Go言語とPythonの違い

まずは、「Go言語」と「Python」の基本的な違いを押さえておきましょう。それぞれの基本事項について、表にまとめました。なお、専門用語については後述します。
項目 | Go言語 | Python |
登場時期 | 2009年 | 1991年 |
開発元 | Google社 | グイド・ヴァン・ロッサム氏 |
実行方式 | コンパイラ | インタプリタ |
型システム | 静的型付け | 動的型付け |
主な用途 | Web開発/システム開発 | AI(人工知能)開発/データ分析 |
各言語の概要について、順番に見ていきましょう。
Go言語とは
「Go言語」とは、Google社が2009年にリリースしたプログラミング言語です。シンプルさ・実用性を重視して設計されています。モダン(現代的)と表現されるシンプルな文法、高いパフォーマンスを発揮できる性能の高さが特徴です。
「Python」との特筆すべき言語的な違いは、「実行方式」と「型システム」の2つです。
プログラミング言語で書いたコードを実行するためには、コンピューターが理解できる「機械語(0と1の羅列)」への変換が必要です。「Go言語」は、事前にプログラム全体を変換してから実行する「コンパイラ」方式を採用しています。また、データ型(データの種類)をコードで明示し、変換時に決定する「静的型付け」という型システムです。
コンパイラ方式は処理速度が高く、静的型付けはコードの安全性・信頼性を高めます。「Go言語」はPythonと比べて新しい言語ですが、こうした強みからWeb開発やシステム開発を中心に採用が拡大しています。
Pythonとは
「Python」とは、オランダ出身のグイド・ヴァン・ロッサム氏が1991年に発表したプログラミング言語です。シンプルで読みやすい文法が特徴で、少ない手間で習得・実装できる強みがあります。「Go言語」と比べると歴史がある分、多くの「ライブラリ」や「フレームワーク」が存在するため、開発効率を高めやすいことも強みです。
「Go言語」との言語的な違いとして、「Python」はプログラム実行時にコードを1行ずつ変換していく「インタプリタ」方式を採用しています。また、データ型(データの種類)をコードで明示せず、実行時に決定する「動的型付け」という型システムです。インタプリタ方式はコード修正後の実行が迅速に行え、動的型付けはコードの柔軟性・開発速度を高めます。
特に、AI(人工知能)開発やデータ分析の分野では高い需要があり、データサイエンス分野では事実上の標準言語となっています。優れた「ライブラリ」や「フレームワーク」が豊富なPythonは、これからのAI時代においても非常に重要な言語といえます。
Go言語とPythonの違いを6項目で比較

続いて、「Go言語」と「Python」の違いを掘り下げていきましょう。ここでは、下記の6項目で「Go言語」と「Python」を比較し、違いをプログラミング初心者向けに解説します。
- 年収
- 将来性
- 汎用性
- 性能
- 開発効率
- 習得難易度
それぞれ詳しく見ていきましょう。
年収
「求人ボックスジャーナル」によると、「求人ボックス」における求人の年収平均額では、2023年時点で「Go言語」が931万円と1位でした。同ランキングでは、「Python」が778万円で5位にランクインしており、いずれも収入面では強い言語です。
高いパフォーマンスを発揮するGo言語は、「IoT(モノのインターネット)」といった先端技術の開発でも注目されています。新しい技術分野では提示年収が高くなりやすい傾向があり、これが「Go言語」の年収額を押し上げている要因でしょう。また、同じ理由からAI開発で注目されている「Python」の平均年収も高くなっています。
将来性
「Go言語」と「Python」は、ともに将来性が高い言語です。得意とする技術分野が異なるため単純な比較は難しいですが、いずれの言語も今後のIT業界を牽引していく可能性があります。
歴史ある「Python」は、その豊富な技術資産が大きな強みです。Pythonの優れた「ライブラリ」や「フレームワーク」は、AI開発の効率を飛躍的に高めています。AI時代をリードするPythonの立場を、ほかの言語が追い越すことは難しいでしょう。AIの進化とともに、「Python」の需要はさらに高まることが期待されます。
一方、「Go言語」は比較的新しい言語ながら、Web開発やシステム開発を中心に需要が高まっている言語です。「IoT」や「ブロックチェーン」のような先端技術にも活用できるため、これからさらなる需要拡大の可能性を秘めています。また、Google社が公式サポートしている点も心強く、言語としての進化が今後も期待できます。
汎用性
「Go言語」と「Python」は異なる技術分野に強みがあり、どちらも一定の汎用性をもちます。ただし、総合的に見るとやや「Go言語」のほうが汎用性はやや高いです。
コンパイラ型言語で高速処理が可能な「Go言語」は、高い速度が要求される電子機器の制御プログラム開発などにも活用できます。また、静的型付けで実行時の型エラーを防げる信頼性の高さから、大規模なシステム開発にも対応可能です。さまざまな技術分野の要件を満たせるため、幅広いシーンで活躍しています。
一方、「Python」も豊富な「ライブラリ」や「フレームワーク」を活用することで、さまざまな用途に活用可能です。特に、優れた技術資産が多いAI開発やWeb開発では重宝されています。ただし、「Python」のようなインタプリタ型言語は実行時の変換処理がネックで、高い速度が求められる技術分野にはあまり適していません。
性能
言語としての性能で比較すると、「Go言語」に軍配が上がります。
「Go言語」は、コンパイラ型言語の中でも速度性能に強みをもち、実行時のメモリ効率も高いです。また、並行処理を手軽に実装できる「ゴルーチン(Goroutine)」など、効率的な処理を実現するための仕組みもあります。そのため、高い性能要件が求められる技術分野でも、高いパフォーマンスを発揮するでしょう。
一方、「Python」はインタプリタ型言語のため、処理速度がやや遅い傾向があります。また、動的型付け言語のため実行時に型チェックが発生することも、速度やメモリ効率の面ではネックです。そのため、高速・リアルタイムな動作が要求される技術分野では、採用が難しいケースも少なくありません。
開発効率
「Go言語」と「Python」は、いずれも現代の開発現場で主流となっている「オブジェクト指向」の概念を取り入れており、効率的なチーム開発が可能です。しかし、総合的に見ると「Python」のほうが開発効率を高めやすいでしょう。
「Python」は、豊富な「ライブラリ」や「フレームワーク」を活用して開発効率を向上できるのが大きな強みです。また動的型付け言語のため、コードでデータ型を指定する必要がなく、記述量を抑えやすいといえます。インタプリタ型言語のため、コード記述後に素早く動作確認できる点も、開発効率を高めやすいポイントです。
一方、静的型付け言語の「Go言語」はデータ型をコードで指定する必要があり、「Python」と比べると記述量が増えやすいです。また、多くのオブジェクト指向言語で利用できる「継承」や「例外処理」が使えないなど、不便な点もあります。とはいえ、文法は基本的にシンプルで、並行処理を手軽に実装できる点は強みです。
習得難易度
「Go言語」と「Python」は、いずれも文法が比較的シンプルで学びやすい言語です。ただし習得難易度でいえば「Python」に軍配が上がります。
「Python」は、コードの記述後に素早く実行結果を確認できるため、スムーズな実践学習が可能です。また、長い歴史をもつ「Python」はコミュニティ規模が大きく、Web上の参考情報が豊富にあります。そのため、プログラミング初心者でもエラー調査をスムーズに行えるでしょう。
一方、「Go言語」は比較的新しい言語のため、参考情報の量では「Python」にやや劣ります。また、コードに問題があると実行前の変換処理(コンパイル)でエラーとなり、プログラムを実行できません。そのため、プログラミング初心者だとエラー調査や実践でつまずくケースも考えられます。
Go言語がおすすめな人は?

