フロントエンドエンジニアの平均年収
まずは、フロントエンドエンジニアの雇用形態別・年代別の平均年収から見ていきましょう。
雇用形態別フロントエンドエンジニアの平均年収
フロントエンドエンジニアの雇用形態別平均年収は下表のとおりです。
雇用形態 | 平均年収 |
正社員 | 約549万円 |
フリーランス | 約867万円 |
引用:「求人ボックス フロントエンドエンジニアの仕事の年収・時給・給料」、「SOKUDAN フリーランスフロントエンドエンジニアの平均年収・時給についての調査」
正社員フロントエンドエンジニアの平均年収は約549万円です。月給換算では46万円、初任給は24万円程度が相場です。ただし、勤務先や経験・求められるスキルによって、全体の年収幅は326~997万円と大きな開きがあります。
年代別フロントエンドエンジニアの平均年収
フロントエンドエンジニア・一般的なエンジニア・一般的な会社員の年代別平均年収を見てみましょう。
年代 | フロントエンドエンジニア | 一般的なエンジニア | 一般的な会社員 |
20~24 | 322万円 | 324万円 | 273万円 |
25~29 | 434万円 | 440万円 | 389万円 |
30~34 | 518万円 | 541万円 | 425万円 |
35~39 | 601万円 | 620万円 | 462万円 |
40~44 | 625万円 | 649万円 | 491万円 |
45~49 | 685万円 | 701万円 | 521万円 |
50~54 | 701万円 | 709万円 | 537万円 |
55~59 | 698万円 | 710万円 | 546万円 |
引用:「jobtag ソフトウェア開発(パッケージソフト)」、「賃金構造基本統計調査 表番号7」「民間給与実態統計調査」
フロントエンドエンジニアにはHTML、CSS、JavaScriptなどの知識が必要ですが、他分野のエンジニアには、より高度で専門的なスキルが求められるケースがあります。そのため、一般的なエンジニアに比べるとフロントエンドエンジニアの平均年収はやや低い傾向があります。
上記データでは50代後半の年収が下がっていることも分かります。フロントエンドエンジニアには、キャリアの初期段階では実装スキルが求められますが、経験を積むとともに、チームリーダーシップやプロジェクトマネジメントのスキルも求められるようになります。そのため、組織全体としての昇進や給与の増加の機会が減少する傾向も見受けられます。しかし、基本的には年代を重ねるごとに年収も増加していくと考えていいでしょう。
一般的な会社員に比べるとフロントエンドエンジニアの年収は高めです。高度な専門知識と需要の高さ、即戦力としての価値、案件単価の高さなどが年収水準を上げています。
フロントエンドエンジニア年収が高い理由

フロントエンドエンジニアの年収が高い理由は、下記の3つです。
- ユーザー体験の重要性が高まっている
- デザインスキルと技術力の両方が必要
- Webサービスの市場が拡大している
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.ユーザー体験の重要性が高まっている
近年では、多くの企業がWebサイトやアプリケーションを通じたユーザーとのコミュニケーションを重視するようになりました。
ユーザーが快適に利用できる操作性や視認性の高い画面設計は、サービスの満足度を大きく左右します。フロントエンドエンジニアは、こうしたユーザー体験を向上させる役割を担っているため、重要性も上がっており、年収の高さにつながっています。
2.デザインスキルと技術力の両方が必要
フロントエンドの開発では、機能面の技術力に加えてデザイン性の高い画面を構築するスキルも求められます。
Webデザイナーが作成したデザインをコーディングで再現したり、レスポンシブデザインを実装したりするなど、デザインスキルと技術力の両方を兼ね備えなければいけません。
このような高度な能力が評価され、フロントエンドエンジニアの年収は高い傾向があります。
3.Webサービスの市場が拡大している
インターネットの普及に伴い、日常生活にもWebサービスが深く浸透しています。ECサイトやネットバンキング、動画配信サービスなど、さまざまな分野でWebサービスが利用されるようになりました。
このような市場の拡大に伴い、フロントエンドを担うエンジニアの需要も増加し、その結果として年収も上昇しています。
フロントエンドエンジニアに必要なスキル
フロントエンドエンジニアには、下記のようなスキルが求められます。
- HTML5とCSS3
- JavaScript
- UI/UX設計
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・HTML5とCSS3
