PHPで何ができるのか

結論からいうと、PHPを使うことで「Webアプリのバックエンド開発」を行えます。Webアプリとは、ブラウザを通して利用するアプリ全般のことです。
そもそもPHPとは、Webアプリの「バックエンド」での動作に特化したプログラミング言語です。バックエンドとは、Webアプリのユーザーからは見えない「サーバー」上で動作する要素を指します。
サーバーは、ユーザーからのリクエスト(要求)に応じて適切なWebページを生成し、レスポンス(応答)を返す仕組みです。このとき、サーバー側でデータ管理やWebページの生成を行うプログラムが必要ですが、PHPはこの役割を担います。
ECサイトやSNSなど、あらゆるWebアプリにはサーバー、そしてバックエンドプログラムが欠かせません。PHPは、バックエンドで求められる操作や処理の多くを標準機能でカバーできるため、バックエンド開発で多く採用されています。
なお、ユーザーのブラウザ上で動作する要素を、バックエンドと対比して「フロントエンド」と呼びます。フロントエンド開発には「HTML」「CSS」「JavaScript」といった言語が使われるのが一般的です。
PHPを使って具体的にできること

PHPをWebアプリのバックエンド開発に使う場合、具体的に何ができるのかイメージできない方も多いでしょう。PHPを使って具体的にできることは、主に次の9つです。ただし、ここで紹介する用途は、ほかのプログラミング言語やフレームワークでも実現可能です。PHPにとらわれすぎず、プロジェクトや個人にとって最適な技術を選定しましょう。
- Webページの動的な生成
- フォームデータの処理
- データベースの読み書き
- セッションの管理
- クッキーの操作
- ファイルの操作
- メールの送信
- 外部APIとの連携
- CMSのカスタマイズ
それぞれ詳しく紹介します。
Webページの動的な生成
PHPを使えば、Webページの動的な生成が可能となります。「動的な生成」とは、その時々によって内容が変わるWebページを生成できるという意味です。たとえば、ユーザーがAさんの場合は「Aさん、こんにちは」、Bさんの場合は「Bさん、こんにちは」といった異なるメッセージをWebページ上に表示できます。
PHPがWebページを動的に生成できる理由は、Webページの内容を定義する「HTML」のコード内に直接埋め込んで使用できるためです。サーバー側で取得したデータをPHPのコードで出力するようにすれば、ユーザーや状況に応じて内容が変わるWebページを生成できます。
フォームデータの処理
PHPを使えば、ユーザーがフォームに入力したデータをサーバー側で受け取り、適切に処理できます。たとえば、ユーザーがお問い合わせフォームに入力して「送信」ボタンを押した場合、そのユーザーの氏名や問い合わせ内容などを取得することが可能です。
フォームを含む一般的なWebアプリでは、ユーザーの入力内容に問題がないかをPHPでチェックしたり、データベースに保存したりします。こうした処理をPHPで行うことで、動的なWebアプリの構築が可能となるのです。
データベースの読み書き
Webアプリでは、数多くのデータを効率よく管理するために「データベース」という仕組みを用います。PHPを使えば、このデータベースに対する読み書きが可能です。
厳密にいうと、データベースの管理や変更を担うのはデータベース管理システム(DBMS)というソフトウェアです。DBMSは、データベースの操作に特化した「SQL」という言語を使ったクエリ(命令)を受け、データの追加や更新、削除を行います。
PHPでデータベースを読み書きする場合、適切なSQLクエリをDBMSに送ることで読み書き指令を出すという仕組みです。Webアプリに欠かせないデータベースを扱う基本的な仕組みを覚えておきましょう。
セッションの管理
PHPを使えば「セッション」を管理できます。セッションとは、サーバー側でユーザーごとのデータを一時的に管理する仕組みのことです。セッションをPHPで適切に管理することで、ログイン状態を維持したり、複数ページ間でデータを共有したりできます。
たとえば、ECサイトでユーザーが商品をカートに入れた場合、その商品情報が購入の前に消えてしまっては困ります。そこで、PHPによりセッション情報に商品情報を保持しておけば、購入完了まで適切に手続きを進めることが可能です。
クッキーの操作
PHPを使えば「クッキー」を操作できます。クッキーとは、ユーザーのブラウザにデータを保存し、次のアクセス時にも利用できる仕組みです。たとえば、ログイン情報をクッキーとして保存して次のログイン時に表示すれば、再入力の手間を省けます。
ただし、クッキーの管理自体は基本的にユーザーのブラウザが行います。PHPでできることは、主に新しいクッキーの作成(発行)と、ブラウザへの削除指令です。クッキーを正しく管理するためには、PHPでクッキーに関する適切な操作・指令を行い、ブラウザ側と連携することが求められます。
ファイルの操作
PHPを使えば、ファイルのコピーや移動、削除といった操作が可能です。たとえば、ユーザーがアップロードした画像をサーバー内の適切な場所にコピーできます。
Webアプリでは、ユーザーからファイルを受け取ったり、サーバー側からユーザーへファイルを提供したりするシーンが珍しくありません。こうしたシーンでは、PHPを活用することで正確にファイルを操作できます。
メールの送信
PHPを使えば、メールの送信が可能です。PHPにはメール送信機能が標準搭載されており、外部ライブラリを使わずに手軽にメールを送信できます。たとえば、ユーザーが登録を完了した際に、PHPで登録完了の通知メールを自動送信することが可能です。
メールの送信は外部ライブラリを必要とする言語も多いですが、標準機能でカバーできるのはPHPの強みといえます。ただし、PHP標準のメール送信機能は適切に使わないとセキュリティリスクが高まるケースがあるため、注意しましょう。
外部APIとの連携
PHPを使えば、外部のWebアプリが提供する「API」との連携が可能です。APIとは、Webアプリがもつ機能やデータを、別のWebアプリから利用可能にする窓口を指します。たとえば「Googleマップ」のAPIを利用すれば、自分のWebページ上に地図を埋め込むことが可能です。
外部APIと連携する場合、相手方のWebアプリが運営するAPIサーバーにリクエストを送り、レスポンスを受け取ることで実現します。PHPを使えば、こうしたAPIサーバーとのやり取りを実装可能です。
CMSのカスタマイズ
PHPを使えば、ブログなどのコンテンツを管理する「CMS」のカスタマイズが可能です。具体的には、CMSの中でもトップシェアを誇る「WordPress」のカスタマイズをPHPで行えます。これは、WordPress自体がPHPをベースに作られているためです。
たとえば、WordPressのPHPコードを編集することで、文字の色やフォントを変更してオリジナルのデザインに調整できます。WordPressを用いるWebサイト・Webアプリは多いため、PHPを使えるとWeb系の仕事で活かせるチャンスが広がるでしょう。
PHPを活用するメリット

