するスキル
なお、業務内容によっては、上記に加えてフロントエンドやバックエンド、インフラなどの分野で専門性の高いエンジニアリングスキルが必要になる場合もあります。今回は基本スキルセットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
・プロジェクトマネジメントスキル
プロジェクトマネジメントスキルは、複雑なシステム開発やプロジェクトを成功に導くために必要です。
プロジェクトの目標を設定・計画するだけではなく、進捗状況を常に把握しながら必要に応じて調整するスキルも求められます。予期せぬ問題が発生した場合には、迅速に対応策を考えて実行に移さなければいけません。外部のベンダーに依頼した場合は、社内で完結する場合よりマネジメントスキルが求められます。ベンダーの進捗をこまめに確認し、プロジェクト関係者との情報共有と協力体制の維持も重要です。
・コミュニケーションスキル
社内SEは関係社員や経営層、外注先のベンダー企業など、多くの人とコミュニケーションをとる必要があります。コミュニケーションスキルは、技術的な知識を持たない関係者との円滑なやり取りのために大切です。経営陣や各部門の責任者との対話では、課題やコストを正確に理解したうえで、それに応えるシステムを提案する必要があります。
新しいシステムの利点を非技術者にも理解してもらえるよう、具体的な例を用いて説明するスキルも重要になるでしょう。開発チームとの連携では、誰がどこまでやるか、責任の範囲などを明確に伝える能力が必要になります。
・問題を把握して解決するスキル
依頼された施策をただ実行するのではなく、「施策を実行した結果、どのような効果を得たいのか、そのための方策は本当に適切か、関連する課題が無いか」などを把握して解決するのも重要なスキルです。表面的な問題だけでなく、根本的な原因を突き止める分析力も求められます。
社内SEが年収を上げる方法
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社内SEが年収を上げるには、下記のような方法があります。
- 資格を取得する
- スキルを磨いて実績を積む
- 大手企業に転職する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・資格を取得する
資格を取得して自身のスキルレベルを客観的にアピールする方法がまず挙げられます。たとえば、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験は、国家試験であり社内SEとしての総合的な能力を示す資格として役立ちます。資格手当が付く企業もあるため、資格の取得は年収アップに直結しやすい方法と言えるでしょう。
・スキルを磨いて実績を積む
継続的にスキルを磨き、実績を積み重ねることも大切です。例えばエンジニアリングスキルがあれば、さまざまなベンダーとのプロジェクトをより円滑に進めることができるでしょう。
プロジェクトマネジメントやコミュニケーションといったソフトスキルの向上も重要です。プロジェクトを通して人脈を形成することも、自身のキャリアにとって重要な資産となります。
・大手企業に転職する
大手企業への転職も1つの方法です。一般的に、大手企業は中小企業と比べて200~300万円ほど年収が高くなる傾向にあります。福利厚生が充実しているのも魅力です。大規模なプロジェクトに携わる機会が多いため、キャリアアップにもつながります。
ただし、大手企業への転職は難しいと考えたほうがいいでしょう。競争も激しく、求められるスキルと経験のレベルも高めです。
大手企業への転職を視野に入れる場合は、現在の職場でのスキルアップと実績作りを怠らないようにしましょう。年収だけでなく、仕事のやりがいと職場環境も考慮したうえで総合的に転職を判断することも大切です。
社内SEの年収アップに役立つ資格
社内SEに必須の資格はありませんが、下記のような資格を保有していると年収アップに役立つ可能性があります。
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- システムアーキテクト試験
- 情報セキュリティマネジメント試験
それぞれの資格について詳しく解説します。
・基本情報技術者試験
