インフラエンジニアの平均年収
まずは、インフラエンジニアの雇用形態別・年代別の平均年収から見ていきましょう。
雇用形態別インフラエンジニアの平均年収
インフラエンジニアの雇用形態別平均年収は下表のとおりです。
雇用形態 | 平均年収 |
正社員 | 約496万円 |
フリーランス | 約768万円 |
引用:「2021年2月時点におけるレバテックフリーランスでの公開案件をもとにした年収データ」
正社員インフラエンジニアの平均年収は約496万円です。月給換算では約41万円になります。初任給は21万円程度が相場です。勤務先や経験・求められるスキルに応じて、給与幅は348~921万円までとかなりの差があります。
年代別インフラエンジニアの平均年収
インフラエンジニアと一般的なエンジニア、一般的な会社員の年代別平均年収を比較してみましょう。
年代 | インフラエンジニア | 一般的なエンジニア | 一般的な会社員 |
20~24 | 376万円 | 324万円 | 273万円 |
25~29 | 514万円 | 440万円 | 389万円 |
30~34 | 647万円 | 541万円 | 425万円 |
35~39 | 730万円 | 620万円 | 462万円 |
40~44 | 738万円 | 649万円 | 491万円 |
45~49 | 759万円 | 701万円 | 521万円 |
50~54 | 735万円 | 709万円 | 537万円 |
55~59 | 690万円 | 710万円 | 546万円 |
引用:「jobtag ソフトウェア開発(パッケージソフト)」、「賃金構造基本統計調査 表番号7」「民間給与実態統計調査」
インフラエンジニアの平均年収は年齢とスキルの向上に伴い増加していますが、40代後半でピークを迎えた後、徐々に減少している傾向が見て取れます。
40代から50代にかけては、管理職やリーダーのポジションに就くケースも多くなりますが、組織全体の昇進や昇給の機会が減少することもあります。そのため、年齢によっては一般的なエンジニアの平均年収に追い越されることもあります。それでも、一般的な会社員よりは高い収入水準を保っていると言えるでしょう。
インフラエンジニア年収が高い理由
インフラエンジニアは、重要なITインフラの設計、構築、および管理を担当するため、その専門知識とスキルに見合った高い報酬が支払われます。ソフトウェアだけでなく、ハードウェアにも詳しくなければいけません。多岐にわたる技術と知識を持つ人材は希少なので、年収も高い水準にあります。
また、需要の多さも年収が高くなる理由の1つでしょう。近年では多くの企業がITを活用しています。ネットワークやサーバーの障害・停止は企業の業務継続に重大な影響を与えるため、このような問題に対応できるインフラエンジニアの需要が高まっています。その結果、重要性に見合った高い年収が支払われます。
インフラエンジニアに必要な知識
インフラエンジニアに必要な知識は、下記のとおりです。
- サーバーの知識
- ネットワーク関連のスキル
- クラウドに関する知見
- セキュリティに関する知見
サーバーエンジニア、ネットワークエンジニア、セキュリティエンジニアに必要な知識が網羅的に求められるインフラ領域の「ゼネラリスト」であることが分かります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
・サーバーの知識
インフラエンジニアには、サーバーに関する基本的な知識から高度な管理スキルまで幅広い知識が求められます。サーバーの性能を理解して適切に設定できなければ、システム全体のパフォーマンスは向上しません。問題を迅速に診断して解決するためにも、サーバーの知識は不可欠です。また、インフラエンジニアにはOSレベルで発生する問題への対応能力も求められます。特に近年では、Linux、Windows、Unixといった主流OSの知識が必須です。これらのOSはそれぞれ異なる特性とユースケースを持っているため、多様なスキルセットを持つことで、さまざまな環境に柔軟に対応できるようになります。
・ネットワーク関連のスキル
効率的で安全なネットワークを設計・設定する能力は、インフラエンジニアの基本的なスキルです。また、ネットワークのセキュリティに関する知見や障害・パフォーマンスの問題を迅速に診断して解決するスキルも求められます。
