Pythonが自動化におすすめな理由

さまざまなプログラミング言語がありますが、なかでもPythonは業務の自動化に適しています。Pythonが自動化におすすめな理由は、主に次の4つです。
- 自動化できる業務の幅が広い
- 人件費を削減できる
- 人為的なケアレスミスを防げる
- 従業員の仕事に対するモチベーションが向上する
ここでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
自動化できる業務の幅が広い
PythonはAI(人工知能)の開発で注目されていますが、それだけではありません。Pythonは汎用性が高いため、自動化できる業務の幅が広いといえます。データの収集や分析、業務アプリの操作、メールの送信などさまざまな業務の自動化が可能です。
Pythonの汎用性を高めているのは、多彩な「ライブラリ」です。ライブラリとは、役立つ機能のプログラムを部品化し、手軽に利用可能にしたものです。用途に合わせたPythonのライブラリを使えば、効率的にさまざまな自動化プログラムを作れます。
人件費を削減できる
業務の自動化にPythonを採用すれば、人件費の削減を図ることも可能です。Pythonは文法がシンプルなため習得しやすく、比較的少ない記述量でプログラムを作れます。そのため、自動化プログラムの実装や、その習得にかかる時間を抑えられるでしょう。
また、繰り返し発生する業務であれば、自動化プログラムの実装にある程度の時間がかかっても問題ありません。毎回手作業でこなしていた業務を自動化してしまえば、継続的に時間短縮効果が得られます。長い目で見れば人件費削減につながるでしょう。
人為的なケアレスミスを防げる
Pythonにより業務を自動化することで、人為的なケアレスミスを防げます。当然ながら、人間による手作業の部分が多いほど業務のケアレスミスは増えます。その点、自動化プログラムはコードどおりに処理を実行するため、こうしたミスは発生しません。
ただし、そもそも自動化プログラムにケアレスミスがないことが前提です。比較的少ない記述量でプログラムを作れるPythonであれば、実装時のケアレスミスも抑制できるでしょう。
従業員の仕事に対するモチベーションが向上する
Pythonにより業務を自動化することで、従業員のモチベーション向上にもつながります。繰り返し発生する業務は、往々にして単調・面倒・退屈なものです。
こうした業務を自動化すれば、従業員はストレスの元から解放されます。そして、やりがいのある業務にフォーカスできるようになるでしょう。AI開発に適したPythonを使えば、AIを軸にしたビジネスの創出も実現するかもしれません。
Pythonで自動化できる業務7選

Pythonで自動化できる業務は多岐にわたります。ここでは、そのなかでも7つの業務をピックアップして紹介します。
- Web上から情報を収集する業務
- 業務アプリを扱う業務
- データを分析する業務
- 定期的なデータのバックアップ業務
- メールを送信する業務
- ドキュメントを編集する業務
- レポートを作成する業務
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
Web上から情報を収集する業務
競合他社の調査など、Web上から情報を収集する業務をPythonで自動化できます。PythonはWebスクレイピング(Webデータの収集)が得意で、「Beautiful Soup」といった役立つライブラリが豊富です。情報収集は積極的に自動化を検討しましょう。
たとえば、Beautiful SoupではECサイトの商品ページにアクセスし、そこから価格や評価などのデータを取得することが可能です。Pythonで自動化すれば、さまざまなWebサイトに手作業でアクセスする必要がなくなり、作業者の負担軽減につながります。
業務アプリを扱う業務
さまざまな業務アプリを扱う業務をPythonで自動化可能です。Pythonには、アプリ画面の操作を自動化できる「PyAutoGUI」や、Webブラウザの操作を自動化できる「Selenium」といったライブラリがあります。
たとえば、経営データの分析にWebベースのBIツールを導入している場合、Seleniumでデータの収集作業を自動化することが可能です。具体的には「BIツールにログインして最新の経営データをアップロードする」といった自動化プログラムをPythonで組み、毎日決まった時間に自動実行させます。
データを分析する業務
データを分析する業務をPythonで自動化できます。データ分析はPythonの得意分野です。データの加工や集計ができる「pandas」や、データを可視化できる「Matplotlib」など、さまざまなライブラリがデータ分析の自動化に役立ちます。
たとえば、pandasを用いて売上ファイルから売上データを抽出・加工し、日ごとの売上額などを集計して出力。さらに、Matplotlibで集計結果をグラフ化すれば、売上額の傾向が可視化されるでしょう。このように、データ分析を格段に効率化できます。
定期的なデータのバックアップ業務
定期的なデータのバックアップ業務をPythonで自動化できます。ファイルのコピーや圧縮といった必要な処理は、Pythonの標準ライブラリでも実装が可能です。また、OSのスケジューリング機能を使えば、決まった時間にバックアップを実行できます。
たとえば、プロジェクトに関する重要なデータを「zipfile」で圧縮し、「shutil」でクラウドストレージにコピーする自動化プログラムを組みます。この自動化プログラムを毎日決まった時間に実行するように設定すれば、データの自動バックアップが可能です。
メールを送信する業務
メールを送信する業務もPythonで自動化できます。Pythonにはメールを送信する「smtplib」という標準ライブラリがあります。これを使えば、送信先情報やメール本文などを指定することで、メールの自動送信が可能です。
たとえば、チームメンバーの宛先やメール本文をsmtplibで指定すれば、チームリーダーが進捗報告依頼メールの配信を自動化できます。一般的なメールアプリでも定期配信の設定は可能ですが、Pythonであれば細かい条件による送信内容の調整も容易です。
ドキュメントを編集する業務
ExcelやWordといったドキュメントを編集する業務をPythonで自動化できます。ドキュメントの編集には、Excelファイルを操作できる「openpyxl」や、Wordファイルを操作できる「Python-docx」といったライブラリが役立ちます。
たとえばopenpyxlを用いることで、Excelの売上ファイルに日ごとの売上データを追記するといった自動化プログラムを実装できます。ExcelやWordといったドキュメントを手作業で編集せずに済み、生産性向上につながるでしょう。
レポートを作成する業務
レポートを作成する業務をPythonで自動化できます。レポート作成には、データをPDFとして出力できる「ReportLab」や、データを可視化できる「Matplotlib」といったライブラリが役立ちます。
たとえば、Excelの売上データからMatplotlibで売上推移グラフを作成し、ReportLabで週間の売上レポートを出力可能です。OSのスケジューリング機能で自動化プログラムを実行するよう設定すれば、定期的なレポート作成にも対応できます。
Pythonでの自動化に必要なスキル