PHPを活用するメリットは、主に次の3つです。
- 効率的にWebアプリを開発できる
- Web分野で需要が高い
- 習得ハードルが比較的低い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
効率的にWebアプリを開発できる
PHPを活用することで、効率的にWebアプリを開発できます。PHPはセッション管理やメール送信など、Webアプリ開発に役立つ標準機能が豊富です。さまざまな外部ライブラリに頼ることなく、手軽に幅広い機能を実装できるのは強みといえます。
また、「Laravel」といったフレームワーク(アプリ開発の枠組み)が充実しているのも強みです。こうしたフレームワークを使えば、認証機能のようなWebアプリの基本機能を最小限の実装だけで完成でき、大幅に開発効率をアップできます。
Web分野で需要が高い
PHPはWeb分野で需要が高く、仕事に活用するチャンスが豊富にあります。バックエンド開発言語は複数ありますが、その中でもPHPは人気が高いです。
Web系の標準機能が豊富なPHPは、今後も多くのWeb開発現場で使われるでしょう。Webアプリ開発を仕事にしたい場合、需要が高いPHPは有力な選択肢といえます。
習得ハードルが比較的低い
プログラミング学習者にとって、PHPは習得ハードルが比較的低い言語です。「Java」などの言語と比べると、シンプルなコードを記述しやすいといえます。また、HTMLコード内に埋め込んで使えるため、ブラウザ上で実行結果を確認しやすい点も好都合です。
さらに、PHPにはそれなりの歴史があり、学習教材やWeb上の参考情報も豊富にあります。このように、スキルを習得しやすい条件がそろっているPHPは、プログラミング初心者にもおすすめです。
PHPを活用するデメリット