初心者は、まずHTML5とCSS3をしっかりと学び、基本的なWebページを作成できるようになるのが第一歩となります。
HTML5はWebページの構造を作るための言語で、見出し、段落、リンク、画像などを定義します。HTMLは基本中の基本なので、この知識がなければ何も始まりません。
CSS3(Cascading Style Sheets)は、HTML5で作った構造にスタイルを加えるための言語です。文字の色や大きさ、背景の色、配置などもCSS3で決めます。
・JavaScript
JavaScriptとは、ユーザーとのインタラクションが可能な双方向機能のあるWebサイト構築に欠かせない言語です。作成したWebページを動的で豊かにするためにも必要です。
主にWebブラウザ上で利用されますが、サーバーサイドやデスクトップアプリケーション開発、モバイルアプリ開発など、さまざまなプラットフォームでも利用されています。
例: 簡単なJavaScriptコード

この例では、ボタンをクリックすると「Hello, World!」というアラートが表示されます。初めて学ぶときには、簡単な例を通じて実際に動かしながら理解を深めるといいでしょう。
・UI/UX設計
ユーザーインターフェース(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)の設計に関するスキルも必要です。
UIとは、Webサイトやアプリケーションのデザイン全般を指し、レイアウトや色彩、フォントなどの要素を含みます。一方、UXとは、ユーザーがWebサイトやアプリケーションを使用する際の全体的な体験や経験を指します。
UI/UXデザインの実装は通常Webデザイナーの役割ですが、フロントエンドエンジニアにこの分野の知識や対応が求められるケースもあります。フロントエンドエンジニアは、Webデザイナーが作成したAdobe XDやFigmaなどのデザインファイルを元に、Webページやアプリケーションを機能的に再現します。この際、ユーザビリティやアクセシビリティの観点に考慮しながら、機能的なWebページの構築がフロントエンドエンジニアには求められます。
フロントエンドエンジニアが年収を上げる方法
フロントエンドエンジニアが年収を上げる方法は下記の3つです。
- CMS構築のスキルを習得する
- デザインスキルを高める
- フリーランスとして独立する
それぞれ詳しく解説します。
1.CMS構築のスキルを習得する
1つ目は、「CMS構築のスキルを習得する」方法です。Webサイトを構築する際には、コンテンツ管理システム(CMS)の知識が大変重要となります。CMSを使えばWebサイトの更新作業が簡単になり、コンテンツを効率的に管理できます。
代表的なCMSとしてはWordPressやJoomlaなどが挙げられるでしょう。近年ではHeadlessCMSにも注目が集まっています。HeadlessCMSはフロントエンドからバックエンドを分離させた形態のCMSなので、それぞれが影響されずにシステムの変更を行えます。
これらのCMS構築スキルを習得すればWebサイト構築の生産性が上がり、結果として年収アップにつながる可能性も高まるでしょう。
またBootstrapやBulma、React、Next.jsといったフレームワークやライブラリの知識も増やしておきたいところです。なお、近年では、ユーティリティファーストのCSSフレームワーク「Tailwind CSS」や、Reactベースのコンポーネントライブラリ「Chakra UI」、アプリケーション開発を効率化して魅力的な UI を構築できる「MUI (Material-UI)」などがフロントエンドの主流になっています。
2.デザインスキルを高める
2つ目は、「デザインスキルを高める」方法です。
Webサイトのデザインは通常Webデザイナーが担当しますが、企業や案件によってはデザインから実装までフロントエンドエンジニアが担当することがあります。
担当をしない場合でも、デザインスキルを高めておけば、利便性が高くデザインに優れたWebサイトの構築・開発の知見を活かせるでしょう。すると、企業からの評価も高まり、昇進や報酬の増加につながる可能性が高まります。
3.フリーランスとして独立する
フリーランスとして独立開業するのも、フロントエンドエンジニアが年収を上げる方法の1つです。
フリーランスになると複数の案件を同時に受注することができ、その結果年収を大幅に増やす機会があります。特に高単価の案件に取り組むことで、年収が1000万円を超える状況を作ることもできます。
ただし、フリーランスには高度なスキルと自己管理能力が求められます。また、税金や社会保険料の支払い、事務作業などを自身で処理しなければなりません。