「基本情報技術者試験」は、ITに関する基礎知識と技術力を示せる資格です。基礎レベルの資格であるため年収アップに大きく影響する可能性は低いですが、社内SEを目指すなら取得しておきたい資格の1つと言えます。
全体の合格率は45%程度です。簡単にとれる資格ではありませんが、社内SEとして初めて合格を目指す試験としておすすめです。
・応用情報技術者試験
「応用情報技術者試験」は、ITに関する高度な応用知識とスキルが問われる資格です。情報処理技術者試験の1つで、基本情報技術者試験の上位に位置します。
合格するのに必要な技術水準は、設計・開発・運用・保守・プロジェクト進行などの実務を問題なく遂行できるレベルです。
資格を取得すれば応用的な知識や技能を評価だけではなく、IT技術者として指導するスキルをアピールすることも可能です。中堅社員やリーダークラスに昇格するためのステップにも役立つでしょう。
・システムアーキテクト試験
「システムアーキテクト試験」は、情報処理技術者試験の区分のうち「高度試験」に分類される国家試験です。合格率は毎年15%前後と低めですが、資格を取得すれば専門性の高さをアピールできます。
企業の経営戦略を正確に理解し、戦略を成功させるためにどのようなシステムの開発が必要かを考え、実際に開発を主導していくために必要なスキルが求められます。
システムの設計や構築の責任者として働く機会にもつながるでしょう。組織内での地位向上と年収アップに役立つ可能性もあります。シニアエンジニアやアーキテクトとしてのキャリアパスも開けるでしょう。
・情報セキュリティマネジメント試験
「情報セキュリティマネジメント試験」は、情報セキュリティの確保に必要なスキルを証明できる国家試験です。ITの高度化やインターネットの普及により情報セキュリティの重要性が増している近年では、情報セキュリティに関する専門知識を持つ社内SEは高く評価されます。
セキュリティ担当として責任ある高年収のポジションに就ける可能性もあるでしょう。情報セキュリティの知見がある人材の需要は今後も高くなると予想されるため、中長期的なキャリアを見据えて資格を取得してみるのも選択肢の1つです。
社内SEに向いている人
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社内SEには下記のようなタイプの人が向いています。
- 複数の業務にも柔軟に対応できる人
- ワークライフバランスを重視する人
- 企業の経営や事業に関心がある人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・複数の業務にも柔軟に対応できる人
社内SEの業務はシステムの導入・運用・保守だけでなく、ユーザーサポート、トラブルシューティング、セキュリティ対策、ネットワーク管理、プロジェクトマネジメントなど多岐にわたります。
複数の業務を並行して処理する能力が求められるため、日々の業務に柔軟に対応できる人は大きな強みを発揮するでしょう。
・ワークライフバランスを重視する人
社内SEは自社で使用するシステムの開発がメイン業務のため、他社からの依頼を受けて開発業務を行う受託企業やSIer企業より、融通が利きやすいのが特徴です。
業務量によっては、自身でスケジュールを調整し定時の勤務時間内で仕事を完結させることもできるでしょう。深夜までの残業や休日出勤が常態化することは多くありません。ただし、大規模なシステム更新やトラブル対応などが発生する場合は長時間労働になるケースもあります。企業によって仕事量に差はありますが、基本的には規則正しい生活リズムを保ちやすい職種です。
家族との時間を大切にしたい人や、仕事以外の趣味や学びの時間を確保したい人にとっては魅力的な選択肢になるでしょう。
・企業の経営や事業に関心がある人
社内SEは企業の経営や事業に深く関わる立場にある職業です。技術者としてだけでなくビジネスの視点を持って仕事に取り組む必要があります。そのため、技術と経営の両方に興味がある人や、IT を通じて企業の成長に貢献したいと考えている人にとっては、やりがいのある仕事になるでしょう。
経営や事業の効率化に関心がある人なら、ITシステムを活用した業務の効率化や新規事業の推進などにも興味を持って取り組めるはずです。
また、経営や事業への関心は、IT投資が事業にどのように貢献するか、コスト削減の可能性はどこにあるかといったコスト意識にもつながります。企業にとって価値のある存在になりやすいでしょう。