ネットワークの技術は常に進化しているため、新しいプロトコルと技術の情報収集を欠かさず、十分な見識を維持し続ける必要があります。
・クラウドに関する知見
クラウドは現代のITインフラにおいて不可欠な要素です。そのため、インフラエンジニアは、AWS、Azure、Google Cloud Platformといった主要クラウドサービスに精通している必要があります。
最近では多くの企業がオンプレミスとクラウドを組み合わせた「ハイブリッドインフラ」を採用しているため、クラウドとオンプレミスのリソースを統合して、一元管理を行う能力も求められます。
・セキュリティに関する知見
インフラエンジニアは、セキュリティに関する幅広い知識を持ち、システム保護のための対策を実施できなければいけません。
具体的には、ファイアウォールの設定、侵入検知システム(IDS)や侵入防止システム(IPS)の導入、定期的なセキュリティパッチの適用などを行う必要があります。また、セキュリティインシデントが発生した場合に、迅速・効果的に対応する能力も欠かせません。
さらに、企業全体のセキュリティポリシーを策定し、それに基づいてシステムを設計・運用する能力も求められることがあります。
インフラエンジニアが年収を上げる方法
インフラエンジニアが年収を上げる方法は、下記のとおりです。
- マネージャーを目指す
- 特定分野のスキルを磨く
- フリーランスとして独立する
これらの方法はそれぞれメリット・デメリットがあるので、個人の価値観や目標に合わせて最適な方法を選ぶことが肝心です。詳しく見ていきましょう。
・マネージャーを目指す
マネージャーには、チームのパフォーマンス向上や人材育成といった広範な責任が求められます。技術的な専門性だけではなく、コミュニケーション能力や課題解決力、戦略的思考力などが必要になります。また、経営層との調整役としての役割を期待されることもあります。
マネージャーになるための基本的な流れは、下記のとおりです。
- インフラエンジニアとして実務経験を積む
- 優れた成果をあげる
- マネジメントスキルを身につける
- 上司や人事部門に対してマネージャーへの志望を明確に示す
- 内部昇進の機会を狙う
決して簡単ではありませんが、着実に実績を積み重ね、貢献度を示すことで、マネジメント職に就くチャンスが訪れるでしょう。
・特定分野のスキルを磨く
特定分野で高度な専門知識を身につけることで、市場価値が高まり、年収アップにつながる可能性があります。具体的な例としては、クラウドインフラ、コンテナ技術、DevOps、セキュリティといった分野が挙げられるでしょう。
特定分野の専門家になるためには、継続的な学習と実践が不可欠です。書籍、オンラインスクール、カンファレンスなどを通じて知識を深め、実際のプロジェクトで実務経験を積んでいきましょう。資格を取得してスキルを証明するのも、有効な方法の1つです。
・フリーランスとして独立する
フリーランスとして独立すると、年収アップの機会が広がります。自身のスキルと経験を活かして、プロジェクト単位で報酬を得られるのはフリーランスの大きなメリットです。収入の上限もなく、優れた成果を上げれば年収1,000万円超えも狙えます。
ただし、案件の獲得、顧客との関係構築、税務処理などに手間がかかる点には注意が必要です。フリーランスには専門スキルと経験だけでなく、ビジネスマインドや起業家としての意識も求められます。
インフラエンジニアの年収アップに役立つ資格

インフラエンジニアになるための必須資格はありませんが、下記のような資格を保有していると年収アップに役立つ可能性があります。
- AWS(Amazon Web Services)認定
- LinuC
- LPIC
- CISSP
それぞれ詳しく解説します。
・AWS(Amazon Web Services)認定
「AWS(Amazon Web Services)認定」は、クラウドサービスの中でも人気の高いAWSに関する知識を証明できる認定資格です。
認定基準は4種類に分かれており、それぞれに認定があります(ベータ版は除く)
レベル | 認定 |
FOUNDATIONAL | Cloud Practitioner(CLF) |
ASSOCIATE | SysOps Administrator(SOA) |
Developer(DVA) | |
Solutions Architect(SAP) | |