フリーランスとしてキャリアを重ねることで、より高額な案件を受注できる可能性が高まりますが、独立後のリスクを理解してキャリアプランを検討しましょう。
フロントエンドエンジニアの年収アップに役立つ資格

フロントエンドエンジニアに必要な資格はありませんが、取得しておくと年収アップにつながる資格があります。
Webクリエイター関連の仕事では、本質的にスキルそのものが重要になります。資格試験は一定のスキルを客観的に証明する役割を果たしますが、資格を持っていたとしても、実際の業務で期待された能力に達していないケースが見られます。繰り返しますが、最も重要なのは実際の「スキル」であり、その証明としては資格よりも具体的な成果を示すポートフォリオが重要視される傾向があります。
- Web クリエイター能力認定試験
- Webデザイン技能検定
- HTML5 プロフェッショナル認定試験
- CIW JavaScript Specialist
- Ruby 技術者認定試験
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・Webクリエイター能力認定試験
「Webクリエイター能力認定試験」は、Web制作の技術力を評価する試験です。HTML5、CSS3、JavaScriptなどのスキルやプロジェクト管理能力を認定します。
この試験では、「スタンダード」と「エキスパート」の2つの認定基準がありますが、合算した合格率は89.92%(2022年度平均合格率)と非常に高いため、初心者向けの資格と考えていいでしょう。
試験に向けた学習では、基礎的なスキルをしっかりと習得する必要があります。そのため、未経験からフロントエンドエンジニアを目指す人におすすめの資格です。
・Webデザイン技能検定
「Webデザイン技能検定」は、Webデザインに関する知識・技能・実務能力を評価する国家資格です。認定基準は3級~1級までの3段階に分かれています。
3級は基本的な知識があれば合格できるレベルですが、2級は2年以上の実務経験、1級はさらに5~7年以上実務経験がないと受検できません。試験内容は非常に高度でシステムやセキュリティに関する問題も含まれています。
外部へのアピールとスキル向上のために有用な資格と言えます。
・HTML5プロフェッショナル認定試験
「HTML5プロフェッショナル認定試験」は、最新のマークアップ技術に関する知識と技術力を評価する試験です。
この資格は、Webデザイナー向けの資格にも思えますが、フロントエンドエンジニアにも役立ちます。HTML5は、Web開発における基盤となっており、より効率的で高品質なWebサイトやアプリケーションの開発につながるスキルです。
資格を取得することで、HTML5の知識とスキルを客観的に証明することができ、企業からの評価が高まり、キャリアの発展につながる可能性があります。
・CIW JavaScript Specialist
「CIW JavaScript Specialist」は、JavaScriptの基礎から応用まで幅広い知識を証明できる国際的な認定資格です。
CIWは世界70か国以上で認知されている国際的な資格プログラムなので、グローバルに通用する技術力を証明できます。将来的に外資系企業への転職を考えている人は取得を検討してみましょう。
・Ruby 技術者認定試験
「Ruby 技術者認定試験」は、Rubyを使ったシステム設計、開発、運用に関する高い技術力を証明できる資格です。
認定基準は基本的な技術内容が問われる「Silver」と、深く高度な知識が問われる「Gold」に分かれています。
Rubyは基本的にバックエンド側で利用される言語ですが、オブジェクト指向やアルゴリズム、データ構造などの基礎概念を学ぶ上でも役立ちます。また、Ruby on Railsを学ぶことで、MVCモデルやRESTfulなアーキテクチャについての理解、APIの設計や認証などの知見も身につけることができます。
将来的にフルスタックエンジニアを目指したいという人や、サーバーサイド開発への転向を検討している人にはおすすめの資格です。
フロントエンドエンジニアの将来性
近年では多くの企業や団体、個人がWebサイトを開設しているため、今後もフロントエンドエンジニアのニーズが減ることはないでしょう。
経済産業省による「令和4年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2021年の物販系分野でのEC化率は9.13%となり、市場規模は前年比で5.37%伸びています。

日本のEC化率は、中国や米国に比べると低く、今後の成長が見込めます。ECはあくまでも一分野ですが、Webサイトの利用が拡大する限り、フロントエンドエンジニアの需要が減ることは考えにくいと言えます。
ただし、AIの急速な発展に伴い、AIが業務の一部を代行する可能性があります。
