Honoとは

Honoとは、2022年にリリースされた新しいWeb開発向けのフレームワークです。日本人が中心となって作られた経緯もあり、日本語の「炎」から名付けられました。
Honoは、Webアプリのバックエンド(サーバー側)開発に特化しており、サーバー側の処理を効率よく実装することが可能です。ルーティング(リクエストの振り分け)やバリデーション(入力内容のチェック)など、基本的な機能をカバーしています。
Honoの大きな魅力は、高速かつ軽量な動作です。新しいフレームワークですが、その魅力からAPIサーバーの構築などに採用されるケースが増えています。
Honoの特徴
Honoの特徴は、主に次の4つです。
- 開発言語はTypeScript
- 高速かつ軽量な動作が可能
- さまざまな標準機能を使える
- 幅広い実行環境に対応している
ここでは、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
開発言語はTypeScript
Honoの開発に使われたプログラミング言語は、Webページに動きを付ける「JavaScript」をベースに作られた「TypeScript」です。つまりHonoを採用する場合、基本的にはTypeScriptを用いて開発することになります。なお、JavaScriptとの互換性もあるため、JavaScriptも利用可能です。
TypeScriptは、JavaScriptに静的型付け(データ型を明示可能)の要素をプラスしたプログラミング言語です。プログラム実行前にコンパイル(コードの変換)が必要ですが、データ型の不整合といったバグを事前に検出できるメリットがあります。ただし、TypeScriptだから確実に安全というわけではなく、適切なコーディングが大前提です。
TypeScriptやJavaScriptは、主にフロントエンド(ブラウザ側)の開発に採用されます。バックエンド側の実装にフロントエンド開発言語を使えるのは、Honoの大きな特徴の1つといえるでしょう。
高速かつ軽量な動作が可能
Honoがカバーする機能のバリエーション自体は、ほかのフレームワークと比べて特段多いわけではありません。必要な機能に厳選することで、高速かつ軽量な動作を実現しています。
Honoの最小構成では14KB程度と、一般的なフレームワークと比べてかなり軽量です。基本的なWeb機能に絞っている分、多くの機能に対して処理時間やリソースを消費せずに済むでしょう。とくに、高速なルーティングは公式サイトにも明記されています。
このように、Honoは高速かつ軽量な動作が求められるWebアプリにおすすめです。
さまざまな標準機能を使える
Honoは、さまざまな標準機能を提供しています。これらは一般的なライブラリと同じようにインポートすることで利用可能です。
たとえば、Basic認証を手軽に実装できるミドルウェア、Cookieを手軽に管理できるヘルパーなどがあります。こうした標準機能を利用することで、コーディングの記述量を削減できるのも強みです。
幅広い実行環境に対応している
Honoは、幅広い実行環境に対応しています。たとえば、バックエンド側でJavaScriptを実行できる「Node.js」、クラウド上でアプリを構築できる「Cloudflare Workers」などで実行可能です。JavaScriptに対応している多くの実行環境で動かせます。
Web標準に準拠して設計されているため、実行環境が変わっても大規模なプログラムの調整が発生しません。幅広い実行環境でHonoのプログラムを動かせるため、開発チームが想定している実行環境に対応しやすいでしょう。
HonoをWebアプリ開発に採用するメリット

HonoをWebアプリ開発に採用するメリットは、主に次の3つです。
- パフォーマンスの向上を図れる
- 開発効率の向上につながる
- 学習コストを抑えやすい
ここからは1つずつ詳しく見ていきましょう。
パフォーマンスの向上を図れる
Honoは前述のとおり、高速かつ軽量な動作が可能なフレームワークです。適切に実装すれば、Webアプリのパフォーマンス向上を図れます。
たとえば、Honoに搭載された「RegExpRouter」を用いることで、高速なルーティングが可能です。これにより、ユーザーからのリクエストを高速に処理できるようになり、応答速度の向上につながるでしょう。
Webアプリのパフォーマンス面に課題を感じている場合、Honoは有力といえます。
開発効率の向上につながる
Honoを採用することで、開発効率の向上につながる可能性があります。Honoには多彩なミドルウェアやヘルパーがあり、手軽にさまざまな機能を実装可能です。ゼロから機能のコードを作らずに済む分、スピーディーにWebアプリを開発できます。
また、Honoの開発言語であるTypeScriptを用いれば、早期にデータ型関連のバグを検出し、修正することも可能です。開発チーム内でデータ型に関する認識のずれを防げるなど、共同開発の効率化にもつながるでしょう。
学習コストを抑えやすい
Honoを採用する場合、学習コストを抑えやすいのもメリットです。Honoは日本製フレームワークのため、日本語の公式ドキュメントが充実しています。英語のドキュメントしかないフレームワークのような、言語の壁がありません。
またHonoの開発には、Webアプリの開発で広く採用されているJavaScriptも採用可能です。TypeScriptを採用する場合でも、JavaScriptの基礎知識を活かせる分、学習範囲を絞り込めます。一般的なWeb開発チームであれば、比較的短期間でHonoを用いた開発スキルを習得できるでしょう。
HonoをWebアプリ開発に採用するデメリット