Pythonでの自動化に必要なスキルは、主に次の3つです。
- プログラミングスキル
- Pythonライブラリの知識
- 問題解決能力
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
プログラミングスキル
当然ですが、Pythonのプログラミングスキルが必須です。Pythonの基礎文法を理解したうえで、目的に合わせたプログラムを書ける能力が求められます。プログラミングスキルが不足していると、正確に動作する自動化プログラムは実装できません。
また、自動化したい業務に合わせた関連言語のスキルも必要です。たとえば、Web上のデータを収集する場合は、Webページを記述する「HTML」の知識も求められるでしょう。
Pythonライブラリの知識
Pythonライブラリの知識も欠かせません。Pythonは、さまざまなライブラリを組み合わせることで幅広い自動化を実現します。少なくとも、自動化したい用途に合わせたPythonライブラリの使い方は把握している必要があります。
たとえばExcelのドキュメントを編集したい場合、openpyxlといったライブラリの知識が必要です。必要なライブラリを導入したうえで、プログラム内で適切に使えなければなりません。参考までに、代表的なPythonライブラリを下表にまとめました。
ライブラリ名 | 主な用途 |
Beautiful Soup | Webスクレイピング |
PyAutoGUI | アプリ画面の操作 |
Selenium | Webブラウザの操作 |
pandas | データの加工や集計 |
Matplotlib | グラフなどによるデータの可視化 |
zipfile(標準) | データの圧縮 |
shutil(標準) | ファイルやフォルダの操作 |
smtplib | メールの送信 |
openpyxl | Excelファイルの操作 |
Python-docx | Wordファイルの操作 |
ReportLab | PDFでのレポート生成 |
問題解決能力
Pythonによる自動化には、問題解決能力も求められます。最初から完璧な自動化プログラムを実装することは簡単ではありません。多くのケースでは、エラーが出てしまったり、想定どおりの成果物が出力されなかったりするものです。こうした問題に直面した際に、冷静に原因を特定し、適切な解決策を見つけられる能力が必要です。
また、業務の自動化にあたって社内で調整する能力も求められます。たとえば、関係者と協議して自動化プログラムの仕様を固めたり、業務に支障が出ない対応日程を相談したりする必要があるでしょう。
Pythonで業務を自動化する際の注意点
Pythonで業務を自動化する際の注意点は、主に次の3つです。
- コンプライアンス上のリスクに気を付ける
- セキュリティ上のリスクに気を付ける
- 属人化に気を付ける
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
コンプライアンス上のリスクに気を付ける
Pythonで業務を自動化する際、コンプライアンス上のリスクに気を付けましょう。業務を自動化するうえで、法律や規制に抵触しないように注意が必要です。
たとえば情報収集を自動化する際、利用規約でWebスクレイピングが禁止されているWebサイトは避ける必要があります。また、他社のWebサイトに過度な負荷をかけ、訴訟に発展したケースもあります。過度なリクエストの送信も避けましょう。
ほかにも、著作権侵害や個人情報の取り扱いなど、コンプライアンス上のリスクはさまざまです。こうしたリスクについて事前に把握し、しっかりケアしましょう。
セキュリティ上のリスクに気を付ける
Pythonで業務を自動化する場合、セキュリティ上のリスクにも気を付けましょう。自動化プログラムの実装や運用に不備があると、情報漏えいやサイバー攻撃につながるケースもあります。
たとえば、業務アプリにログインするための認証情報を自動化プログラムに直接記述するのは危険です。何らかの手違いで自動化プログラムが悪意のある第三者に渡った場合、業務アプリを不正利用される恐れがあります。
これはほんの一例であり、セキュリティ上のリスクはさまざまです。セキュリティ上のリスクについて洗い出し、実装や運用のルールに反映しましょう。
属人化に気を付ける
Pythonで業務を自動化する場合、「属人化」にも気を付けましょう。属人化とは、ある業務が特定の個人にしか務まらなくなる事象を指します。
Pythonに限らず、自動化プログラムの運用・保守は属人化しがちです。つまり、実装者しか正しい仕様や更新方法を知らないといった状況が珍しくありません。そうならないように、自動化プログラムのメンテナンス方法を文書化するといった属人化を防ぐための対策を講じましょう。
まとめ
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業務の自動化にはPythonがおすすめです。Pythonにはさまざまなライブラリがあり、情報収集やメール送信など、幅広い業務を自動化できます。Pythonは文法がシンプルなため、習得や実装のハードルが比較的低いのも嬉しいポイントです。
ただし、Pythonで業務を自動化するうえでは、コンプライアンスやセキュリティなどのリスクに気を付ける必要があります。Pythonを用いた業務の自動化を成功させたい方は、今回の内容をぜひ参考にしてください。