なぜ褒めることは大事なのか

上手に褒めることは、信頼関係の構築やスムーズなコミュニケーションに役立つなど、さまざまなメリットがあります。ここでは、褒めることの大切さについて3つの観点から紹介します。
お互いの信頼が深まる
人は褒められると「自分を尊重してもらえている」と感じ、その人を信頼する傾向にあります。褒める行為は相手を認めて、その長所を表現することでもあります。そのためには、相手のことをよく知り、尊重する姿勢が欠かせません。
また、褒められた側も自然と相手に親身になり、互いに助け合える関係を築くことにもつながります。たとえば、友人や恋人とは絆が深まり、よりよい関係へと発展するでしょう。職場では、上司や部下との信頼が深まり、仕事がよりスムーズに進む効果が期待できます。
明るい雰囲気が生まれる
褒めることは、周囲の環境を明るく前向きな雰囲気にする効果があります。日常のちょっとした会話の中に「すごいね」「頑張っているね」といった言葉を取り入れるだけで、ポジティブな空気が生まれるためです。
また、褒めた側の気持ちにもよい影響を与えます。相手から笑顔や感謝の言葉を受け取ると、自然と自分の気持ちも前向きになり、ポジティブな循環が生まれます。こうしたやり取りが積み重なることで、お互いの気分がよくなり、家庭や職場などの環境がより明るくなります。
コミュニケーションがスムーズになる
褒め言葉が増えることで、雰囲気が和らぎ話しやすい空気が生まれ、相手とのコミュニケーションがスムーズになります。たとえば、初対面の相手に対しては、相手の言葉や行動をさりげなく褒めると自然に打ち解けやすくなります。また、職場では、部下や同僚を褒めることで自信を持って意見を言いやすくなるでしょう。その結果、新しいアイデアが生まれたり会議が円滑に進んだりするメリットがあります。
ただし、意識しすぎると不自然なコミュニケーションになることがあるため注意が必要です。無理に意識せずに、「ありがとう」や「助かったよ」といった感謝の言葉も、上手な伝え方であることを覚えておきましょう。
上手に褒めるコツとは?

褒めることは誰にでもできますが、間違ったやり方では相手を不快にさせることもあります。そこで、実践しやすい上手に褒める4つのコツをご紹介します。ぜひ日常のコミュニケーションに取り入れてみてください。
具体的に褒める
当たり障りのない言葉よりも、具体的に何がよかったのかを伝えることが大切です。具体性があると、相手は細かい部分まで見てくれていることが伝わり、より嬉しくなります。たとえば手料理を作ってもらった場合、「美味しい」だけでなく「料理の味付けがちょうどよくて美味しい」など、よかったポイントを具体的に褒めることでより気持ちが伝わります。
逆に、「いいね」「すごいね」といった抽象的な言葉ばかり使っていると、軽く受け取られて相手に響かなくなってしまうこともあるので注意しましょう。
感じたタイミングで褒める
よいと感じたタイミングですぐに伝えることも大切です。できるだけ早く伝えることで相手の印象に残りやすいとされています。たとえば、友人が新しい髪型にしてきた際に、その場で「似合っているね」と伝えるのと、数日後に伝えるのでは相手が受け取る印象が大きく変わります。
また職場では、同僚がよいアイデアを出したときにすぐに褒めると相手の自信につながります。逆に、時間が経つと効果が薄れてしまうため、感じたタイミングで素直に伝えるのがポイントです。
間接的に褒める
間接的に褒められると、直接よりも嬉しく感じることがあります。たとえば、友達に「あの人、すごく頑張っているよね」と話したことが本人の耳に入ると、思わぬ喜びにつながることがあります。これは、第三者を通じた情報のほうが直接的な情報よりも信頼されやすいという心理効果で、ウィンザー効果と呼ばれています。
周囲の人から褒められたことが伝えられると、直接に比べて相手に響きやすく、より大きな喜びを与えられる可能性があります。
相手の努力を褒める
相手を褒めたいけれど何を伝えればいいか迷うこともあるでしょう。そういう場合は、相手の努力に注目してみましょう。「毎日続けていて本当にすごいね」など、頑張っていること自体を認める言葉は自信につながります。
また、相手が思うように成果が出ないときでも「頑張っているのを知っているよ」と伝えるだけで、やる気を支えることが可能です。このように、結果ではなく過程を褒めることで、相手のモチベーションを高める効果が期待できます。
褒める際の注意点

