Ruby on Railsで何ができるのか

Ruby on Railsとは、「Ruby」というプログラミング言語を用いてWebアプリを効率よく開発できるフレームワークのことです。フレームワークとは、アプリに必要な機能をまとめた枠組みを指します。フレームワークを使えば、基本機能をゼロから作らずに済み、開発を効率化できます。
Webアプリとは、ECサイトやSNSなど、パソコンやスマートフォンのブラウザを通して利用できるアプリのことです。Ruby on RailsはWebアプリに必要な機能を幅広くカバーしているため、さまざまなWebアプリを効率的に開発できます。
Ruby on Railsが得意とするWebアプリ開発には、大まかに次の2要素があります。
- バックエンド開発
- フロントエンド開発
それぞれ詳しく見ていきましょう。
バックエンド開発
Ruby on Railsは、Webアプリ開発の中でも「バックエンド開発」に特化しています。バックエンド開発とは、サーバー側で動作するプログラムを開発することです。
Webアプリは、ブラウザが送ったリクエスト(要求)に対して、サーバーがデータの取得・加工やWebページの生成を行い、レスポンス(応答)を返す仕組みです。この一連の動作において、バックエンドのプログラムはサーバー側の処理を担います。
Ruby on Railsがバックエンド開発に強いのは、前述のようにプログラミング言語「Ruby」がベースとなっているためです。Rubyとは、まつもとゆきひろ氏が生み出した日本発のプログラミング言語で、バックエンド開発を得意とします。
フロントエンド開発
Ruby on Railsは、基本的な「フロントエンド開発」にも対応しています。フロントエンド開発とは、ブラウザ側で動作するプログラムを開発することです。Webページの表示内容や見た目、動的な要素、バックエンドプログラムとの通信などを担当します。
Ruby on Railsは、「Hotwire」と呼ばれるフロントエンド開発向けのフレームワークを搭載しています。Hotwireを使えば、一般的なフロントエンド開発で欠かせない「JavaScript」をあまり使わず、ブラウザ側の機能を実装可能です。
シンプルなWebアプリであれば、Ruby on RailsのHotwireでも事足りるでしょう。ただし、高度な機能や複雑な動作を実現したい場合は、「Vue.js」や「React」などの外部フレームワーク・ライブラリを組み合わせる必要があります。
Ruby on Railsで作れるWebアプリやシステム・制作事例

ここからは、具体的にRuby on RailsでどのようなWebアプリやシステムを作れるのか、事例を交えて紹介します。ただし、ここで紹介するWebアプリやシステムは、ほかのプログラミング言語やフレームワークでも開発可能です。Ruby on Railsにとらわれすぎず、プロジェクトや個人にとって最適な技術を選定することが重要といえます。
- ECサイト
- SNS
- 情報共有サービス
- ブログ・メディア
- Web API
- 業務システム
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ECサイト
Ruby on Railsを使えば、商品の出品や購入が行えるECサイトを開発できます。Ruby on Railsは商品の管理やカート機能、決済機能など、ECサイトの主要機能を幅広くカバーしており、開発の手間を大幅に減らせます。
Ruby on Railsを活用したECサイトに関する制作事例としては「Shopify」が挙げられます。Shopifyは誰でも簡単にECサイトを開設できるサービスですが、そのバックエンドにはRuby on Railsが採用されています。
SNS
Ruby on Railsを使えば、世界中のユーザーがつながれるSNSを開発できます。Ruby on Railsは投稿やコメント、フォロー機能など、SNSの主要機能を幅広くカバーしており、短期間での開発を実現できます。
Ruby on Railsを活用したSNSの制作事例としては「Mastodon」が挙げられます。Mastodonは、世界中の複数サーバーを用いて運用する「分散型SNS」の1つです。フロントエンドにはReact、バックエンドにはRuby on Railsを採用しています。また、初期の「Twitter(現:X)」もRuby on Railsを採用していたことで有名です。
情報共有サービス
Ruby on Railsを使えば、動画やコードなど、特定の情報を共有するためのサービスを開発できます。Ruby on Railsは「ORM」という仕組みによりデータベースとの連携を効率的に実装できるなど、情報共有サービス開発にも役立ちます。
Ruby on Railsを活用した情報共有サービスの制作事例としては「クックパッド」が挙げられます。クックパッドはレシピを共有できる大規模なサービスですが、Ruby on Railsを基盤に構築されました。
ブログ・メディア
Ruby on Railsを使えば、Web上の日記であるブログや、さまざまな情報を発信できるメディアサイトを開発できます。Ruby on Railsは記事の投稿や編集、コンテンツ管理など、ブログやメディアサイトに必要な機能を幅広くカバーしています。
Ruby on Railsを活用したブログ・メディアの制作事例としては「グノシー」が挙げられます。グノシーは、ユーザーの興味・関心に合ったニュースを提供するサービスですが、その管理システムにはRuby on Railsが採用されています。
Web API
Ruby on Railsを使えば、複数のWebアプリを連携させる「Web API」を開発できます。Web APIとは、Webアプリ内の機能やデータを外部のアプリに提供する「窓口」のようなものです。たとえば、SNSが公開するWeb APIを使うと、自分のWebアプリからSNSへ投稿する機能を実装できます。
Ruby on Railsは、Web APIの設計思想として主流になっている「RESTful」を採用しています。また、Web APIのデータ通信によく使われる「JSON」というデータ形式を標準的に扱えるのもRuby on Railsの強みです。Webアプリはもちろん、オンライン機能を持つスマホアプリのWeb API開発でもRuby on Railsが広く採用されます。
業務システム
Ruby on Railsを使えば「業務システム」を開発できます。業務システムとは、企業の特定業務を効率化し、生産性を高めるシステムのことです。Ruby on Railsは「MVC」と呼ばれる設計思想を採用しており、大規模な業務システムの開発にも対応できます。
生産管理システムや勤怠管理システムなど、実際にRuby on Railsで開発される業務システムはさまざまです。企業のニーズに応じた柔軟な業務システムを開発できるため、Ruby on Railsが広く採用されています。
Ruby on Railsを使うメリット