HonoをWebアプリ開発に採用することは、パフォーマンスの向上を図れたり開発を効率的に行えたりするなどのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
- フロントエンドはカバーできない
- まだ成長途上である
ここでは、上記のデメリットについて詳しく見ていきましょう。
フロントエンドはカバーできない
Honoはバックエンド開発向けのフレームワークであり、フロントエンド開発には対応していません。そのため、ブラウザ側の実装を効率化したい場合は、「Vue.js」といったフロントエンド開発向けのフレームワークを組み合わせる必要があります。
フロントエンド開発のボリュームが大きい場合、Honoによる開発効率の向上はあまり期待できないことを把握しておきましょう。
まだ成長途上である
フレームワークは時間を経て利用者が増加し、コミュニティも発展していくものです。その点、Honoのリリースは2022年と新しく、まだ成長途上のフレームワークといえます。成長途上な分、歴史あるフレームワークと比べたときにデメリットが生じます。
たとえば、質問サイトでHonoに関する質問をしても、熟練者が少ないため適切なアドバイスを中々もらえないことが考えられます。Honoに限った話ではありませんが、成長途上のフレームワークを使う際のデメリットも把握しておきましょう。
Honoを導入する際の大まかな流れ

Honoの導入でつまずかないように、導入の流れを把握しておくことが大切です。Honoを導入する際の大まかな流れは、次の4ステップです。
- 実行環境のセットアップ
- TypeScriptのインストール
- Honoのインストール
- Honoのプロジェクト作成
各ステップについて、詳しく見ていきましょう。
1. 実行環境のセットアップ
まずは、Honoで開発したプログラムを動かすための実行環境をセットアップしましょう。実行環境の構築方法によってセットアップ方法も変わります。
自社サーバー上に実行環境を構築する場合は、Node.jsといったソフトウェアのインストールが必要です。クラウドサーバー上に実行環境を構築できるCloudflare Workersなどの場合は、アカウントの作成が必要となります。
開発チームの目的や方針に合わせた実行環境を選び、セットアップしましょう。
2. TypeScriptのインストール
次に、TypeScriptをインストールしましょう。HonoはTypeScriptで開発されたフレームワークです。Honoの価値を最大化するためには、やはりTypeScriptを導入するのが理想といえます。ただし、JavaScriptで開発する場合はスキップしても問題ありません。
TypeScriptのコードは、実行前にJavaScriptへ変換されます。そのため、TypeScriptのコードを変換するコンパイラのインストールが必要です。TypeScriptのコンパイラは、npmやyarnといったパッケージ管理ツールでインストールできます。
■npmの場合
npm install -g typescript
■yarnの場合
yarn global add typescript
3. Honoのインストール
続いて、Honoをインストールしましょう。HonoもTypeScriptのコンパイラと同様に、npmやyarnといったパッケージ管理ツールでインストールできます。以下はnpmとyarnの例です。
■npmの場合
npm install hono
■yarnの場合
yarn add hono
4. Honoのプロジェクト作成
Honoのインストールが完了したあとは、プロジェクトを作成しましょう。一般的な開発環境と同様に、Honoではプロジェクト単位でプロダクトを管理します。
Honoは、素早くプロジェクトを作成できるテンプレートコマンドを用意しています。以下はnpmとyarnの例です。コマンドを実行し、指示に従ってフォルダなどを指定すれば手軽にプロジェクトを作成できます。
■npmの場合
npm create hono@latest
■yarnの場合
yarn create hono
作成したプロジェクトを用いて、Webアプリを開発していきましょう。
まとめ

Honoとは、TypeScriptで作られた新しいWeb開発向けのフレームワークです。高速かつ軽量な動作が可能で、幅広い実行環境に対応しているといった特徴があります。学習コストを抑えやすく、バックエンド開発の効率化を図りやすいでしょう。
ただし、まだ成長途上のフレームワークであり、Web上に参考情報が少ないといったデメリットもあります。Honoを導入するかどうかは、メリット・デメリットを把握したうえで検討しましょう。