ここからは「Go言語」と「Python」、それぞれの言語がおすすめな人の特徴を見ていきましょう。「Go言語」は、次のような特徴をもつ人におすすめです。
- 幅広い分野で活用したい人
- 経験者でスキルアップを目指す人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
幅広い分野で活用したい人
「Go言語」は、幅広い分野で活用したい人におすすめです。性能や信頼性に強みをもつ「Go言語」には、幅広いシーンで活用できる汎用性の高さがあります。
これから新しい技術分野が登場した際にも、高性能な「Go言語」が注目されるかもしれません。AI開発など、特定の分野に特化する必要がない場合、「Go言語」を選べば可能性が広がるでしょう。
経験者でスキルアップを目指す人
「Go言語」は、プログラミング経験があり、さらなるスキルアップを目指す人におすすめです。「Go言語」は静的型付けや並行処理といった概念を覚える必要があり、「Python」と比べて習得ハードルが高くなります。そのため、プログラミング経験者のほうが習得しやすいでしょう。
また、新しい技術分野で注目されている「Go言語」は、平均年収が高いのも強みです。経験者であれば、「Go言語」を活用した新しい技術分野や大規模なシステム開発への参入を実現しやすく、さらなる収入アップを目指せます。
Pythonがおすすめな人は?

「Python」は、次のような特徴をもつ人におすすめです。
- AI開発やデータ分析に興味がある人
- プログラミングに慣れていない人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
AI開発やデータ分析に興味がある人
「Python」は、AI開発やデータ分析に興味がある人におすすめです。「Python」は、AI開発やデータ分析に適した「ライブラリ」や「フレームワーク」が揃っています。AI分野では事実上の標準言語となっており、実務でも活用できる機会が多いです。そのため、本格的にAI開発やデータ分析に取り組むのであれば、「Python」を選ぶのが無難といえます。
プログラミングに慣れていない人
「Python」は、プログラミングに慣れていない人におすすめです。「Python」は文法がシンプルで、Web上の参考情報が豊富にあります。また、記述したコードをすぐに動かせるため、実践学習を効率よく行えるのも強みです。そのため、プログラミング初心者でも挫折しにくく、学習コストを抑えやすいといえます。
まとめ
「Go言語」と「Python」はいずれも年収や将来性が高く、これからプログラミング学習を始める方にとって魅力的な選択肢です。両者を比較すると、汎用性や性能の面では「Go言語」、開発効率や習得難易度の面では「Python」が有利といえます。
さまざまな観点から比較することで、「Go言語」と「Python」のどちらを選ぶべきか判断しやすくなります。本記事の内容を参考にして、ぜひ「Go言語」や「Python」のプログラミング学習を始めてみてください。