Data Engineer(DEA) | |
PROFESSIONAL | Solutions Architect(SAA) |
DevOps Engineer(DOP) | |
SPECIALTY | Advanced Networking(ANS) |
Machine Learning(MLS) | |
Security(SCS) |
AWSを採用している企業は多いので、資格を保有しておけばキャリアアップにつながるでしょう。
・LinuC
「LinuC」は、Linuxシステムの構築から運用管理に必要なスキルを証明できる技術者認定です。多くの企業がLinuxを採用しているため、LinuCの資格を持っていると幅広い求人に応募でき、キャリアの選択肢も広がります。また、昇進や給与アップの機会も増えるでしょう。
資格の取得を目指す過程で、体系的にLinuxの知識を学べるのもメリットです。実務で必要となるスキルを確実に習得できます。
LinuCは、フリーランスで働く場合やプロジェクト単位の仕事をする際にも役立つので、将来のキャリアプランを視野に入れながら取得を検討してみましょう。
・LPIC
「LPIC(Linux Professional Institute Certification)」は、Linuxに関する知識と技術を証明するための人気のある資格です。この資格には初級から上級までの3つのレベル(LPIC-1、LPIC-2、LPIC-3)があり、世界中で認められています。企業からも高く評価されるため、就職や昇進において大いに役立ちます。
・CISSP
「CISSP」は、情報セキュリティの国際的な認証資格です。CISSPの取得を通じて情報セキュリティの広い知識を体系的に学べます。
ネットワークやシステムの設計・構築・運用を担当するインフラエンジニアにとって、セキュリティの知識は非常に重要です。なお、CISSPは世界的に認知されている資格なので、資格の保持者はグローバルで認められるセキュリティ人材になれます。
ただし、資格の取得には、基本的に5年以上の実務経験が必要です。取得を検討している人は、計画的に学習を続けながら実務経験を積み重ねていきましょう。
インフラエンジニアの将来性
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、企業は競争力を維持・向上するためにITインフラの強化を図っています。
ここではコロナ禍の求人状況を見てみたいと思います。日経クロステックの2021年2月の調査によると、インフラエンジニアをはじめとした正社員エンジニアのコロナ禍2020年の求人件数は、緊急事態宣言後の4月から減少したものの同年12月にはコロナ禍以前の水準に戻っています。サービスの基幹となるインフラを止めることはサービス提供をストップすることを意味しますので、将来的にインフラエンジニアの需要が減少することは考えにくいことです。

また、場所に捉われずグローバルな職場環境で働くチャンスも広がり、国際的なプロジェクトに参加したり、海外の企業で働いたりする機会も増えています。これにより、インフラエンジニアの将来性は明るいと考えていいでしょう。
これからインフラエンジニアを目指す人は、学習を続けてチャレンジしてみることを強くおすすめします。
インフラエンジニアのキャリアパス

インフラエンジニアのキャリアパスは、技術の進化や業界のニーズに応じてさまざまな方向に広がっています。専門知識とスキルを磨けば、より高度な役割へのステップアップが可能です。代表的なキャリアパスとしては下記が考えられます。
- クラウドエンジニア
- DevOpsエンジニア
- ITアーキテクト/システムアーキテクト
- プロジェクトリーダー(PL)/プロジェクトマネージャー(PM)
それぞれ詳しく解説します。
・クラウドエンジニア
クラウドエンジニアは、クラウド環境におけるサーバー、ネットワーク、ストレージなどの設計・構築をする専門家です。クラウドの普及に伴い、その役割の重要性が高まっています。
クラウドエンジニアには、クラウドサービスに関する深い知識とネットワーク、セキュリティ、ストレージに関する専門知識が求められます。AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformといった主要クラウドプラットフォームに精通することはもちろん、スクリプト言語やインフラ自動化ツールのスキルも必要です。