それでも、ユーザー体験を考慮したUI/UXデザインや新しいインタラクションの設計といった創造性が求められる部分をAIで代行するのは難しいと考えられています。
業務の一部がAIに置き換わる可能性はありますが、創造的な部分は人が担う必要があり、需要そのものは一定数残ると見込まれます。
いずれにしても、これからのフロントエンドエンジニアはAIを有効活用しつつ、独自の創造性を発揮する能力が求められるでしょう。
フロントエンドエンジニアに向いている人

フロントエンドエンジニアには下記のような人が向いています。
- デザインに興味がある人
- 情報収集が得意な人
- 地道な作業が好きな人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・デザインに興味がある人
フロントエンドエンジニアは、Webサイトのユーザーインターフェース(UI)を構築する役割を担います。そのため、デザインに関心があり、視覚的な面白さや使いやすさを意識できる人が向いています。
デザインの基本原則やトレンドを理解し、ユーザー体験を重視した設計にも難なく対応できる人が活躍できる職種です。
・情報収集が得意な人
近年では、新しい技術やライブラリ、フレームワークが頻繫に登場しています。情報収集が得意な人は、人気の高いフレームワークの最新動向を常に把握し、プロジェクトに適したツールを選択・提案する能力を維持できるでしょう。
・地道な作業が好きな人
Webフロントエンドの開発には、地道な繰り返し作業が多く含まれます。デバッグやテストも基本的には地道な工程です。
このような地道な作業を嫌わず、細かい業務を丁寧にこなせる忍耐力のある人は、フロントエンドエンジニアに適した資質を持っていると言えます。
フロントエンドエンジニアのキャリアパス
フロントエンドエンジニアのキャリアパスとしては、「専門性を高める」「キャリアチェンジする」などが考えられます。詳しく見ていきましょう。
専門性を高める
専門性を高めて他のフロントエンドエンジニアと差別化を図るキャリアパスです。
差別化にはJavaScriptの深い理解が不可欠でしょう。フロントエンド開発の基礎となるJavaScriptに詳しくなれば、ReactやAngularなどのフレームワークを効果的に活用できます。
レスポンシブデザインやアニメーションの実装、アクセシビリティの考慮など、ユーザー体験を向上させるための技術を磨けば、プロフェッショナルとしての価値を高められます。
さらに、パフォーマンスの最適化やセキュリティの知識も欠かせません。Webサイトの読み込み速度やデータの安全性を確保する技術を学ぶことで、より高品質なプロダクトを提供できるようになります。
キャリアチェンジする
フロントエンドエンジニアの経験と知識を活用して他の分野に転身するのも1つの方法です。
例えば、バックエンド開発に携わりながらスキルを磨くことで、フルスタックエンジニアとしてキャリアを築くことができます。システムエンジニアやネットワークエンジニアなどのインフラ領域や、クラウドエンジニアにもキャリアパスを広げられるでしょう。
他には、モバイルアプリ開発へのキャリアチェンジも考えられます。JavaScriptベースのフレームワークであるReact Nativeのスキルがあれば、スマートフォンやタブレット向けのアプリ開発に携わることができます。
また管理側を志向し、プロダクトマネージャー(PM)を目指す道もあります。技術的なバックグラウンドを持ったPMになれば、開発チームと円滑にコミュニケーションを図りながら、課題を深く理解したうえでプロジェクトを推進できます。ただし、PMにキャリアチェンジする場合は、プロジェクトの管理やビジネス分析などのスキルや知識が必要になります。
まとめ

本記事では、フロントエンドエンジニアの雇用形態別・年齢別の年収や、年収をアップさせる方法、必要なスキルなどを紹介しました。
フロントエンドエンジニアは平均年収が高く、スキルを磨けば年収1,000万円超えも狙える魅力的な職種です。
AIの発展に伴い、AIが業務の一部を代行する機会が増えるのは確実ですが、創造性に関する部分は依然として人間でなければ対応できません。AIを有効活用しつつ、独自の想像力を発揮することで、フロントエンドエンジニアとしての市場価値を高めることができるでしょう。
また、市場価値を高めて年収UPを狙うには、資格取得によって自身の知識やスキルを証明することも重要です。フロントエンドエンジニアは、実際のスキルが何より重要です。そのため、さまざまなプロジェクトに携わり、具体的な成果を示すポートフォリオの充実を心がけてください。
本記事を参考に、自身に最もあったやり方で、フロントエンドエンジニアから高年収を目指してみてください。