PHPを活用するデメリットは、主に次の2つです。
- Web分野以外には基本的に使えない
- さまざまな周辺知識が求められる
PHPは、Web開発に特化したプログラミング言語です。そのため、デスクトップアプリやスマホアプリといった他分野での活用は、基本的に難しいといえます。Web分野以外で活用したい場合は、別の言語を選んだほうが良いでしょう。
また、PHPでWebアプリを開発するうえでは、さまざまな周辺知識が求められます。たとえば、データベースを扱うためにはSQLやDBMSの知識も必要です。また、外部のフレームワークを使う場合は、その活用方法も学習する必要があります。PHP自体は習得しやすいものの、実践に進むうえではWeb開発全般の幅広い学習が求められます。
PHPを学習する3つの方法

PHPの学習方法としては、次の3つがおすすめです。
- 入門書で学ぶ
- Webサイトを利用する
- スクールを利用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
入門書で学ぶ
入門書にはPHPの基本が体系的に集約されているため、1冊でしっかり必要な知識を吸収できます。数千円程度の初期コストをかければ繰り返し学習に使えるため、コストも抑えやすいでしょう。
ただし、PHPの実践学習ではパソコンを使う必要があり、入門書を広げながらだと作業がしづらいかもしれません。また、初版から多くの期間が経過している入門書の場合、書かれた情報が最新ではない場合もあります。とはいえ、低コストで基本を押さえたい方に合った学習方法です。
ここでは、PHPを学びたい方におすすめの入門書を2つ紹介します。
おすすめ入門書 | 説明 |
いきなりはじめるPHP~ワクワク・ドキドキの入門教室 | PHPの基本をプログラミング初心者向けに分かりやすく解説している1冊です。学習の心構えから丁寧に書かれており、プログラミング学習の1冊目としても適しています。 |
よくわかるPHPの教科書 | PHP入門者を挫折させない心意気が感じられる1冊です。プログラミングの考え方や環境構築から丁寧に書かれています。 |
Webサイトを利用する
Webサイトには、PHPの入門講座を提供している学習サイト、PHPエンジニアの技術ブログなどが存在します。Webサイトは定期的にアップデートされることが多いため、最新の知識を吸収可能です。
また、Webサイトはパソコンのブラウザで閲覧できるため、パソコンでの実践学習とも相性が良いといえます。ただし、インターネット環境が必須な点、Webサイトによっては月額料金が発生する点に注意しましょう。最新の技術を学びたい方、効率的に実践したい方に合った学習方法です。
ここでは、PHPを学びたい方におすすめのWebサイトを3つ紹介します。
おすすめWebサイト | 説明 |
PHPマニュアル | PHP公式のマニュアルです。PHP標準機能の仕様やルールに関しては基本的に何でも書かれています。分からない機能があった場合は、ここで検索すると良いでしょう。 |
Progate | 分かりやすいスライドでプログラミングの基礎を学べるWebサイトです。PHPの入門講座では、簡単なWebサイト制作を通して実践的に学べます。ある程度は無料でも学べるため、気に入った方は有料プランも検討してみましょう。 |
Udemy | 信頼できる講師による講座動画を購入できるサービスです。PHPを学べる講座も多数公開されています。 |
スクールを利用する
スクールでは、PHPに精通した講師が丁寧に教えてくれるため、独学よりも挫折リスクが低いといえます。また、カリキュラムを最適化しているスクールでは、短期間で必要な知識を無駄なく学べます。
ただし、独学と比べると、スクールの受講料は基本的に高額です。また、通学型のスクールだと、時間や場所の制約を受けやすい点にも注意しましょう。独学では挫折しないか心配な方、短期間でPHPを習得したい方に合った学習方法です。
まとめ

PHPは、Webアプリのバックエンド開発に特化したプログラミング言語です。バックエンドで求められる操作や処理の多くを標準機能でカバーできます。
PHPは比較的習得しやすく、仕事での活用チャンスも多い言語です。しかし、使いこなすためには入門書や学習サイト、スクールなどでの十分な学習が欠かせません。PHPに興味がある方は、今回の内容をぜひ参考にしてください。