・DevOpsエンジニア
DevOpsエンジニアは、ソフトウェア開発と運用のプロセスを統合し、効率化する役割を担います。また、継続的インテグレーションと継続的デリバリー(CI/CD)を実践することで、コードが頻繁にリリースされる環境を作り、新しいコードを追加するたびにテストやデプロイのプロセスが自動化される仕組みも整えます。
簡単に述べると、DevOpsエンジニアは「開発と運用を連携させてシステム全体を最適な状態に維持する専門家」です。
そもそも「DevOps」という用語は「Development(開発)」と「Operations(運用)」を合わせた造語で、従来分断されていた開発と運用を同一のプロセスとして扱う考え方を指します。
DevOpsエンジニアには、ソフトウェア開発の生産性を高め、リリースリスクを低減するためのスキルが求められます。そのため、平均年収も500万円~900万円と高く、スキルを磨けば年収1,000万円以上も目指せます。
・ITアーキテクト/システムアーキテクト
ITアーキテクトやシステムアーキテクトの役割は、ITシステム全体の設計と構築を行うことです。クライアントのニーズを踏まえたうえで、システムを設計するスキルが求められます。「システムの設計図を描く専門家」と考えれば、わかりやすいでしょう。
設計したアーキテクチャが実際に実装可能かどうかを検証するだけではなく、実装後もその適切性をモニタリングし、必要に応じて調整や改善を行います。
上流から下流まで全てのフェーズをマネジメントするため、クライアントや開発チームとの効率的なコミュニケーションスキルも求められます。大規模なシステムを成功に導くために欠かせない重要な役割を担っています。
・プロジェクトリーダー(PL)/プロジェクトマネージャー(PM)
プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーは、プロジェクトの計画、実行、監督を行い、組織のビジネス目標に合致するようにIT戦略を策定します。
予算管理やチームの指導・育成、ベンダーとの交渉も重要な職務です。そのため、広範なIT知識と管理スキル、リーダーシップ能力、優れたコミュニケーションスキルが求められます。技術的な知識だけでなく、ビジネスへの理解と戦略的な視点も必要になるでしょう。
インフラエンジニアに向いている人
下記のような人であれば、インフラエンジニアに向いています。
- 責任感が強い人
- 知的好奇心が旺盛な人
- 知識をアップデートできる人
それぞれ詳しく見ていきましょう。

・責任感が強い人
システムの安定した運用は、ビジネスの継続性と生産性に直結するので、強い責任感が求められます。
システムの障害発生時には迅速な対応が求められ、復旧作業を主導しなければいけません。このような状況下でも、冷静に対処し、適切な判断を下せる責任感が不可欠です。
また、日常的なシステム監視やメンテナンスなどの業務においても、細心の注意を払って確実に業務を遂行する姿勢が求められます。
・知的好奇心が旺盛な人
IT技術は日々進化し、新しい製品やサービスが次々と登場するため、インフラエンジニアには最新技術動向に対する強い知的好奇心が求められます。
常に知的好奇心を持ち続けられる人なら、トラブル発生時にも問題の本質を捉え、柔軟な発想力を持って対処できるでしょう。
・知識をアップデートできる人
常に知識をアップデートする姿勢を持つ人は、最新の技術力を維持し、高い水準のインフラ運用を実現できます。IT技術は急速に進化している近年では、過去に習得した知識だけでは通用しない場合もあります。そのため、継続的な学習は不可欠と言えるでしょう。
また、自ら習得した知識を他のメンバーと共有し、チーム全体のスキルアップにつなげられるスキルも大切です。
まとめ

インフラエンジニアは、ITインフラの要となる重要な職種です。年収は年齢やスキルによって変動しますが、平均で650万円程度と比較的高水準にあります。今後も安定した雇用が期待でき、キャリアアップの機会も十分にあり得るでしょう。
ただし、技術的なスキルだけではなく、問題解決力やコミュニケーション力、継続的な学習意欲は不可欠です。常に新しい技術に適応していく姿勢が求められる職種と言えます。
将来性が高く、やりがいのある職種であることは間違いないので、興味がある人はぜひ挑戦してみてください。