相手を褒めることは良好な関係を築く上で欠かせません。しかし、伝え方によっては逆効果になることもあります。ここでは、3つの注意点を押さえておきましょう。
過度に褒めすぎない
過度に褒めすぎると、かえって逆効果になることがあります。些細なことで褒めすぎると、相手が不自然さを感じて真剣に受け取ってもらえないことがあるためです。
そもそも「褒めること」と「甘やかすこと」は異なります。甘やかすというのは、相手の行動を無条件で肯定し、努力や成果に関係なく過剰に評価することです。一方で、本当に相手を褒める場合、適切なポイントを見極めて心を込めて伝えることが大切といえます。
また抽象的でなく、特によかった点はどこなのかポイントを見極めることも重要です。相手にとって信頼される言葉となるように頻度に気をつけましょう。
嘘やお世辞を言わない
嘘やお世辞を交えると逆効果になることがあります。事実と異なることを褒めたり、わざとらしいお世辞を言ったりすると、相手は不信感を抱き「本心ではないかもしれない」と疑ってしまうかもしれません。上辺だけに聞こえてしまうと、築き上げてきた信頼関係を損なう原因になる可能性があります。嘘やお世辞を抜きにして、相手のよいところを素直に伝えることを心がけましょう。
他の人と比較しない
他の人と比較するのは避けるようにしましょう。「○○さんより優れている」といった比較は、相手を喜ばせるどころか、かえって傷つけてしまうことがあります。さらに、こうした比較は、周囲との関係を悪化させる原因にもなりかねません。相手のよさや成長を伝えたいときは、他の人と比べるのではなく、その人自身の努力や変化に注目して伝えることが大切です。
褒め上手な人が意識していること

褒め上手な人は、相手のよいところを自然に引き出し、自信ややる気を高めることができます。そのため、プライベートや仕事でも周囲の信頼が厚く魅力的な存在といえます。
ここでは、どんなことに意識する必要があるのかを紹介します。
相手のことを理解する
相手のことをよく知らなければ、伝わるように褒めるのは難しいことがあります。相手に伝わるように褒めるには、まず相手を理解することが重要です。どのような努力をしているのかを観察し、日頃から意識的に相手の行動を知ることで的確に伝えられます。まずは観察力を鍛えるために相手の行動や言動を意識してみましょう。
素直に褒める
褒め慣れていないと、照れくささや恥ずかしさから素直に言葉にするのが難しく感じることがあります。しかし、よいと思ったことはシンプルに「それ、素敵ですね」「すごいですね」と伝えましょう。素直に気持ちを表現することで、自然に褒める習慣が身につき、徐々に慣れてきます。
また、恋人や友人を褒める際に、下心があると思われるのではと心配になるかもしれませんが、深く考えすぎずに素直な気持ちで伝えることが大切です。まずは相手のよいポイントを見つけたら、素直に「ここがよかった」と伝えることから始めましょう。
短所よりも長所を見る
人は自己防衛のために無意識に相手の短所を探し、距離を置こうとする癖があります。一方、褒め上手な人は短所よりも長所を見つけるのが上手です。一見短所に思えることも、視点を変えれば長所になります。たとえば、時間にルーズな人は「おおらか」、怒りっぽい人は「意見をはっきり言える」と捉えられます。意識的に相手の長所に目を向ける習慣を身につけましょう。
過去との違いを意識する
褒め上手な人は、相手の過去と現在を比較し、成長したポイントを見つけるのが上手です。以前はできなかったことができるようになったり、努力の結果としてスキルが向上したりしたときに、その変化を言葉にして伝えることを意識しています。
また、相手の過去からの成長を認めて伝えることで「受け入れられている」「居場所がある」と感じられるようになり、自己肯定感を高めることにもつながります。長く付き合いのある友人や恋人の成長に注目して、その変化を具体的に伝えてみましょう。
まとめ
友人や恋人との絆を深めるために、褒めることは重要なスキルです。褒めることで明るい雰囲気が生まれ、コミュニケーションもスムーズになります。しかし、抽象的だと相手には伝わりにくく、不信感を持たれてしまうこともあるため注意が必要です。
褒める際は、感じたことをすぐに具体的に伝えることが大切です。また、間接的に伝えたり相手の努力を認めたりするなど効果的な方法も意識しましょう。ただし、過度に褒めすぎたり、他人と比較したりするのは逆効果になるため注意が必要です。上手な褒め方を知り実践することで、恋人や友人との信頼関係をより築きましょう。