社内SEのキャリアパス
社内SEのキャリアパスは下記のように多様です。
- 他の企業に転職する
- プロジェクトマネージャーに転職する
- SREエンジニアに転職する
- ITコンサルタントに転職する
それぞれ詳しく解説します。
・他の企業に転職する
他企業への転職は一般的なキャリアパスです。転職を考える際には、自身のスキルや経験が次の職場でどのように活かせるかを十分に検討しましょう。たとえば、製造業の社内SEとして在庫管理システムの構築に携わった経験は、小売業や物流業の企業で活用できる可能性があります。
なお、システム部門が数十名体制の組織である中堅企業以上の場合では、細かく担当が振り分けられ、特定分野の専門的なスキルを求められるケースが多いです。専門家としてスキルアップしたい場合には向いていますが、スキルが狭くなるのを避けたい人は少人数体制の企業に転職するなど、転職先の規模も十分に検討しましょう。
・プロジェクトマネージャーに転職する
インフラや開発などのITインフラ全般の技術スキルがある人は、マネージャースキルを習得すればプロジェクトマネージャーへの転職が可能です。
そもそも、社内SEとしての経験はプロジェクトマネージャーに求められる多くのスキルと密接に関連しています。プロジェクトや成果物の管理、クライアントとの交渉といったスキルがあれば即戦力として評価される可能性も高いでしょう。
技術面と業務管理面の両方を理解している強みもあります。大きな視点でプロジェクトに関わりたいという人にはおすすめのキャリアパスです。
・SREエンジニアに転職する
開発とインフラの知見があれば、SRE(Site Reliability Engineering)エンジニアも目指せます。SREエンジニアは比較的新しい職種で、システムの信頼性や可用性、効率性などの確保が主な仕事です。
SREエンジニアへ転職すれば、最新のクラウド技術や自動化技術に触れる機会が増え、技術的な挑戦も多くなります。SREの需要は高まっているため、キャリアの可能性も広がるでしょう。
なお、SREエンジニアへ転職するためには、Webサービスの開発・運用経験、クラウドサーバーの構築・運用経験、ネットワーク・IP・データベースの知識などが必要です。
・ITコンサルタントに転職する
ITコンサルタントは、IT戦略・計画の立案支援やシステムの企画、改革支援などを行う仕事です。社内SEとしてさまざまなシステムの企画・導入・運用に携わった経験は、ITコンサルタントとして活動する際にも役立つでしょう。
IT トレンドと最新技術に関する深い知識は求められますが、クライアントの経営層と直接やり取りする機会も増えるため、ビジネス視点の思考力も養えるようになります。
社内SEの将来性
現代では企業のさまざまな業務でIT化が進んでいるため、社内SEの需要は今後も高まり続けると考えていいでしょう。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に伴い、社内SEの役割も重要視されつつあります。従来の業務プロセスをデジタル化して効率化を図るためには、社内SEの知識と経験が欠かせません。
コロナ禍以降、リモートワークやハイブリッドワークの導入が進み、分散した労働環境におけるITサポートも重要になっています。社内SEはリモート環境に対応したシステムやツールの導入、遠隔サポート、セキュリティ対策を担当できるため、従業員がどこからでも快適に仕事を進められる環境を整える役割も果たせます。今後もハイブリッドワークは続くと予想されるため、社内SEの役割はさらに重要性を増すでしょう。
今後はITとビジネスの連携がさらに強化され、社内SEがビジネス戦略に対して大きく関わるような役割も求められるでしょう。将来的にも社内SEとして活躍したいのであれば、技術的なスキルだけでなく、ビジネス視点での考え方やコミュニケーション能力なども磨き続ける必要があります。
まとめ

社内SEの平均年収は約447万円です。年齢や企業の規模などによっても異なりますが、キャリアアップを図れば高年収を狙うことも可能です。
高年収を実現するためには、技術的なスキルだけではなく、企業の中での立ち位置やキャリア戦略をしっかりと決めて身につけていくべきスキルを明確にしておきましょう。最新の技術トレンドを常に学びながら、自身の市場価値を高めていくことも年収アップのポイントになります。