Ruby on Railsを使うメリットは、主に次の3つです。
- 短期間でWebアプリを開発できる
- 学習コストを抑えやすい
- 仕事に活かしやすい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
短期間でWebアプリを開発できる
Ruby on Railsを使えば、短期間でWebアプリを開発できます。Ruby on Railsには、Webアプリに必要な機能の骨組みやライブラリ(再利用可能なプログラム)が揃っており、ゼロから機能を作り上げる必要がありません。結果として、コードの記述量を大幅に削減できます。
たとえば、ログイン機能やデータベース連携といった機能の開発は、最小限の設定や実装で済みます。また、Ruby on Railsはオープンソース(プログラムが無料で公開されている)のため、商用ライセンス料が発生しないのも魅力です。
Ruby on Railsは開発期間や開発コストを抑えやすく、アイデアを素早く形にしたいスタートアップ企業に人気があります。
学習コストを抑えやすい
企業や個人がRuby on Railsを採用する場合、学習コストを抑えやすいでしょう。Ruby on Railsを使った開発で用いるRubyはシンプルな文法で学びやすいです。また、Rubyは日本製のため、公式ドキュメントを含む日本語の参考情報も豊富にあります。
一般的に、文法が複雑だったり、参考情報が少なかったりするプログラミング言語は、エラー解消や不明点の調査に時間がかかりがちです。その点、シンプルで参考情報が多いRubyであれば、プログラミング初心者でも比較的スムーズに習得できるでしょう。
仕事に活かしやすい
プログラミングを仕事にしたい方にとって、Ruby on Railsは業務に活かしやすいフレームワークといえます。Ruby on Railsはスタートアップ企業を中心に根強い需要があり、エンジニアを求める企業が多く存在します。
Ruby on Railsを習得すれば、Webエンジニアとして活躍できるチャンスが多くなるでしょう。
Ruby on Railsの学習方法

Ruby on Railsの学習方法としては、次の3つがおすすめです。
- 入門書で学ぶ
- Webサイトを利用する
- スクールを利用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
入門書で学ぶ
入門書は必要な知識が体系的にまとめられており、1冊でもしっかり基礎固めができます。1冊購入すれば追加費用がかからないため、比較的コストを抑えやすいのも強みです。
ただし、パソコンを使ったRuby on Railsでの開発実践は、入門書だとやや不便に感じるかもしれません。オフラインでじっくり学びたい、学習コストを抑えたい、といった方に合った学習方法です。
ここでは、Ruby on Railsを学びたい方におすすめの入門書を2つ紹介します。
おすすめ入門書 | 説明 |
ゼロからわかる Ruby 超入門 | Ruby on Railsでの開発に欠かせないRubyの基礎をゼロから学べる1冊です。まずは、これでRubyの基礎を押さえましょう。 |
Ruby on Rails 6 超入門 | Ruby on Railsの入門者向けに基礎を丁寧に解説している1冊です。サンプルコードを用いて実践できる内容になっています。Rubyの基本をひと通り学んだ方におすすめです。 |
Webサイトを利用する
Ruby on Railsの入門講座を提供している学習サイトや、Ruby on Railsを実務で使うエンジニアの技術ブログなどを利用するのも効果的です。Webサイトは適宜アップデートされることが多いため、これらを活用することで最新の知識を学べます。
また、パソコンを使った開発実践とも相性が良いといえます。ただし、インターネット環境が必須な点、Webサイトによっては月額料金が発生する点に注意しましょう。パソコンで効率よく知識を得たい方、最新の技術を学びたい方におすすめの学習方法です。
ここでは、Ruby on Railsを学びたい方におすすめのWebサイトを3つ紹介します。
おすすめWebサイト | 説明 |
Ruby on Rails チュートリアル | Ruby on Rails公式のチュートリアルサイトです。Ruby on Railsを用いて実践できる学習コンテンツが豊富にあり、無料で学べます。 |
paizaラーニング | 動画教材を中心としたプログラミング学習サイトです。Ruby on Railsの講座もあり、ある程度は無料でも学べます。ブラウザ上でコードを書いて実践できるのも魅力です。 |
Udemy | 信頼できる講師による講座動画を購入できるサービスです。Ruby on Railsを学べる講座も多数公開されています。 |
スクールを利用する
Ruby on RailsやRubyの学習支援を行うスクールでは、熟練した講師から直接学べるため、効率的にスキルを習得できます。不明点や問題点があっても素早く解決でき、独学よりも挫折しにくいのが強みです。
ただし、独学よりも基本的に多くの費用がかかります。また、通学型のスクールだと、時間や場所の制約が大きくなる点にも注意しましょう。独学では挫折しないか不安な方、短期間でRuby on Railsを習得したい方におすすめの学習方法です。
まとめ

本記事では、Ruby on Railsの基本事項について初心者向けにお伝えしました。Ruby on Railsは、Webアプリの開発に強いフレームワークです。ECサイトやSNSなど、さまざまなWebアプリのバックエンド開発に広く採用されています。
Ruby on Railsを使えば短期間でWebアプリを開発でき、仕事に活用するチャンスも多いです。ただし、使いこなすためにはRuby on RailsやRubyの学習が欠かせません。入門書や学習サイト、スクールなどでしっかり基本を身につけましょう。Ruby on Railsに興味がある方は、今回の内容をぜひ参考にしてください。